表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の弟に転生しました リーマンの乙女ゲー攻略日誌  作者: くま太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/77

無事?解決

 今回の件で、俺は悪くない筈……でも、罪悪感を覚えてしまうのは、何故でしょうか?


「……トールは貴方みたいなおばさんに興味ないのっ!大人なのに、恥ずかしくないんですか?」

 クレオが俺の為に怒ってくれている。そしてリリスも気まずそうだ。彼女は堅物な人間が多いクラック帝国生まれ。仕事とは言え、年下を誘惑なんて恥ずべき行為だと思っていたのだろう。

(あれがリリスの限界だったんだろうな……)

でも、一つだけ言わせて。俺にも全弾命中しているんですが!


「ナンパされたって叫ぶか……貴女、私の弟に冤罪をなすりつけるつもりかしら?」

 額に青筋を浮かべて、リリスに詰め寄るお姉様。全身から悪役令嬢オーラが出まくっています。

 でも、お姉様。その言い方だと、俺がナンパする事が罪だって事になるんですが!二人共、無自覚で俺を責めているんだぞ。

 こっちは、まだ良い。痴話げんかの範疇だ。


「ここまで考えが浅いとはな……そりゃ、実家からも見放されるさ」

 現役モードのニコラさんがザントに詰め寄る。言い訳させる気ゼロのがん詰めです。

 あまりの迫力にクレオのメイドさんまで顔が青くなっている。


「私は彼女を幸せにしたかったんだ。その為なら悪魔にも魂を売ってやる」

 先生、そこはしらを切らなきゃ。おじさんの模範解答としては『リリスが誰かに付き纏われていると聞いた。だから犯人を捕まえる為に動いた』です。


「お前がご執心だと言う、元婚約者の事か?先生様はもう成人なんだろ。女の幸せを考えたら、身を引くのが大人じゃねえか?」

うん、正論だ。俺も、そう思う。でも、ここに俺がいる事忘れていませんか?

二コラさんは真面目な性格をしている。諜報部員として怪しまれない為ってのもあるかもしれないけど、きちんとした大人だ。

(どう考えても主人公こうこうせいに手を出す人じゃないんだよな……まさか姉ちゃんだけでなく、ニコラさんもゲームの影響を受けるのか?)

俺はまだ主人公と会ってさえいない。ごちゃごちゃ考えても無駄だと思う。

今俺がすべきなのは……。


「ジェイド伯爵に認められたいんですよね?だったら、商売なり何なりで稼ぐ方法を考えれば良いじゃないですか?」

 ザントに近づき諭す様に、話し掛ける。ザントはまだ若い。何より、頭も顔も良い……多分日本だと引く手数多だったと思。ただ、ジュエルエンブレムが顕現しないってだけど、落ちこぼれの烙印を押されたのだ。

 おじさんとはしては前途ある若者を何とかしてやりたい。まだザントはやり直せる筈。

 何より、もう俺のダメージが限界なのです。


「う、うるさい!中学生で、ジュエルエンブレムを顕現させたお前に何が分る。私はアムール様に心から祈りを捧げた。お洒落にも気を使い、ダンスも練習した……なんで、お前なんかがジュエルエンブレムが顕現させたんだ!不細工の癖にずるいじゃないか」

 ザントが泣きそうな声で叫ぶ。その姿はまるで駄々をこねる子供の様だった。

……なんでって言われても、アムール様じゃなく、師匠の仕業なんだし。


「両親からアムール様への祈りは日頃の感謝だと教わりました。そして、ダンスもお洒落も自分の為なんじゃないですか?恰好良くなりたい、綺麗になりたいからお洒落をする。ダンスが好きだから、練習をする。どれも見返りを求める物じゃないんですよ」

 良い事言ってる感じだけど、今のは詭弁だ。

まず俺はアムールに感謝していない。だって、なんの加護も受けていなんだし。

 多分、ザントの周囲にはきちんとした大人がいなかったんだと思う。だから、ついお節介を焼きたくなる。

 俺の場合、お洒落は周囲を不快にさせない最低限で済ましているし、ダンスは諦めた。

 知っている人から見れば説得力ゼロなのです。

 正に詭弁。


「うるさい、うるさい、うるさーい!お前、餓鬼の癖に生意気なんだよ!教師の権限で落第させてやる」

 逆効果だったか。そりゃ、中坊に人生を諭されてもね。ブリーゼさんの旦那レイジの場合、俺が大人に戻ったから話を聞いてもらえたんだし。


「トール、うっさい。商売の邪魔や。新作のパンを持って来たんやろ?はよ、こっちに来い」

 裏口から出て来たリベルが俺の肩を掴んでまくし立ててきた。そのまま、俺を裏口に押し込もうとする。

(はよ、レイラはんとクレオはんを呼べ。ジェイド伯爵が配下を連れて、こっちに向かっとる)

