35 出発
私の案はあっさり可決され、旅のメンバーが決まった。
私とクロード様と騎士のマルクとアンドレだ。
マルクとアンドレは情報収集で国外へも行ったことがあり旅なれている。商人の中でも違和感はなく、今回の護衛にはもっとも適している2人である。
リーゼス王国のクリスティーナ皇太子妃とは魔術具で通信が出来るようになっていたらしく、セルジュが旅に参加してくれるらしい。
聖女と友好関係にあったクリスティーナ様が国内の流行病の治療に乗り出した。セルジュとライラ(私の偽名)には治療の使命と共に拐われたかもしれない聖女の情報を集めるように指示がでた。
サルジャーノが誘拐したという噂を追って、ついでにサルジャーノに恩を売って来なさいという指示のもと、サルジャーノに乗り込むという筋書きが出来上がった。
サルジャーノの議会宛にクリスティーナ皇太子妃の治療師ライラを貸し出すという親書も持ってきてくれるらしい。
いたせりつくせりだ。
今回の旅の賞賛を得られるのでクリスティーナ皇太子妃には得しかないのだけど。
ライラが私だってばれたらどうするのかって?
それはばらしても問題ない。素直にサルジャーノに狙われていたので聖女に危害が無いように身分を貸しただけと言えばいい。悪いことはしていないので身分詐称くらい治療して貰った人にすれば何て事はないのだ。
これなら他国から聖女をリーゼス王国にだけ貸し出すとは、と非難されることもない。
ばれても、被害の中心地から鎮めるのが効果的だったと被害にあったすべての国のために私の意思でサルジャーノへ向かったと公表すれば表だって非難できなくなる。
素晴らしい。完璧な作戦である。
少しでも早く動けば、助かる命も多いはずなので、出発は2日後になった。セルジュとはサザーランド伯爵領の砦で落ち合うことになっている。
荷物は多くは要らないが、野宿することも考えて幌つきの馬車に薬草、場所によっては食料が手に入りにくいことも考えて、特に乾物と調味料をかなり多めに用意して貰った。
出発の当日。
二頭立ての幌馬車に目立たない旅衣装。見かけても誰も気にも止めないそんな出で立ちだ。
「団長、行ってきます。シャルロット様をちゃんと守ってあげてくださいね。」
「お前が一番心配だ。無茶してクロードを困らせるなよ。ちゃんと全員で帰ってこい。待ってるからな。」
団長が一番心配性だね。クロード様をお借りします。
「レックス行ってくるね。そっちも気を付けてね。毎日連絡するからね。」
「そっちこそちゃんとうまくやれよ。ライラさん(笑)」
「大丈夫だよ。クロード様が居るからね。」
「そうだな。クロード様シェリルのことお願いします。」
「必ず守って見せるよ。」
うまく行くと信じて明るく出発する。
ガタガタゴトゴト馬車が動き出した。