6 お預け
R15注意
露天風呂で身体を温め、朝からシドに愛されたヴィクトリアは、昨日の疲れも相まってヘロヘロになってしまった。
部屋の中に戻った後、「布団」と呼ばれる平たい寝具の上で休みたかったが、昨日の余波が残っていたので、宿の人を呼び新しいものに替えてもらった。
朝食も運ばれてきたが、ヴィクトリアは食事をするよりも寝ていたかったので遠慮しようとした。けれどシドの膝の上に座らされて、これまでにない甘い微笑みを浮かべるシドによって、餌付けされるように食べさせられた。
里にいた頃は宴会の度にしょっちゅうされていて、嫌で嫌でたまらなかった行為だが、番になった今では、シドのこの愛情表現を喜んで受け入れている自分がいた。
シドが手づから料理を食べさせる相手はヴィクトリアだけだ。
途中でシドが悪戯を始めたので食事は中断してしまった。シドは好色そうな視線をヴィクトリアに向けつつ、実に楽しそうだった。
シドは鼻を焼いていない今のヴィクトリアの状態をよくわかっていた。
多くの女の気配にまみれた✕✕よりも、他の雑多な匂いで性的な匂いが紛れている✕の方が、ヴィクトリアは余計なことを考えずにいられた。
とはいえ――――
「欲しいか?」
シドは元より何でも見抜いてしまう鋭すぎる嗅覚の持ち主だが、番になったことでより感覚が増し、ヴィクトリアの状態など全てお見通しのようだった。
「帰ったらな」
嗅覚で人の心の中が読めてしまうシドがそう返事をする。
「帰ったら……?」
「そうだ。それまではお預けだ」
またヘロヘロになったヴィクトリアは、食事もそこそこに布団に倒れ込んで寝てしまった。
次に目を覚ました時は浴衣ではない新しい服に着替えさせられていて、ヴィクトリアはシドの腕の中に抱かれたまま、外を移動をしている最中だった。
ヴィクトリアはあの温泉宿でもう一日二日くらいゆっくりしたかったが、シドは長く滞在するつもりはなかったらしい。
周囲の景色がとても早く流れている。自分たちがどのくらい移動したのかわからないが、わざわざ運んでくれているのに「戻りたい」と言うのも憚られたヴィクトリアは、疲労感の残る身体をシドに預けて、再び眠りに落ちた。




