バイエルンミキサー
100年くらい前の、バイエルンという町でのおはなしです。
バイエルンには、たくさんのソーセージ工場がありました。
ソーセージは、お肉をミキサーでかきまぜて作ります。
人間が入れるくらい、とっても大きなミキサーです。
ミキサーの外にスイッチがあって、押すと機械が動きます。
ごうん、ごうん、ごうん。
ミキサーが、ぐるぐる回りはじめました。
お肉がミキサーのなかで、つぶれます。
このつぶれたお肉が、ソーセージの材料になります。
ミキサーは、毎日そうじをしないといけません。
ミキサーのなかに入ってそうじをします。
うんしょ、うんしょ。
ミキサーは毎日、ペーターがそうじします。
モップで、ごしごし。
タオルで、ごしごし。
ドリルをきゅっきゅっ、ぴかぴか。
天井をきゅっきゅっ、ぴかぴか。
そのとき、ミキサーが動き始めました。
ごうん、ごうん、ごうん。
うわー大変だ。
ペーターがミキサーに巻きこまれたぞ。
うわー、しまった。
スイッチを押しちゃった。
ペーターがなかにいるなんて知らなかった。
ソーセージ工場の社長は言いました。
ミキサーのそうじをしているときは、スイッチを入れてはいけないよ。
これからそうじをするときは、スイッチにぬいぐるみをかけよう。
ぬいぐるみがかかってるときは、スイッチを入れないこと。
いいね。
みんなは、ハイと答えました。
ミキサーは、つぎの日もソーセージを作ります。
ごうん、ごうん、ごうん。
ソーセージができたら、ミキサーのそうじをしましょう。
ジョンはそうじの前に、スイッチにぬいぐるみをぶら下げました。
ミキサーの中に入るから、スイッチを入れないでというしるしです。
ジョンはモップを使って、ミキサーの中をきれいにします。
ドリルをきゅっきゅっ、ぴかぴか。
天井をきゅっきゅっ、ぴかぴか。
次の日も、ジョンはミキサーのそうじをします。
ですがうっかり、ぬいぐるみを忘れてしまいました。
うわー大変だ。
ジョンがミキサーに巻きこまれたぞ。
しまった、スイッチを押しちゃった。
ジョンがなかにいるなんて知らなかった。
ソーセージ工場の社長は言いました。
ミキサーのそうじをしているときは、スイッチを入れてはいけないよ。
そうだ、スイッチにふたをしよう。
そうじをするときは、スイッチにふたをしてカギをかけようね。
みんなは、ハイと答えました。
ミキサーは、つぎの日もソーセージを作ります。
ごうん、ごうん、ごうん。
ソーセージができたら、ミキサーのそうじをしましょう。
オリバーはそうじの前に、スイッチのふたに鍵をかけました。
そうじをするときは、ふたが開かないように鍵をかけます。
掃除をしているあいだ、スイッチを押せないようにするためです。
でもある日、うっかりカギをかけ忘れてしまいました。
オリバーはモップを使って、ミキサーの中をきれいにします。
ドリルをきゅっきゅっ、ぴかぴか。
天井をきゅっきゅっ、ぴかぴか。
そのとき、ミキサーが動き始めました。
ごうん、ごうん、ごうん。
うわー大変だ。
オリバーがミキサーに巻きこまれたぞ。
しまった、スイッチを押しちゃった。
オリバーがなかにいるなんて知らなかった。
社長は、ソーセージを食べながら考えました。
どうすれば事故が起きないようにできるのかな。
考えるのに夢中で、社長はフォークを忘れてしまいました。
しまった、2本ともナイフを出しちゃった。
ん、まてよ。
そうか、いいこと思いついた。
さて次の日。
トーマスは そうじをするためにミキサーに入ろうとしました。
しかしドアが開きません。
あれ、カギがかかってるぞ。
社長は言いました。
トーマス、今日からドアにカギをかけたんだ。
カギはこっちにあるよ。
社長は、みんなを集めて言いました。
ミキサーのドアにも、カギをつけたよ。
このカギは、スイッチのふたのカギと同じなんだ。
これからはスイッチにカギをかけて、そのカギでドアを開けるんだ。
スイッチにカギをかけないと、カギは抜けないよ。
次の日も、トーマスはミキサーのそうじをします。
おっと、カギを忘れたぞ。
カギがないと、ミキサーに入れない。
スイッチにふたをしないと、カギは抜けないんだ。
ははは、カギを抜いたからスイッチは押せないよ。
トーマスは、ミキサーをそうじします。
ミキサーをきゅっきゅっ、ぴかぴか。
天井をきゅっきゅっ、ぴかぴか。
100年くらい前の、バイエルンという町でのおはなしです。