第一話 空から◯◯が落ち召喚された!?
現在の体重は100を軽く超えているだろう。
しかもブサイクな顔。着る服もダサすぎる陰キャラ男。が俺の現実。
けれど特注のスーツを着てたのが、再会することができた◯◯から最低限の好感をもってくれた…………
ことを願わずにいられなかったが。
外見なんて 俺を愛してくれた◯◯からしたら関係ないらしく。
『デブ、ブサイク、ダサい』
このダメ男三原則を持つ10歳も老けた俺のことを喜びを爆発させた満面の笑顔で抱きしめてくれた。のがなにより証拠だ。
どう?
こんな俺と最高の◯◯◯◯といっしょに
異世界に転生しちゃう俺になってみない?
耳ざわりな雨の音がよけいにイライラさせる。
運命の道から俺の人生を変えはじめる。
「やっぱり、どうしようもないストレスをタめこむばかりな退屈な毎日ほどつまらないものはないよな。だから終わらせよう。この世界で生きるだけ無駄なものはないんだからな」
こんなことを考えながら、極悪非道な安月給しか出さない仕事と一緒に暗くてつまらない人生を終わらせる。
そのつもりで車を走らせる。
幸せな未来なんてあるわけがない。
俺好みの彼女なんてできそうにない未来に期待なんてしない。
ましてや成功、出世なんて無縁に決まってる未来なんてもはや興味なんてない。
どうでもいい未来しかない(はず?)
「このまま働いてても 生きてても意味ないよな…………ぜったい」
と思い、鬱々《うつうつ》とした顔で自動販売機で買った缶コーヒーを飲みながら、みるみる都心から離れてゆく田舎の国道を走らせる。
俺の心はすっかり黒くなっていた。
一瞬の希望の光さえもなかった現実《黒》に負けた俺が目指すところなんてない。
ひたすらに突っ走らせるのみ。
中古で買った車を暴走させる理由なんてない。
あくまで俺は単純に現実から逃げるように、ガス欠になるまで。
ひたすら遠くまで走りたかった。
できるなら嫌でも厳しく、冷たくしか感じさせられない現実《黒》を消したかったのかもしれない。
こんなバカげたことをする前までは「なんか夢中になれる趣味など見つけよう!」と思い行動したけれど意味なかった。
辛くてたまらない大変な人生を明るくさせれるような趣味なんて見つかるわけがなかった。
希望なんかない。
生きる希望なんてあるわけがない。
「そもそも現実世界を明るく元気に生きないとな!」
といった感じのことを平然と言ってのける無神経な奴らほど悪いヤツはいない。
「俺みたいに真面目で誠実な人間が明るく生きられる現実世界なんてあるわけがない…………だから交通事故でも何でもいいから死んじゃえばいいだけのことだ」
こんな雰囲気の死ぬ覚悟の勢いで軽く100キロを超えそうな猛スピードで、車を走らせてる最中…………のこと、
無限の可能性を秘めた未来《聖なる者》が降臨する。
キキキキぃぃぃぃぃぃぃぃーーーー!!!!
耳を劈くようなブレーキの火花を散らしながら無意識に、
「うぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と叫ばずにいられない感じでハンドルを切らずにいられなかったけれど。
とにかくなんとか、ギリギリセーフなところで車をとめることができた。
いきなり不意打ち的に横からではなく…………
どしゃぶりの雨が降る空から、叩きつけられるように落ちてきたのは…………
「何者!?」と眼を………させるほど煌びやかで美しくも違和感を感じずにいられない姿をした少女。
すかさず後部座席に置いてあったビニール傘を握り、急停車させたばかりな車から出ては、倒れる少女に向けて、「おい君! 大丈夫か!?」と声をかける。
俺の言葉は25年間、生きてきても一度も発したことがないほど緊迫してた。ことに自分ながら驚きながらも。
「おい君! 生きてるか!?」
金色の髪がきれいな少女、いや…………まるで◯◯みたいな華奢でやわらかな肩をゆするものの。
見るからに頭を激しく打ったことで気を失ってるように見える。
常識的に考えられない出来事としていきなり突然、空から落ちてきた少女はまったく俺の言葉に反応しない。
そればかりか口から血を流しはじめるではないか。
さすがに「これはヤバい!」と思い、本気で心配しはじめる俺の顔はすでに雨で濡れてる。
ビニール傘をさすことも忘れ、スーツが濡れようとも関係なく。
背後からクラクションをやかましく鳴らされようが気にせず。
何度も「おい君! 生きてるなら返事してくれ!!」と声を張りあげながら、眠るように気を失ってる白と金の豪華な服を着た気を少女をなんとか目覚めさせようとした。
