深い暗闇の底で馳せる想い
ひかりの届かない暗闇の中、私は静かにそこにいる。
何をするでもない、何もできない、動くことができない。
できるのは、数々の戦いの記憶を振り返る事。
多くの敵を倒した、多くの仲間と共に。
散っていった仲間たち。
敵も味方も区別するのが難しいほどおびただしい数の戦いがあった。
私は多くの者から期待されていた。敵をうて、頼んだぞ、お前ならやれる。様々な思いを背負い戦場に赴いたが、それほど輝かしい戦績は残せていない。
最後は敵の集中攻撃によって終わってしまった。
私は、役に立ったのだろうか? 皆の希望を、多くの願いを背負いながら、こうして暗闇の中に堕ちている。
頼むぞ。
そんな言葉をどれだけ聞いたか。
頼まれたのに、それを叶えることなく終わってしまった。
今私ができるのは、数々の戦いの記憶を振り返る事、それだけだ。
悔やんで、逝ってしまった者たちへの追悼を捧げるのみ。
生き残った者たちの、想いを感じ取ることもあった。
彼らは志半ばで散った者たちを想い、祈りまで捧げてくれた。
その祈りの中には、私に対する祈りもあったのだ。
ただ戦うだけの存在の私に、祈りを。
この冷たい暗闇の中で、温かさを感じた時だった。
どのくらい時間がたったのだろうか。そんなことを考えるのも馬鹿馬鹿しいくらい時間がたったと思う。
ひかりが、見えた。
たいしたひかりではないが、暗闇の中にいた私には眩しすぎるくらいだ。
私を照らす光。
誰かの想いが、声が、聞こえる。
“見つけた! 間違いないのではないか! これは、沈没した戦艦武蔵だ! やっと見つけたぞ!”
人の声。
私は、長年海の底にいたが私を探す人たちがいたことに驚いた。
そしてもっと驚いたのは。
英語だ。日本人じゃない。
何故、奴らが私を探す? 辱めるためか、日ノ本への侮辱か。
国は一体どうなったのだ。私はもう戦えないが、あの戦争は勝ったと信じている。必ず、大和魂が勝利を掴んだと信じている。
見つけた見つけたとぎゃあぎゃあ騒ぐ米兵に、私は本当に久しぶりに苛立ちを覚えた。
私の”心“に、今、暗闇から灯がともる。
見ていろ、我が国は必ず、お前たちを。
END




