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悪役令嬢の弟に転生しました リーマンの乙女ゲー攻略日誌  作者: くま太郎


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トラップ始動

 噂に聞いていたけど、ここまでとは……ジェイド領は見事なまでの荒れ地でした。

 見渡す限り全てが茶色。砂埃りが舞いまくって、視界はかなり悪い。

 西部劇のロケ地に持ってこいだ。

(移動手段は馬よりラクダの方が合っているかもな)

 この世界に、ラクダがいればの話なんだけどね。いても外国に棲息していたら、無意味なんだし。

 一応、川はあるけど、飲み水としては完全にアウトな色と臭いだった。浄化魔法をつかえば、馬の飲み水には使えるらしい。


「これじゃ、まともに作物が育ちませんね」

 ゴーレムで獲得した外貨で食い物を買っていると思うんだけど、不作になったらやばいと思う。

 ゴーレムはあくまで生活を便利にする為の道具。金やお洒落で腹は満たせないのと一緒で、ゴーレムで腹は満たせないのだ。

 不作になったら、外国からでも高値で買う羽目になる。


「数年前まではうちもそうでしたよ。トール様のお陰で収穫量が大幅にアップしたので、領の運営がかなり楽になったんですよ」

 あの頃は爺ちゃんや領地の皆に認めてもらおうと必死だったんだよな。

 城に来た当初なんてゴミを見る様な目で見られていたもん。今はかなりマシになりました。


「ここまで来ると、かなり金を掛けないと元に戻りませんけどね。こっちの世界でも自然破壊を目にすると思いませんでしたよ。ジュエイド領って水害が多いんじゃないですか?」

 木を伐りまくった所為で、土地の保水力が落ちたんだと思う。自業自得なんだけど、リアル神様がいるなら、注意したれよって思う。この世界の神様や天使は、人の恋愛には首を突っ込むけど、天災や人災がガン無視なんだよな。

 不幸が起きてから勇者や王様にどうにかしろじゃなくて、せめて対策を授けろよ。

 魔王軍が攻めてくるから『主人公と仲間が頑張れ』じゃなく、魔族の不満を解消した方が損害も少ないと思うんですが。


「良く分かりましたね。それも、前世の知識ですか?あれを見て下さい」

 二コラさんの話によると、洪水に悩まされたジェイド領では、ゴーレム堤を作ったそうなんだけど……。


「なんで顔付き!?しかも、めっちゃ笑顔だし」

 笑顔のまま削られているゴーレム……恨みが積もって、夜中に動きそうなんですが。


「人型にした方が操作しやすいそうです。それと顔があると魂が宿ると信じられているそうです」

 いや、宿っているなら、扱いをちゃんとしないと。堤防扱いだと、悪霊が宿りかねないぞ。


「分かった様な、分からない様な……手筈通り、次の休憩地点からは、二コラさんが御者をして下さい」

 町に着く前に罠を仕掛けておこう。

 折角、色々手を打ったんだ。上手く引っ掛ってくれよ。


 ◇

 門番ゴーレムに出迎えられて、最初の街に到着……したのは、良いんだけど。

(めちゃ睨まれているんですけど!)

 対応してくれた騎士が、俺が睨んできています。気持ちは分かるけど、もう少し腹芸を身につけようぜ。


「ようこそ、皆様。長旅、お疲れだったでしょう。今晩の宿にご案内します……ニ、二コラさんが御者をされているのですか?」

 騎士が御者をしている二コラさんを見て驚く。ニコラさんは前大戦の英雄だ。御者……しかも、俺みたいなフツメン貴族の御者をしているのが、信じられないのだろう。


「伯爵からの命令ですので……何より、トール様は我が領だけでなく、イルクージョンにとっても、大切なお方。命懸けでお守りしますよ」

 打ち合わせ通り、ニコラさんは騎士に殺気を放ってくれた。これでジェイド領は、ニコラさんを警戒する筈。

(街には、それなりに活気があるな……井戸の使用料高っ!)

