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ナースな魔術師  作者: 柚×花
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3 治癒魔術

 今日もいつものように仕事を終えて研究室に顔を出す。


 研究室は結構広い。物置になっている部分もあるので高校の理科室の倍くらいはあるだろうか。

 研究室の半分は何もなく、実験で魔方陣を広げて起動させたり、魔術具を持ち込んだりできるようになっている。残りの半分のスペースは数人で囲める広いテーブルが2つ、個人の机が8つ、応接セットのようなテーブルとソファーのセットが1つあとは物置のように魔方陣と動かなくなった小型の魔道具が処狭しと置かれている。


 私は自分の机で転移の魔方陣と倉庫の魔方陣を共通点がないか見比べていた。

「う~ん…。」あーでもない、こーでもない知ってる文字列がないからどこまでが一括りか解らないな、同じ文字列は無いものか…。

 結構真剣に見比べていたから団長と副団長が入ってきたのに気付かなかった。

 大抵二人はいつも一緒にやってくる。

 お疲れ様と声を掛けられてビックリして顔をあげる。

「あ、団長、副団長お疲れ様です。」

「何度か声を掛けたけど気付かないくらい真剣だったね。」副団長が言うと、団長も「お前、面白い顔してたぞ(笑)」という。

「ディナン、嘘はいけない。シェリルは難しい顔をしていても可愛い。」

 副団長がフォローしてくれるけど、やめて…照れちゃう。

「はいはい。保護者が過保護だとシェリルは苦労するな。お前、シェリルはもう16になるんだから男ができても邪魔するなよ。」余計なお世話だよ、団長。

「そんなことしないさ。相手の事はちゃんと調べるけど。」それはやめてください、副団長。

 思っても口には出さない。

「今のところ、そんな予定はありませんので大丈夫ですよ。」というのに止めた。

「それより、シェリルの実家から手紙と荷物を預かってるよ。邸に置いてきたから今日はうちで夕飯食べていく?レックスのところからも預かってるから彼も一緒に。」

「良いんですか?急に行ってもご迷惑じゃないですか?」

「そのつもりで準備させているから大丈夫だよ。今日は早めに切り上げよう。」

 はいっ!と笑顔で答える。

 わぁい。今夜はご馳走だ。


 いつもより早めに研究室を出て、馬車に乗せてもらいガロワ子爵邸にお邪魔する。

 最初に来たときはすごく緊張したけど、豪華なテーブルで食べる食事も今ではすっかり慣れた。テーブルマナーもバッチリである。

「この間の雷の魔方陣だけど…」とクロード様が切り出す。

 やっぱり防犯用の罠だったようだ。今はそれ以外の応用が出来ないかと開示をどうするかを上層部で話し合っているらしい。

 デザートと食後の紅茶までいただいた後は、応接室で家族からの手紙と荷物を受けとる。


 わいわいと話していると、3男のパトリック様が顔を出した。

 パトリック様は王都の騎士団に所属している。

「こんばんわ。二人とも元気にしてた?」

 人懐っこい笑顔でソファーに優雅に腰をかける。

 あれ?でもなんか変な感じ?

 パトリック様の動きに違和感を感じて声をかける。

「パトリック様?左手どうかしたんですか?」

 ああ、とパトリック様は左手首の親指辺りをさすりながら言った。

「捻ったみたいなんだよ。治療してもらって腫れはひいたんだけど動きが悪くて。そうだ、シェリル診てくれる?」パトリック様は私が治癒魔術が得意なのを知っているので躊躇いなく手を差し出す。

 それは大変。騎士の手は仕事道具だ。

「ちょっと触りますね。痛かったり違和感があったら言って下さい。」

 パトリック様の手を動かしながら診察していく。


 手首辺りの骨が折れているようだ。

「ちょっと痛みますよ?」

 パトリック様がうなずくのを確認して患部をぐっと押す。骨がくっつくイメージで治癒魔術をかける。

 魔術を使うのは結構集中力と体力がいる。

 一度治癒をかけているので少し治りにくい。


 それでも、ゆっくり時間をかけて祈るように魔力を流す。


「このあたりの骨が折れてくっついてなかったみたいです。どうですか?動くようになりましたか?」

 パトリック様は手首を回したり振ったりしていたが、

 問題無さそうだ。

「しばらくは無理しないで下さいね。まだ骨が柔らかいので同じところが折れやすいので。」

 包帯を持ってきてもらい手首を固定する。

「こうやって巻いておくと、手首が固定されるので訓練中も安心ですよ。1月くらいは注意しておいてくださいね。」

 パトリック様は少し驚いた顔をしていたけど

「治しただけじゃ駄目なんだね。あんなに小さかったシェリルがお姉さんみたいだ。」と笑った。

 パトリック様もクロード様に負けないくらい美形だ。

 そんな至近距離で微笑まれたら赤面してしまう。

 赤くなった私に気付いたようで、パトリック様は私の頭を撫で

「ありがとう。またゆっくり遊びにおいで。邪魔しちゃ悪いから今日は失礼するよ。」

 と部屋から出ていってしまった。


 レックスが空気を読まずに大笑いしながら言った。

「シェリル、顔真っ赤だぞ。」

 そんなのは知っている。

「パトリック様が美形なのがいけないんです!美形の至近距離は普通の女子には難易度高いんですよ!」

 クロード様もふむふむと悪い顔になって、

「じゃあ、試してみよう。」

 と寄ってきてしゃがみ込み、私の手を握って見上げてくる。

 私はもう、ただただ真っ赤になって口をパクパクすることしか出来なかったのである。

注意:骨の位置をなおす整復は医師の仕事です。今は手術でなおすので応急処置でしかしません。

レントゲンも撮らずには行えませんので、絶対に真似しないで下さい。



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