 リベルの話では、ジェイド伯爵が店に大勢の部下を連れて来てたらしい。しかし、魔法研究会の会長が店に入って来たら、物々しい雰囲気で出て行ったとの事。

ジェイド伯爵がキャナリー商会に来るのは別に不思議じゃない。爺ちゃんと同じでジェイド伯爵も王都に屋敷を持っている。

でも、大勢連れて来るのは不自然だ。

(クラック帝国から圧力を掛けられたんだろうな)

 ジェイド伯爵が爵位を譲らずに済んでいるのは、クラック帝国の存在が大きいそうだ。

 日本風に言えばスポンサーや株主から圧力が掛かったと……そりゃ、社長はくしゃく自ら動くよね。


「姉ちゃん、クレオ、商会に行くよ。皆の意見も聞きたいので、一緒に来て下さい……二コラ、先生にお迎えが来るそうだ。離して上げなさい」

 ニコラさんは俺とリベルの話を聞いていた筈。何より俺の表情で何かあったと察してくれたと思う。


「分かりました。トール様、新しいパン、私も楽しみにしていますよ」

 一気に執事モードに戻るニコラさん。

 解放されたのに、ザントは涙目だ。ここにいるはルベール家の者だけじゃない。他国、しかも公爵家の関係者に失態を見られてしまったのだ……ザント先生、心からご無事をお祈りしています。


 流石はキャナリー商会本店、広いです。メイドさんが一緒でも問題なく入る事が出来た。


「リベル、サンキュー。助かったよ」

 いくら俺でも現役伯爵に圧力を掛けられたら、負けを認めるしかない。店を囲まれても、爺ちゃんに迎えに来てもらえれば問題なし。


「ダチやから、当たり前やろ……それより何があったか教えろ」

 商人であるリベルにとって情報は貴重。商会の人達も聞き耳を立てている。

こうなれば、皆巻き込んでやる。俺は言える範囲でザントとの因縁を話した。


「って訳でザントのメイドさんに、偽逆ナンされたのさ」

 偽を強調しておく。だってクレオのメイドさん達も聞き耳立てているんだもん。


「トールは生徒会で王子様に気に入られている。だから、ジェイド伯爵も焦ったんやな……誰かおとんに報告を頼むわ。それとルベール伯爵にも使いを頼むで」

 おお、流石はリベル。動きが早い。


「これが約束の新作パン。コーンマヨ・ジャガマヨ・ハムサラダ・揚げパン・ピーナッツバターだ。数はある程度作ってあるから。切り分けて数人に渡してくれ。そして、これが前に言っていたマヨネーズだ……正直、まだ量産はきつい」

 お陰でパンはどれも好評だった……でも、俺はまだ満足していない。マヨで信頼を得て、アンパンを作る。そこから、あんこ文化をイルクージョンに根付かせるんだ。


 週明け、ザントが学校を辞めていた。もっと正確に言うと、ザントとリリスが行方不明になったのだ。

 それにも関わらず、魔法研究会の会長は明るく笑っているらしい。


「トール君、それではお約束の鉱物辞典をあげますね。それとザントとリリスですけど、デモンジェエルを植え付けられたみたいですよ。確実に君を狙ってくるから気を付けて下さいね」

 修行場に行ったら、師匠がとんでもない事をぶっちゃけて来た。なんでも眼鏡執事、ザント、リリスの三人はクラック帝国でデモンジェエルを植え付けられたそうだ。


「俺、その三人から逆恨みされてそうなんですけど」

 眼鏡執事はジュエルエンブレムを持っていた筈。それなのに、デモンジェエルを植え付ける必要はあるのか?


「だから教えて上げたんじゃないですか。このままだと、君は商売が中心の生活をしちゃいそうですし。ちなみに眼鏡執事はアイスオーガ、ザントはデモンナイト、リリスはワーキャメルのデモンジュエルだそうです」

 いや、キャラをガン無視ですか。アイスオーガとデモンナイトは百歩譲って良いとしよう。ワーキャメルってラクダ人間ですか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