 住民は無料だけど、旅人は一汲み約千円……水が貴重なのは分かるけど。ぼったくり過ぎるぞ。

(護衛兼見張りの兵士が大勢いるねー。俺等の動向を逐一報告する気か)

 予定で行くと明日の昼には襲撃地点を通る。でも、気付かない内に出発したら、計画が失敗してしまう。

 顔が必死過ぎて、襲撃計画を知らなくても何かあるんじゃないかって疑っちゃうぞ。


「クレオさ……皆様、お初にお目に掛かります。私がこの地を治めている代官の息子チャラ・ジェイドでございます。皆様の安全は私が責任を持ってお守りします」

 今、確実にクレオ様って言おうとしたろ。だって、チャラの目はしっかりクレオをロックオンしているし。

 そのまま、チャラはクレオをエスコートしようと近づいていく。


「初めまして。トール・ルベールです。流石は評判の高いジェイド領のお方だ。婚約者がいるのに、女性をエスコートしようとするなんて……私みたいな若輩者には無理ですよ。日差しが強いと面の皮も厚くなるんですね」

 二人の間に割って入り、笑顔で、毒を吐く。恐らくチャラは俺が死んで傷ついているクレオを慰めて、自分がって算段なのだろう。

(プライドの高いお貴族様だ。部下の前で嫌味を言われたら、怒るだろうな)

 そして逆恨みして、俺を確実に襲ってくる筈。


「け、決してそんな訳では……不細工の癖に調子に乗りやがって」

 チャラ君、心の声が駄々洩しているぞー。でも、これで確実に針に喰らいついたと思う。

 クレオさん、なんで俺の服を握っているんでしょうか?


 ◇

 護送馬車が襲撃地点を通ろうとした瞬間、一人の騎士が森から姿を現した。


「二コラ様、大変です。先に進んでいたレイラ様の馬車が賊に襲われました。救援を寄越して欲しいとの事です」

 現われたのは、昨日ひと悶着を起こしたチャラ。真剣な目で伝えて来るも、どこか愉悦を隠せていない。

(本当にトール様が仰っていた通りになったな。さて、下手な演技に乗ってやるか)

 森の入り口には騎士が立っており、通行を規制していたし、崖の前でも交通整理と称して、数分待たせれたのだ。

 そして都合よく森から出て来たチャラ。トールの予想通り、そして部下からの報告通りであった。


「分かった。トール様をお願いします」

 二コラはそう言うと、馬車と繋がっているロープを切断する。駆け出す際、チラッと森の奥に目を移す。その瞬間、木々の隙間から何がが煌めくのが見えた。

 それは彼の部下が出した合図だ。王家の諜報部と共に、チャラ達の監視をしていると言う合図である。


「お任せ下さい……さて、良くも昨日は恥をかかせてくれたな。やれっ!」

 チャラの合図と共に護送馬車は崖下に転落していく。


 ◇

 二コラさんが出発して二十分位経った。


「脇道で崖崩れが起きました。本道の方をお通り下さい」

 ジェイド領の騎士が満面の笑みで告げてくる。ここで俺が顔を出したら受けるだろうな。


「領都についたら、俺の馬車が転落したって報告が来るんだろうな」

 だって、騎士の皆さん凄い笑顔なんだもん。安心したのか、馬車の中もチェックせずに通してくれた。


「今日の事をちゃんとお父様に報告しなきゃ……ここまでされたのに、ジェイド伯爵に贈り物するんでしょ?」

 クレオは納得がいかないって顔をしている。そう、俺は途中でクレオの馬車に乗り換えたのだ。

 中を改めようにも、ドアは姉ちゃんしか開けられない。何より二コラさんが御者をしているから、中身を改めず馬車を通してくれたそうだ。


「そうしたいのは山々だけど、ジェイド伯爵への貢ぎ物は護送馬車の中なんだよな」

 護送馬車を襲わなきゃ冷蔵庫が手に入ったのに残念。

 代わりに王様から、もっと素敵なプレゼントが届くと思います。

 良くて爵位剥奪、下手したら死刑だと思う。


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― 新着の感想 ―
[一言] 正直、こんな三下が大量に発生しているこの国は、滅んだほうが良いと思います。
[一言] 少なくともチャラたちジェイド領の騎士は、首をくくらないといけなさそうですよね。
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