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蟲毒な彼女は夜更かしのような恋がしたい  作者: 氷雨 ユータ
蜈ュ陝イ縲?ホ」ホ釆」

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美女美女水遊び

 水遊びをしに行く手前持っていきたくはなかったが、どうしても身に着けておきたかったので服を脱ぐまではとネエネから貰ったハートのブローチを首に下げ、俺はホテル横のビーチに足を運んだ。計画的に各スポットを巡って体力のあり余った学生はもうとっくに遊び始めている。一年生から三年生まで、年の差もなく遊ぶ様子は、俺には少々奇異な物にうつった。

 小学生の頃はまだそうでもないと思うが、中学校からになると部活以外ではどうしても上級生との間に距離を感じるようになってくる。仲が悪いとかじゃなくて、階層も違えば学年も違うから特定個人と仲が良くてもアウェーな気分を覚えるというか。

 まあ先輩としての圧の強さを利用して一年女子に粉をかけている男子も居るが、あれはあれで女子の方も満更ではなさそうだ。三年男子は俺が言うのもなんだがイケメン率が非常に高く、また運動部所属だったのか身体も引き締まっている。取り敢えず見かけだけでも良くした俺と違って実用的な筋肉の付け方だ。

 そんな男子二人に声を掛けられている辺り、あの女子はさぞ可愛いのだろう。身長も小さいから小動物的な可愛さがあるという事だろうか。俺は晴の方が好みだ。


 ―――居ないのか?


 無茶苦茶なスケジュールで何とか間に合わせて俺はへとへとだったが、陸上部は流石体力の基礎から違った。有り余る体力を発散するべくもう同級生と遊んでいると思っていたのに、非常に残念だ……。


「せ、ん、ぱ、い!」


 視界の端からひょこっと晴が顔を覗かせた。反射的に飛びのいて真正面に彼女を見据える。純真無垢な後輩はその性質を表すかのように白を基調とした花柄のフリルビキニ、スカートを着用していた。晴というとプール掃除の一件でスク水の印象が強かったが、今回で一気に塗り替わった。引き締まった身体にはビキニもまた似合うのか。フリルのボリュームで体全体のメリハリが増しているのも似合っている一因か。

 至って普通に見惚れていると、段々恥ずかしくなってきたのか晴は顔を逸らして上目遣いに尋ねて来た。

「日方先輩…………ど、どうですか? に合ってます?」

「…………可愛い。うん、めっちゃ可愛い」

「! ……えへへ、そうですかーっ? う、嬉しいです凄く! 日方先輩も凄くかっこいいです!」

「うーんそう言われるのは嬉しいけど、絶対他の陸上部の奴のがかっこいいぞ」

「私は日方先輩の方がかっこいいと思います! お腹、触っても良いですか!」

「え!? あ、ああ……うん……悪い待って。ちょっと人目につかない場所に行こう。恥ずかしいわなんか」

 お腹なんて何ともないのに、いざ触らせるとなると恥ずかしい。このビーチは別に貸し切りという訳ではないので全く人目につかないのも難しいが、せめて学生からは離れたい。浜の端に身を潜めると、緊張を吐息で誤魔化しながら覚悟を決めた。

「……いいぞ」

「失礼します!」

 つんつん、とお腹を指でつつかれる。それから掌をぴったりくっつけられて、不器用に撫でられた。何てことのない行動なのに、俺の方が凄い恥ずかしい。何となくパーカーを羽織っていても、まるで全裸を見られている様だ。

「満足です! 有難うございます!」

「あ、ああ……うん。やっぱ恥ずかしかった」

「そんなに恥ずかしかったんですか? ちょっと、想像出来ません。日方先輩、私のお腹触ってみてくれませんか?」

「え!」


 マジで?


