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獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~  作者: 鈴田在可
アルベールハッピーエンド あなたと生きる道 ~嫌われ幼馴染の逆転劇~

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5 奸計

R15注意

【クズ注意、吸血注意、変態注意】


ヴィクトリア視点→アルベール視点

 ヴィクトリアは窓のカーテンをすべて閉め、揺れる馬車の中でじっとしていた。


 ヴィクトリアは死んでしまったシドやナディアのことも考えたが、一番はレインのことを考えていた。頭の中では処刑場から離れる時に見た、地面に倒れているレインの姿ばかりが思い浮かぶ。


 本当は今すぐ処刑場に戻りたいが、レインが自分の胸を刺そうとしてきたことが衝撃的すぎて、彼の元へ戻ったとしてもまた悲しい思いをするのではないかと、暗いことばかり考えてしまい、どうしてもレインの所へ戻る踏ん切りがつかなかった。


 それに毒を受けたアルベールのことも心配で、解毒剤や治療魔法が効いた様子ではあるが、あまり無理はしない方が良いと思ったし、アルベールはこのまま里へ向かうのだろうから、里に着いたら医療棟で治療を受けるように促そうと思った。


 とはいえ、ヴィクトリア自身は里の中にまで入るつもりはなかった。ヴィクトリアは里ではなくて、ロータスとマグノリアの家へ行くつもりだった。


 里にはリュージュがいるはずで、リュージュとは顔を合わせ辛かった。


 そのうちにオニキスが追いついてくるだろうし、その時点で自分は里には帰らないと言って、オニキスにアルベールを任せて別行動をするのでもいいかなと思っていた。


 現在、人間たちから逃げているという止むに止まれぬ状況ではあるが、図らずもアルベールと二人きりになってしまっている。


 二日前にアルベールに襲われた酷い出来事は忘れていないし、とりあえず今は逃亡中なので安全が確保されるまでは何もしてこないとは思うが、襲い掛かってくる可能性もあるので、注意しなければと思っていた。


 何かしてきたら魔法で氷漬けにしてやろうと思っているが、不安はかなりある。


 先ほど、馬車が発車する前にアルベールは格子窓ごしにヴィクトリアに微笑みかけていたが、細められた金色の瞳に、隠そうとしても隠せていない欲情の炎が見えて、その瞬間、背中に悪寒が走った。


 こちらを見つめる視線一つで、アルベールがヴィクトリアを全然諦めてないんだろうなというのが良くわかった。


 アルベールのことを考えれば考えるほどに、ヴィクトリアは早めに彼から離れるべきなのだろうと思い始めるが、もしも一人にしてしまった後に毒の影響で倒れたらと思うと心配だし、オニキスが来るまではアルベールと行動を共にしようと決めた。


(おじさん、早く来ないかな……)











 馬車は首都近郊を抜け、坂を登ってどこかの森の中に入った。しばらく進んだ所で馬車が止まる。


「少し休憩しようか」


「……窓、開けてもいいかしら?」


「いいけど、人間が通りかかったらまずい気がするから、誰か来たらすぐに閉めてね」


 ヴィクトリアはカーテンを開けてみたが、窓ははめ殺しになっていたので、入口の扉を開けた。


 たくさんの樹木の匂いがしたので周囲は森だと思ったが、見る限りここは山麓のようだった。一応道は整備されているようだが、あまり人気はない。アルベールは馬車を寄せて道の路肩に止めていた。


「近くに川の匂いがするから馬に水を飲ませてくるよ」


 アルベールは馬車の引き具から二頭の馬を解放していた。


「あと、お腹すかない? ついでに川魚でも取ってくるよ」


(そういえば……)


 確かに昼食を食べていないのでお腹は空いている。


 ヴィクトリアがお腹に手を当てて撫でる仕草をすると、それを見たアルベールが口元の布越しに微笑んだ。


 ぞぞぞ、と再びヴィクトリアの背中を何かが走る。


「じゃあ行ってくる。馬車の中で待ってて」


 アルベールは、顔が強張りそうになるのを表情操作で取り繕っているヴィクトリアにそう言うと、馬を引き連れて木々の向こうへと消えていった。











 ヴィクトリアは馬車の中でアルベールを待ちながら、頭の中でレインのことばかり悶々と考えていたが、ふと、一人にしたアルベールが毒の後遺症で倒れていたらどうしようと思い至った。


 促されるまま馬車で待っていたが、そもそもアルベールと行動を共にしようとしたのは、毒の後遺症が心配だったからだ。


 ヴィクトリアは外に出るのをちょっと怖く感じたが、馬車から降りて、川の匂いを探って歩き出した。


 しばらく歩くと、川の匂いが漂ってきて、すぐに川の流れる音も聞こえてきた。そのまま木々を縫って歩くと、やがて川辺と、川の浅い所で佇む二頭の馬が見えた。


 それからアルベールもいて、近くにはたき火も焚かれていた。


「ヴィー」


 アルベールの無事を確認したヴィクトリアは、回れ右をして馬車に戻ろうとしたが、それよりも前に声をかけられてしまい、仕方なく彼に近付いた。


「もうすぐ下拵えが終わるから、ちょっと待ってて」


 アルベールは剣を器用に使いながら、採った魚を岩の上で捌くと、開いた魚の腹に薬草のようなものを詰めてから、拾った小枝を魚の口から刺して串料理を作っていた。


 幼馴染のアルベールは、ヴィクトリアがちょっとした植物性のものを食べられることは知っている。塩気がないのを気にしたのか、野生の香草を入れて風味付けをしようとしたらしい。