その結果がでたのは数分後のこと。
「う〜ん…………ここは?」
かすれるような声を発し、なんとか眼をゆっくりと開けはじめる少女の濡れた顔を見た俺は思わず。ひと安心的な吐息をこぼさずにいられなかった。
全身ずぶ濡れになったことで体温が急激に低下してることも知らず。
寒さなど感じることなく。
まるで「これからまったく新しい人生がはじまるんじゃないか!?」といった期待せずにいられない運命的な出来事、出会いに興奮しながらも。
負傷した◯◯みたいな少女を助手席に乗せずにいられなかったのは言うまでもないはず。
横殴りに雨の水滴がしたたるばかりな走る車の窓を黙って見つめる、白銀のまつ毛の奥から、ぼんやりと鈍く不安そうに光り輝かせる、ブルーサファイアの瞳から伝わる少女の心境を、濡れた肌で感じながら車を運転させる俺の表情は相反する。
「さて、これからどんなことが起きるのだろうか?」と変な期待せずにいられなかったからだ。
そんな俺と空から落ちてきた謎の少女を乗せた車が行くのはもちろん決まっている。
「この少女は何者なのだろうか?」と疑問を抱きながら、ひたすら丁寧に車を走らさるばかり。
俺の家の近くにある大学病院に着き、簡単な診察と治療を終えた頃には嘘みたいに、どしゃぶりだった雨がやんだ休日の朝がおとずれていた。
「君はいったい何者なの? なんで背中に虹色の翼を生やせてるの?」
これが診察を終えた直後の単刀直入な問いかけだった。
この無神経、無骨とも捉えられる俺の発言を聞いた(天使?)みたいな少女は無邪気に「ニコっ」と笑いながら言ったのが次の言葉だ。
「花河楓様 とりあえず何か食べさせてもらえませんか?」
「なんで俺の名前を知ってるの?」
「それは まだ秘密です!」と言い切って、おどろきを隠せない俺の手を優しく握りながら大学病院を去る。
そんな軽い雰囲気で俺と天使みたいな少女が入ることにしたのがファミレス。
ある意味、俺は浮かれまくっていた。
なぜなら、こんな可愛い女の子と手を繋げれるっとは想像もしてなかったのだから。
そんな調子で普通のファミレスを選んだまでのこと。
が、災いを呼ぶことになる。
そうなのだ。
俺と少女が入った普通のファミレスに、天使?を追い降りてきた敵がすでに忍びこんでるのだから。
運がよかったのか。空から落ちてきた衝撃は大したことはなかったらしく。
応急処置的な塗り薬だけで済んだ。
だから治療費も貧乏人である俺の財布にもやさしかった。
なので金色の髪、白と金の豪華な服、そして背に生えた薄透明な虹色の翼がなにより美しい少女の顔、体に包帯、絆創膏のようなものは一切ない。
おどろいたことにアザもない。のは「凄いなぁ」と感心させられずにはいられなかった。
そんな感想を抱きながら俺も濡れたスーツを脱ぎ、車に置いてあった普段着に着替えた。
ちなみに好きなアニメのヒロインがプリントされた高値のTシャツと安値のジーパン。
もちろん名前も知らない少女の濡れた服も着替えさせる。つもりだったが必要なかった。
なぜか病院に着いたときには自然と乾燥されていたからだ。ちなみに今の季節は夏。
でも、出会った国道から病院までの道のりはたったの30分程度だったはず。
なので、そんな短時間にずぶ濡れになった服が乾くわけがない。
とにかく俺の前に座る少女はすべてが普通じゃない。
人間ばなれした白銀の肌をはじめ、ブルーサファイアに輝く瞳はどんな人種にもあてはまらないはず。
そもそも空から落ちてくること自体おかしすぎる。
色々考えながら内心、頭をかしげさせながらも。
「ロリコン確定!」と世間から言われる覚悟で淡い感情を抱きながら。
開店したばかりなはずの俺たちが入ったファミレスは意外と子づれの家族でにぎわっていた。のが正直つらかつた。
その反対に子供が好きなのか。
少女(天使?)は実に楽しげな明るい顔を浮かべていた。
のを横眼で不覚にも見惚れてた俺ってめっちゃ単純? まだ会ってまもないのにすでに心を奪われかけてるのってどうなの?
「男として…………どうなのだろうか?」
そんな下心を隠せない気分で店員に案内されるがまま、座るものの。
やっぱり俺からしたら居づらい環境でしかないファミレスの雰囲気に、はやくも肩が重くなるような感覚をおぼえはじめていた。
昼間、夜にくらべたら断然少ないほうだとおもう。
けど、やっぱり人が多い、特に子供がたくさんいる場が苦手な俺からしたら、息しづらい感じのストレスに嘘をつけない。
だけなのか? と思いきや
「それだけではないような気がする」のは
どうなんだ?
