5 温泉宿にて
R15注意
翌朝目覚めると、身体が大変なことになっていた。
お風呂に入らねばと寝具から出ようとすると、背後から伸びてきた腕に捕まり、シドの腕の中に閉じ込められていた。
「ちょ、ちょっと待って……!」
ヴィクトリアはシドに後ろから抱きしめられている格好になっていた。シドは不埒だった。
「どこへ行くつもりだったんだ?」
「お、お風呂……! お風呂へ!」
「俺が入れてやると言っておいたはずだが、なぜ一人で行こうとした?」
ヴィクトリアたちがいる部屋には、格子状に連なる木枠の間に白い薄い紙が貼り付けられた扉があり、その先からは温泉らしき匂いが漂ってきている。
『これこそが温泉宿の本で見ていた「露天風呂付きの部屋」ね!』と気付いたヴィクトリアは、早めに入浴したかったこともあり、朝目覚めて一番にお風呂場に向かおうとしたが、シドに止められてしまった。
シドはヴィクトリアの首筋や背中にチクリとした痛みを与えると共に、昨日もこれでもかと付けた所有の証をまた量産していく。
ヴィクトリアにシドを置いていく意図はなかったが、それを説明しようとしてもシドに翻弄されて上手く喋れない。
昨日の熱が蘇り出した。
ヴィクトリアはあまりの恥ずかしさから真っ赤になり涙目になっていたが、それがシドのムラムラ心に火を点けてしまったようで、また押し倒された。
シドはそのまま続行しようとしたが、翻弄されている間は大丈夫でも、鼻を焼いていないままではシドに他の女の気配を感じて、ヴィクトリアは辛くなってしまう。
ヴィクトリアの涙が、「恥じらい」からではなく「シドの過去の女関係」が原因だと気付いたシドは、自分で完全制御できることもあり、すぐさま✕✕を収めていた。
「障子」と呼ばれるその白い紙が貼られた扉を開けた先は露天風呂になっていて、新緑豊かで爽やかな自然と情緒漂う温泉処が融合した美しい景色に、ヴィクトリアは大いに感動した。
しかしヴィクトリアがのんびりできたのは、身体を洗い終えて歓喜の声を上げながら温泉に浸かった直後くらいまでで、シドは陽の光に照らされて輝かんばかりだったヴィクトリアにやっぱり高ぶっていたらしく、結局また襲われた。
お湯の跳ねる音が露天風呂に響く。
ここは一応屋外だが、シドが「何人たりとも許可なくこの場所へは近付くな」と厳命しているそうで、誰も来ない。
「少し無理をさせたな」
これで終わりだろうかと思ったが――――
「――――! ――――!」
愛しい番と結ばれる喜びはあったが、シドがこれまで関係した女たちとの場面が嗅覚を通して頭の中にも浮かんでしまい、吐きそうにもなってしまった。
ヴィクトリアはモヤモヤモヤとした思いを胸の中に抱いて苦しくなり、喜びなのか苦しみなのかわからない声を出しした。
この現象は、シドと番い始めた昨日から始まり、気が遠ざかった場面などでは何度となく起こっていた。
「洗ったが、こびりついた匂いはそう簡単には取れない。お前には悪いことをしたと思っている」
シドが、自分が悪いと謝罪するような発言をするなんて、これまでだったら絶対になかったことだ。
シドは浴槽の縁付近の階段状になった所に腰を落とした。
下半身がお湯の中に入ると、そのお湯に遮断されてシドが女たちと絡んだ匂いが少し遠ざかる。
ヴィクトリアは胸につかえた嫌な気持ちを外へ追いやるように、息を吐き出した。
「俺の技を持ってすれば、どんな状況でもお前の✕✕✕✕✕✕✕✕✕させて✕✕✕✕✕✕✕✕✕てやる」
シドが真顔で自信満々そうにスケベなことを言っているのが、なんだか可笑しくなってしまって、ヴィクトリアは微笑んだ。
「シド」
「何だ」
「愛してる」
そう告げると、シドは切れ長の目元をふっと柔らかく綻ばせて、とても嬉しそうに笑った。
「俺も愛してる」
そうして愛を確かめ合いながら、シドはヴィクトリアの唇に優しい口付けを落とした。