 ヴィクトリアは、この短時間でアルベールが馬に水を飲ませ、魚を取って火も起こし、香草まで取りに行ったことに驚いていた。


 アルベールは昔から人一倍要領が良く、何でも卒なくこなしていた。


 もしも自分が同じことをしていたら、もっと時間がかかったはずだと、ヴィクトリアはアルベールの動きに感心していた。


 やがて魚が焼き上がり、受け取った串焼きを香草ごと齧ると、爽やかな風味と共に口の中に肉の旨味が広がった。


「すごく美味しい!」


「良かった。まだまだあるから、たくさん食べて」


 舌鼓を打ちながら目を輝かせて焼き立ての魚を食すヴィクトリアを、アルベールはとても愛おしそうに見つめながら、「ふふふ……」と笑っていた――――






******






 アルベールは、ヴィクトリアが自分を選ぼうとしないだろうことは百も承知だった。


 だが、邪魔さえ入らなければ、二日前だって自分たちは正式な番になれたはずだ。


 邪魔とは、ヴィクトリア自身の邪魔も入る。


 アルベールは医療棟の地下室から抜け出た際に、嗅がせればすぐに意識を失わせることのできる薬剤をくすねていた。


 ヴィクトリアを追いかけて発見できた際には、薬で眠らせて、そのまま✕してしまおうと思っていた。


 その後追いかけてきたオニキスに、嗅覚でその薬剤の存在を見抜かれて咎められてしまい、その場で捨てざるを得なかったが、アルベールは捨てた場所を覚えていて、ヴィクトリアを発見できたらその場所まで何とか連れて行って、()()()()()を実行しようと思っていた。


 オニキスがそばにいない今こそ、その計画を実行するべき時だが、里を出てわりと早い段階でオニキスに追いつかれたため、首都に近いこの場所から薬剤を捨てた場所まではかなりの距離がある。


 たぶん寿命以外では死ななそうなオニキスは、あの不気味な扉を前にしても生きて帰ってくるはずだ。


 オニキスに追いつかれてしまうと、手籠め計画が阻止されてしまう。里に帰ってからでは、やはりリュージュやヴォグバードに邪魔されるだろうし、出来るだけ早い段階でヴィクトリアと番になる必要があった。


 アルベールは、意識を失わせる薬を現地調達することにした。


 両親が医師であるアルベールの自宅には、医療関係の本がたくさんあり、薬草学についての本もあって、アルベールは暇潰しも兼ねてそれらを読んだことがあり、内容も全て網羅している。


 アルベールの仕事は「狩り」をすることだったが、遠隔地への「狩り」の場合は、里に帰還するのも日を跨ぐため、アルベールは薬草の知識で負傷した仲間を治療したこともあったし、野営での火起こしも得意だった。


 麻酔に使われるような薬草がどれなのかもわかっていたし、口から摂取しても大丈夫な麻酔成分のある野草や、どの香草と混ぜれば味を誤魔化してむしろ美味にできるかもわかっていた。


 アルベールは、「美味しい」と言って麻酔草入りの魚串焼きを食べるヴィクトリアを、ニコニコしながら見守っていた。


「アルは食べないの?」


「食べるよ」


(ヴィーをね)


 続く言葉を心の中だけで独り言ち、アルベールが麻酔草を入れていなかった串を手に取り食していると、ヴィクトリアは一本目を全て食べ終わらないうちに、串を手から落として倒れそうになっていた。


 アルベールは持ってた串を放り出すと、ヴィクトリアをすぐさま支えた。


「ヴィー?」


 呼びかけても、ヴィクトリアは起きない。


 腕の中の彼女は美しい瞼を完全に閉じていて、麻酔草の成分の効きがとても良いらしく、既に意識を失っていた。


 きっとヴィクトリアは一瞬のうちに意識を無くしていて、自身がアルベールの手に落ちたことにも気付かなかったはずだ。


「ああ、ヴィー…… やっと、やっとだ……」


 アルベールは愛しいヴィクトリアの柔らかな身体を抱きしめて、くんくんと彼女の匂いを嗅ぎ始めた。


 アルベールは愛しい女の芳しい匂いを胸いっぱいに吸い込んで陶酔していた。二日前のあの素晴らしい体験が自然と思い出され、身体に熱が集まり始める。


 今度のアルベールは自身を抑えなかった。


 アルベールはヴィクトリアの襟口のをずらして滑らかな首筋に噛み付くと、金色の眼の瞳孔を広げて興奮し、滴る彼女の血を夢中で啜った。


 ヴィクトリアの血を嚥下すると身体の奥底から幸せが広がり、気付いた時には、アルベールは盛大に✕✕して✕✕していた。


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