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獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~  作者: 鈴田在可
リュージュハッピーエンド 私の王子様

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7 子作りは計画的に

リュージュ視点


R15

 室内に響くのは、リュージュがヴィクトリアに接吻する微かな音と、休憩のためにリュージュが唇を離した時の二人の呼吸音だけだった。


 室内には、こちらを向いたま置物のように微動だにしない行儀の良い白い鳥がいるだけで、マグノリアの声は聞こえずにその匂いも近くにないので、彼女がどこにいるのかはわからない。


 リュージュは自分がマグノリアの声の幻聴を聞いたのだろうかという気になっていたが、不思議な声に導かれた結果だとしても、リュージュに死の直前に口付けを交わすなんて発想はなかったので、愛する女性の存在を確かめて幸せを感じられるこの時に感謝した。


 リュージュは溢れる自分の涙を拭い、改めて目の前のヴィクトリアを見た。すると、青白かったその頬に僅かながら赤みが戻っていることに気が付いた。


『良い感じよ。でももう少し頑張ってみて』


 再び聞こえた声に、やっぱりいたのか? とリュージュは扉の閉まった室内やカーテンの掛かった窓のあたりを見回してみたが、白い鳥と目が合っただけだった。


「……マグノリア、どこにいるんだ?」


『私はここよ』


 頭に響く声と共に、白い鳥が片側の翼を広げてバサバサと軽く合図する。


「と、鳥がしゃべってたのかぁぁぁっ! っていうか、マグノリアは鳥になってしまったのかっ!?」


 リュージュは目の前で怪奇現象が起っていると思い、驚いて声を荒げた。


『正確には私が魔法で作り出して操っている鳥よ。私自身は今別の場所にいるわ。


 だけどこっちもこっちで色々あって、すぐにはそちらに行けそうにないの。この鳥を飛ばして魔法で私の声だけ届けてるのよ』


 魔法や魔法使いについては二日前にヴィクトリアと会話をしたばかりだったので、リュージュはマグノリアの言葉をすんなり信じた。


「じゃあ…… マグノリアは魔法使いだったのか…………」


『そうよ。今まで伝えられなくてごめんなさいね』


 ヴィクトリアの状態が少し落ち着いたと見たのか、マグノリアはリュージュに、彼が知らないこれまでのことを掻い摘んで説明してくれた。


「つまり、過去に戻る禁断魔法を使ったせいでヴィクトリアはこうなっていて、誰かと肌を合わせることで魔力が満ちれば、助かるってことか」


『ええ。理解が早くて助かるわ。キスを百回もしてないのにここまで回復できたのなら、上手くやればこの先あまり後遺症を感じることなく生活できるかもしれない。


 リュージュ、ヴィーの『番の呪い』はもう完全に解けているわ。


 ヴィーは他でもなく、あなたに会いたい一心でここまで戻ってきたのよ。相手になるのはあなたしかいないわ』


 リュージュは言葉の途中から服を脱ぎだした。


「マグノリア、悪いけど席を外してくれないか」


 マグノリアは僅かに沈黙した後、魔法でリュージュの頭の上に、粉薬が包まれた小袋をぽとりと一つ落とした。


 リュージュは服を脱ぐ手を止めて、落とされた粉薬を手に取る。


『避妊薬よ。一応これも飲ませておいて。今日ヴィーは排卵日みたいだけど、身体がどの程度回復できるかは未知数だし、今妊娠しちゃうと身体が辛くなりそうだからね。


 子供については二人であとからゆっくり考えなさいな』


『真眼』の持ち主であるマグノリアは、本日がヴィクトリアの排卵日であることを見抜いていた。


『……もしかしたら本番まではしなくても、上手くやれば意識を取り戻して、ヴィーは命の危機から脱出できるかもしれないわ。


 獣人にとって番になる「儀式」は特別なものだから、意識のないうちに番になってしまったと知ったら、後からヴィーが悲しむかもしれない……


 でも、状態が急変してすぐにでも番になることが必要な場合も有り得そうだし、そこら辺はリュージュに任せるわ。どうかヴィーを大切にして、幸せになってね』


 そう言い残してから、マグノリアの声を届けていた鳥は札状の紙に変化し、その札も魔力が尽きたとばかりに、端から塵となって消えてしまった。











 リュージュは水で溶いた避妊薬を口移しでヴィクトリアに飲ませた後、ヴィクトリアの服に手をかけた。


 ヴィクトリアは相変わらず美しかった。


 アルベールの襲撃を受けた際、浴室に侵入した時に初めて見たが、あの時は姉だと思っていたし、瞼に焼き付けて一生忘れないようにしようと思っていた。


 その後、図らず恋人同士になれて、彼女に触れて、口付けて―――― ヴィクトリアと愛し合いながら、これからもずっと一緒に生きていくものだと思っていた。


 人間たちの脅威はあっても、ヴィクトリアが死ぬはずないとどこかで信じ込んでいたが、それはただの思い込みに過ぎなかった。


 ヴィクトリアは魔力が切れればいつ死ぬかわからない。


 明日死ぬかもしれない。


(絶対に死なせない)


 ヴィクトリアの肌を撫でながら、リュージュはふと、二日前に付けた口付けの痕が消えていることに気付いた。


 しばらく消えるはずがないのにおかしいなと思いつつ、リュージュは中途半端に引っかかっていた自分の服を脱いで、肩と太腿だけに包帯を巻いた姿になった。


 寝台に上がって、腕に点滴だけを付けたヴィクトリアを抱きしめて、ヴィクトリアの魔力が満ちるようにと願いながら、素肌を合わせる。


 リュージュは唇を滑らせると、所有を示す痕をヴィクトリアの身体に再び付け始めた。


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