なんかほかにもっと嫌な気配みたいな、緊張感みたいなものが俺と少女がいる、平和なはずのファミレスの空間を支配してるようなものを肌で感じる。
「のはなぜだ?…………」
とにかく肩が重く凝りそうな気分と感情しか俺にはなかった。
そんなだからお腹を空いてるはずなのに、何かを食べようと気が湧かない。
とにかく今は、気持ち悪くなりそうなほど居心地の悪さを感じながら、俺はメニューを開くことで気をそらすことにした。
「遠慮せずに好きなのを注文しなよ?」
美少女を前に緊張しながらも、違和感のあるストレスを感じつつも、やわらかい口調を意識しつつ、ご機嫌な様子の少女に言ってあげる。
すると、いかにもお腹を空かせてる雰囲気と様子を顔で表現してた、空から落ちてきた少女が好きな料理を選び、店員に注文してからの数分後のことだった。
はしゃぐ子供の声、躾る親の声にまったく意識を向ける必要はなくなったのは。
なぜなら眼の前に座る少女に、心を一瞬にして完全に恋しちゃったのだから。
それほど遠慮がちに注文したオムライスを食べる少女の姿が神々しかった。
まさに息をのんじゃうほど姿勢正しく。
あまりにも大人びた雰囲気を漂わせるような神妙な顔で食べるものだから。
おもわず無意識に飲みかけたコーヒーのことなど忘れ、見とれずにいられなかった。のがすこし
「悔しい気がするのがなぜなのだろうか?」
「ぜったい上級階級クラスの身分に生まれ、恵まれた環境のなかでお姫様みたいな生きかたをしてきたんだろうな、きっと」
と、直感せずにいられなかった。
同時に「たしか25年の人生のうち…………たった1人だけつきあってくれた女の子もオムライスが大好きだったよなぁ」と思いださずにはいられなかった。
当時の思い出を眼のまえに座る天使みたいに可愛い少女に重ねずにいられなかった。
いきなり突然のある日、なんの痕跡ものこさず神隠しにあったかのように俺の前から、この世界から姿を消し去った彼女と重ねずにいられないほど。
無邪気な笑顔でオムライスを食べる、絶っ対に普通じゃない少女と重ねずにいられなかった。
そんな、ちょっとだけ複雑な俺のほえ顔を見た、オムライスを食べ終えた少女が喋りかけてくる。
ことがキッカケになり「はっ!」となった俺もさすがに。
やっとこさ朝のコーヒーを飲みはじめることができた。
「ズズズっ……」と気恥ずかしいのを隠すためにわざと音を鳴らすほかなかった。
けれど すぐに噴きだしてしまう少女の信じられない爆弾発言を聞くことになるだなんて…………
考えもしなかった。
この時……………………までは
「花河楓様 いや 楓くん。はじめて乗った観覧車のことおぼえてる?」
「えっ?」
「はじめて私と乗った観覧車のことおぼえてる?」
「な…………なに言ってるのわからないよ?」
「もしかして忘れちゃったの? 私は今もハッキリおぼえてるよ。10回目のデートでいっしょに遊園地の観覧車に乗ったこと。夕陽を見ながらはじめてのキスをしたこと」
「……………………なに言ってるの?」
戸惑いを隠せない俺はコーヒーカップをふるわせずにいられなかった。
それぐらい衝撃的な内容だったから。
声を失いそうになるほど驚きを見せる俺がいる。
なぜって俺が人生で一度だけキスした時とまったく同じシュチュエーションの体験談みたいなことを言うから。
「なんで君が俺のファーストキスのこと……知ってるの?」
「だって…………」
途中で恥ずかしそうに、綺麗だった姿勢を崩させてみせた少女が勇気をもったような真剣な顔を見せたかと思った矢先のこと。
「だって、私が花河楓くんのはじめての彼女の鈴木鈴音だもの!」
「…………………………」
嫌な感じの冷たい脂汗が顔を濡らしはじめる。
まさに脂の汗の滝。
なにも言えない。
言えるわけがない。
なんで誰もが「失踪したんだ!」とか「誰かに殺されたんだよ、きっと」など、みんなが言われるぐらい何も残さず。
毎回デートしたあとに必ずって言っていいほど俺の背中を抱きしめながら言ってくれた。
「いつか絶対に私のことをお嫁さんにもらってね!」を裏ぎるかたちでいなくなった鈴木鈴音が今、俺の前に座ってるんだ!?
「今度こそ! 冒険者になれる資格を与えられる花河楓様のお嫁さんになるために、転生先の異世界から迎えにやってきた鈴木鈴音のこと、神々と悪魔がせめぎあう『大空世界』を冒険者《花河楓》様の鞘になるために、天使巫女になって舞い落ちちゃったのでござるよ!!」
この言葉を聞き終えた途端、半分以上のこってたブラックコーヒーをぶちまけながら。
白眼で気絶したのは言うまでもないはず。
そんな俺の気も知らず、ガバッと満面の笑顔を咲かせながら抱きついてきた天使巫女に転生したと言う鈴木鈴音は約、10年ぶりの再会できた喜びを爆発させるのだった。
されるほうは、もう素直に「されるがまま」になる。
すぐそこまで天使巫女が仕組んだ(?)のかもしれない。
敵が歩み寄ってきてることも知らずに……