10 問題あり
R15注意
手術は無事成功した。ただ、麻酔から覚めた後、いつもと違って何の匂いも感じ取れないことに、物凄い違和感と恐怖を覚えてしまったヴィクトリアは、泣いてしまった。
シドがずっとそばに付き添って慰めてくれたが、それは愛の営みも伴った。
嗅覚は失ったが、シドから女の気配を感じ取れなくなったことで、ヴィクトリアはシドとの営みでは苦痛を感じないようになった。
毎日毎日、入院中の病室でシドに求められるヴィクトリアは、毎回ごっそりと体力を削られた。
シドは宣言通りヴィクトリア以外の女は一切抱かなくなった。
ただ一人でシドの相手をするヴィクトリアは、「シドは獣人王じゃなくて✕✕王なんじゃないか」と錯覺する毎日の中、シドに愛されて幸せを感じつつも、いくつか心配事や考えなければいけないことがあった。
その一つは、やはりシドに別れを告げられた番たちのことだった。
鼻を覆う包帯が取れて、医師からもう退院しても大丈夫だと言われても、ヴィクトリアは医療棟の特別室で寝泊まりを続けていた。
シドは、「ヴィクトリアの鼻の処置が終わったら里を出ても構わない」と言っていたが、ヴィクトリアの方が、それでいいのだろうかと思ってしまって、里から出る決心が付かなかった。
ヴィクトリアは、医療棟から出た後は元いた自分の私室があるシドの館に住もうかなと考えていた。しかしシドは、「館の外に別の新しい家を用意してやるからそこに俺と住め」と言っていて、二人の意見は食い違っていた。
結局、「住む場所は急いで決めなくてもいいから、しばらくは医療棟にいろ」とシドに言われて、その通りにすることにした。
その日、いつものように時間の許す限り特別室に滞在しまくろうとしていた様子のシドは、「俺が教えてやる」と上機嫌な様子でヴィクトリアに迫ってきた。
ヴィクトリアは本の読みすぎと、シドが他の女と――以下略――なので、番の望みならばと了承した。
「……またか」
シドはため息と共に呆れたようにそう呟いた後、行為を止めてしまった。
「……また、なの?」
ヴィクトリアもシドの意図に同調し、なぜ続けないのかと異は唱えない。
シドがヴィクトリア以外の番全員と別れると宣言して以降、何人かの番が自殺未遂を起こしている。
また誰かが死のうとしているのだと気付いたヴィクトリアは、喜びに溢れていた表情を一変させて、顔色を翳らせた。




