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「初登校だぁ〜」
「中学校の、ね」
オレンジのグラデーションのロングヘア。頭のてっぺんに若葉をはやし、二本の枝葉を伸ばす。木目なな、新中一の女の子。
同じく、果川みなぎ、もみじのような髪、が、緑───春に溶けるような緑に染まる。
桜並木を通るのは、もう一年ぶりなんだなぁ。と、物思いにふけっていたななは、危うく前から来る通行人と衝突するところだった。
「あっすみません」
「スルーされちゃっちゃったね」
「アハハ。それにしても……」
坂道を往来する人々。職人をやっていそうな大人もいれば、これからお世話になりそうな制服の姿もみえる。が、よくよく観察すると、トマトのようなヘタ付きの赤布団に包まれてずりずり這う人や、頭に三つ葉をかぶせた子も見かけた。
「不思議な子ばっかりだ♪」
そういって、背伸びした。ピョコンと芽が跳ねる。
「ななも人のこと言えないけどね」
「そういうみーなーぎだって、実はモゴモゴ…」
「こら、秘密って言ったでしょ」
「ご、ごめんね」
「許す」
そうだった、ヒミツ、だったんだ。
あたしも、みなぎも、「アレ」なんだということは。
「でもさぁ、みーなーぎは変わってないね、初めて、小学校であった時から」
「なな…」
「ほら、優しいとことか、お話に乗ってくれるとことか」
そうか、もうそんなに時が経っていたんだ。「ななだって、人のいいとこ探し───わっ」
話に夢中になって、近づきすぎたせいか、二人揃って転んだ。ふと、みなぎの両手に伝わる、柔らかななにか。枕か?
「イテテ…あっ、ごめん下敷きにしちゃってた!」
枕か?
「大丈夫だよー。でも、その、みーなーぎ…どこ触って……」
気づく。胸だ。ななの、胸だ。
ちょっと前まで同じくらいだったのに。
「ななは───変わったね、色んな意味で」
「顔怖っ」
「いいから、はやく学校にいこ!急がないと、遅刻するよ!」
「はーい」