 人目にはついていないが、俺も俺で、何を妙な反応をしているのだ。胸を触らせるとかそういう事を言っているんじゃない。お腹だ。何なら椎乃はへそ出しファッションが大好きだ。別に変な事なんてない。

 でも見るからに滑らかで低反発な弾力を、触りたくないかと言われたら嘘になる。俺の手はいやらしくも後輩のくびれに伸びて、指先が触れた瞬間、鷲掴みにした。

「ひゃんっ!」

「うお…………」

 マッサージをするみたいに指を蠢かせてお腹の感触を指で覚えていく。後輩にセクハラしているみたいだが、言い出したのは晴だ。じゃあ彼女が悪いのかと言われたら多分俺が悪い。触り方については何も言われなかったからと言い出したらそれまでだが、純真な後輩を騙しているみたいだ。

「ん………くすぐったいです……」

 掌をぎゅっと顔の前で握ってプルプル顔を震わせる。晴の反応が背徳感を煽ってますます触りたくなる。人目がないから、俺を縛るものが何もない。

「―――は、ぁう…………!」

「あ…………すまん…………」

 ふと正気に戻る時があって、そこでようやく後輩から文字通り手を引けた。くすぐったさで笑いそうになるのを堪え、堪えた結果苦しくなって彼女はその場にしゃがみこんだ。俺もハイテンションになりすぎた。本当にいかがわしい事をしたと言われても、反論出来ない。

「…………せ、日方先輩! い、一緒に泳ぎましょうよ! もしくはビーチボールに混ざりませんかっ?」

「お、おお……んでもビーチボールに入る隙間があるかは怪しいな。波打ち際で泳いでた方が楽そうだ」

「だ、だったらすぐに行きましょう……! か、顔が熱いので……!」

 凛も澪雨も椎乃も見えないから、後輩と遊ぶしかない。そんな仕方なくと言わんばかりの感情は、晴の気恥ずかしそうな笑顔に粉砕された。



 先輩として、護りたい。


























「流石にそこは私も混ぜろー!」

 椎乃の登場はドロップキックと共に。波打ち際とはいえ反射的に避けた俺は水中にもぐり、椎乃は椎乃で水の中に潜り込んでしまった。何を盛大に外しているのだろうか。絵面はとても間抜けだが、水で癖毛が濡れてしとしとになった椎乃には何か形容しがたいエロスを感じてしまった。

 レースの白いハイネックと、太腿まで余すところなく透けた、スカートというよりはヴェールのようなスリット入りのパンツ。浜を歩く姿はさぞ上品だろうが、緒切椎乃という女性は見た目以上にアクティブで、遊び盛りな奴だ。

 だからそんな恰好でびしょ濡れになっても気にしないし、そんな椎乃からしか得られない栄養がある。プルプルと顔から水気を振り払う椎乃に、暫く放心気味に見惚れてしまった。

「ん、ユージンどうした?」

「…………………め、めっちゃ好きかも」

「え……あ。ああ、そうっ? そ、そっか。ユージンってばこういうの好きなのね……」

 特にレースの部分から谷間が見えるのが良いと思う。椎乃は晴とかと比べたら遥かに発育が良く、多少寄せられたら谷間くらい簡単に生まれる。ここまで胸を気にするようになってしまったのはどう考えても凛のせいなので、後でアイツに責任を被せよう。そうしよう。

「緒切先輩も居たら三人で盛り上がりますね! 浮き輪デスマッチ!」

「そんな物騒な名前の遊びはやってない!」

「どういう事?」

「浮き輪ありでキャッチボールしてるみたいなノリだな。俺等もノリだからルールとかはないけど、浮き輪を上手く使って打ち返すのが芸術点が高いとされる」

「あーそういうね。いいわ、どう考えてもアンタよりは強いし! 晴ちゃんも覚悟してよ!」

「はい! 対戦宜しくお願いします!」

 突然の乱入者も暖かく歓迎し、一対一対一の仁義なきバトルロイヤルが開幕する。ふと視線を横にずらした時―――俺の意識は奪われた。

「日方先輩、行きますよ!」



 ――――――こゆ。



「ぶは!」

 大した勢いじゃないが、ボールが顔に当たった。

「あ、すみません! 大丈夫ですか!?」

「ボサっとしてんねー。そんなんで勝てるかしら?」


 ―――そこには、もう誰も居ない。


 こゆるちゃんとディースが、椅子に座っていた筈だが。 

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― 新着の感想 ―
[一言] 後輩があざとすぎますね。
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