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「『宿りの子』という存在がある。この、「隣街」限定の専門用語なんだけどね。僕やみなねぇは違うけど、木目さんはどうなのかな」
「たしかに。宿りの子は、植物の能力減を直接心臓とかに住まわせた子だけど、おぐにぃ(小草のこと)はクローバーのエネルギー自体が実物化して生まれたし、うちも紅葉の葉から来た。ななは自分でどっちなのか、わかる?」
するとななは元気よく手を挙げて、
「さっぱりなんの話をしているのかわかりまへん!」
でしょうね、という顔をしたろくおんとみなぎは、その話をやめることにした。
実際、これを知ったからって、なにかになるわけでもないことに気づいたからだ。
「ところで、宿題が出されたの?」
「あ、そうだった。ちょっと待ってね……えっと。あ、あった。ほら、このプリント」
みなぎからプリントを受け取った録音は、「落書きが先生の説明より多い…えーっとあー、なるほどね」と、なにか考えている様子だったが、頷き、考えて、紙を見る、のループを何回か繰り返してから、
「要は、うちで働けってことね」と結論づけた。
慌てて、両手を振るなな。「あわわ、あたしまだ中学校で…」
「中学生、ね。でも、なな、大丈夫だから。おぐにぃのお店はそんなルールないから安心して。しかもとってもホワイト───まぁこの街は基本ホワイト企業だけどね」
「えっ、ええええー!?」
みなぎの言葉に思わず、驚いてしまった。
「小草くんのお店?パパママとかじゃなくて!?すごい!行ってみたい!今行こ!!」
顔を見合わせる、みなぎとろくおん。
「うちはいいけど、おぐにぃは?」「僕はオーケーだよ。今日は休日だし…でも木目さん、なんのお仕事かわかってるの?」
立ち上がって、「おっしごとおっしごと♪」とくるくる回るななが、「ギクッ」と崩れ落ちた。
「知らないのに、やるって決めたの?まぁ、そんな危ない仕事じゃないよ。『旅人の道案内』と『ショップ管理』と、『あーてぃすと業』、『リラックス住処のリニューアル、それから……』」
「ちょ、多くない?結局どういうお仕事なの?」
「観光業に近いかもしれないけど、それっぽく言うなら、斬新の道のり、かな?」
だがその時にはもう、木目ななは目を輝かせていた。手でvサインを作り、
「まだ小学生なのに、神ですか!!」
と笑った。
「はい、神です」
ガッツポーズをとる小草ろくおん。
まだまだ色が付けられていない、白い街のキャンバス。なんだか幸せな色付けで、いたずら書きが重なっていきそう。
それは、遠い昔から結ばれた奇跡。
自分だけの、みんなの、楽しい日々の思い出。
まい、まい、晴色の∽と。