2 再現
一部内容を変更しました。
今日も疲れた身体を引きずられ研究室にやってきた。
最初に研究室に入ったのは、数年前上級学校の魔術師コースに入った時である。魔術と魔方陣に興味があった私たちは、ディナン様とクロード様に連れられて研究室案内された。最初は魔術を教えて貰う代わりに魔方陣の分析を手伝うように言われたのだ。
だけど私たちは使えなくなった魔方陣を分析中に、不可抗力で起動してしまったのである。
おかげで魔方陣の分析は以前より少しだけ進み、その功績を認められたのだけど、私たちは強制的に研究の手伝いをする羽目になってしまった。
研究は疲れてなければ楽しいし、お二人にはたくさん恩があるので恩返しと思えばいくらでも頑張れた。
私たちの『記憶』は役に立ち科学との関連性が分かると研究は進み実際に結果を出したお二人は、もともと地位も実力もあったのでディナン様は団長にクロード様は副団長になったのである。
そして研究好きの変わり者もとい、いつものメンバーが研究室に揃う。魔術師団団長のディナン様と副団長のクロード様、私とレックスである。
今日は先日復元した雷の魔術を団長、副団長に講義するところから始める。
雷魔術の魔方陣に風と水の文字が使われていたから雷魔術自体が複合魔術なのだ。
この魔方陣は、防犯用の罠か何かだったのかもしれない。危険だけど、今度試して貰おう。
それはおいて、その上で雷の発生について科学的に説明する。
天気が悪くなり、空気中の水分が増え、風によって水分同士が擦り合わされることで、摩擦がおき静電気が生まれ、水に貯められていく。それが一気に放電されると雷になる。
静電気というのは冬に乾燥してると起こるパチっと痛い現象で、服を擦り合わせたりすると起きるもので、あの小さいパチパチがたくさん集まると雷になる。と言った具合だ。
これを知った上で、空気中の水分を風によって擦り合わせるイメージで魔力を放出する。
すると、バチっと小さな火花が散った。
団長も副団長も何度か失敗しながら、それでも発動できるようになった。
団長はため息をついて「これはなかなか先が思いやられるな。我々にはそう言う知識がないからイメージが出来ない。原理が分からない今の状態では発動しない魔術の再現は君たち無しでは無理だろうな。」と言った。
副団長も難しい顔をして「さらに再現できても『科学』という原理の知識を教えるものがいないと、魔術も教えられない。これは先が思いやられる。」と言って考え込んでしまった。
私とレックスは難しい顔で黙ってしまった二人を置いて考察し合う。
「さっきの雷の魔方陣はありがちなのは罠かなぁ。触れたらスタンガンみたいになるのかな?それとも発電機?でも貯めるところが無いよね?罠と仮定して発動できたら魔方陣から言葉の類似を探したり、推測するのは団長たちにお任せしよう。」
「確かにね。分析は得意なんだけどな。仕方がないね。じゃあ、次は浮遊魔術の再現がしたい!
予測としては、浮遊魔術は風に抵抗をかけて乗る魔術か、科学的ではないけど重力軽減かな?シェリルは何か希望ある?」
「それで良いよ。触れることで発動するんだったら、魔方陣が無くても布切れにものをのせて試してみるのはどう?名付けて、魔法の絨毯!(笑)」
「全然名付けてないよ、それ(笑)。でもその考えはいいかも。魔法の箒よりは現実味がある(笑)。」
結論から言うと、どちらのイメージでも発動してしまった。
両方掛け合わせた場合が一番重いものを持ち上げられ、私とレックスは二人だけ魔法の絨毯に乗れるようになってしまった。
さて、これをどう解説しようか?
これが今後の私たちの課題である。