4※ 白衣の天使
~side クロード~
僕にはレックスとシェリルという可愛い弟子がいる。
二人とも我が家の領地の出身で素直で賢くて『記憶』という知識を持っている。
僕が今の彼らと同じ16歳の時に教会の学校から紹介されたのだ。二人を7歳の頃から知っているから今では年の離れた弟と妹のように感じている。
僕の兄弟が男ばかりだったので特にシェリルは可愛くて仕方がない。
親友のディナンも呆れているようだが、僕になおすつもりはない。
二人は領地の発展にも貢献してくれていたので邸に連れてくることも多く、使用人たちも客として扱っているが、自分達の親戚かと思うくらい彼らには親切だ。
要は、彼らは僕の回りからみんなに愛されていると言うことだ。
先日領地から届いた荷物のなかに彼らの両親からの手紙と小さな荷物が入っていたので、今日は二人を夕飯に誘ったのである。
僕とレックスとシェリルで夕飯を食べ寛いでいると、弟のパトリックがやってきた。
僕とパトリックとレックスとシェリル。
我が家ではよく見かける光景だ。
いつも見慣れた光景なのに、僕だけがいつもと違う。
シェリルが治癒魔術を使うのだって昔はよくあった。なのにパトリックの側に跪くのが許せなくて、祈るように癒しをかける彼女から目が離せなかった。
息が苦しくなって…心がざわつく。
癒しをかける彼女は神々しい。
以前に彼女が、彼女のような職業を『白衣の天使』と呼ぶのだと『白衣の天使』になりたいのだと言っていた。今、その言葉を思い出す。まさに魔法師団の白い制服を着ている彼女にはぴったりな言葉だと思った。
そしてパトリックが彼女の頭を撫でた時、僕は気付いてしまった。
ずっと子供だと思っていた。ずっと子供でいてくれたら良いのに。
研究室でディナンが言った言葉がよみがえる。
“お前、シェリルはもう16になるんだから男ができても邪魔するなよ。”
ああ、それは無理かもしれないな。
少くても今は僕のことを慕ってくれている。このままずっと妹扱いしてしまおう。僕がずっと保護者でいられるように。
君に男を近付けないようにずるい大人になってしまおう。
パトリックに赤くなった君が美形なら誰でも良いみたいに言うから、意地悪がしたくなって…
僕にも赤くなってくれるのか気になって、我慢できずに僕もシェリルの側に跪いて手を握ってみた。