6 どんなあなたでも愛してる
R15注意
「そうだわ、お風呂に入らないと……」
「時間がないからいいよ。今は一秒でも早く君と一つになりたい」
「時間がないって……?」
「身体強化の魔法が解けたら、反動で下手したら数日動けなくなる。その前に君を抱きたい」
ヴィクトリアは恥ずかしさで真っ赤になったが、覚悟は決めてある。
「ヴィクトリア…… 愛してるよ……」
また口付けが降ってきた。
レインは何度か深い口付けを繰り返している。
これから成されることを考えたヴィクトリアは、溶けそうな思考の中でもこれだけはと思い至り、浄化の魔法を二人の身体に施した。こうしておけば入浴しなくても身体の汚れは取り払われる。
が、いきなりレインの身体全体がヴィクトリアに倒れ込んできた。獣人であるヴィクトリアはレインに身体の下敷きにされても大丈夫なのだが…………
しかし、まだ番にはなっていない。
「なん、で、ここで……」
愕然としたようなレインの呟きにヴィクトリアは何が起こったのかを悟った。
身体強化の魔法の効果が切れたのだ。
「したい…………」
全く動けなくなってしまった様子のレインはしくしく泣いている。たぶんあと数分効果が切れるのが遅かったら、二人は結ばれていたはずだ。
レインが悲しんでいるとヴィクトリアも悲しい。それに自分だってこんな所でお預けになるのは本意ではなかった。
ヴィクトリアは迷った末に、恥ずかしいのを堪えてこの状態で上手く番になれないかと試行錯誤した。
しかし、最後の一歩が踏み出せない。えいやっと致してしまえばそれで本当の番になる儀式は済むが、経験のないヴィクトリアにとっては半端ない行動力が必要だった。
ヴィクトリアは呼吸を整えた。動揺が酷いので少し落ち着いてから行動を起こそうとしばしそのままでいたが、それが意図せず蛇の生殺し状態を生み、動けなかったはずの山を動かした。
「……この据え膳………… 食さなければ男が廃るぅぅぅぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!」
「――――!」
今際の際のような叫び声と共に、レインが気力と根性を見せる。
ヴィクトリアの頭の中にカチカチカチという音が響いた。
ヴィクトリアの心の中は幸せでいっぱいになった。
「レイン、ありがとう――――」
ヴィクトリアはレインと真の番になれた感動から嬉し涙を流したが、しかし、そばにいる男の反応はそれとは違った。
「ち、違…… 違う…………」
レインは必死に何かを言いたそうにしていたが、限界を超えた力を出したのと✕✕してしまった影響なのか、皆まで言わずに気絶した。
「レイン、愛してる…… どんなあなたでも私にとっては格好良すぎる最高の人よ」
ヴィクトリアは意識のないレインに抱きついて愛を囁きながら、一人幸せを噛み締めていた。




