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ナースな魔術師  作者: 柚×花
30/58

27※ 不穏な空気

~sideクロード~


ガロワ子爵邸は今日もひっきりなしに来客が訪れる。

ただし、その多くが我が家への客ではなく僕とシェリルへの面会依頼の使者たちだ。

先日城に報告に行ってから居場所がばれてしまい、今まで話したことも無いような人たちが、婚約の祝いを言わせて欲しいだとか、サザーランド伯爵領での話を聞かせて欲しいだとか、夜会へ二人で参加して欲しいと言ってくる。酷いものだと、シェリル個人にお茶会の招待状が届いたりだとか、面識もないのに女性同士お友だちになりましょうなどという手紙が届いたりだとか…数えだしたらきりがない。

やはり城に行くまでが平穏だったのは単に居場所がばれていなかっただけだったようだ。


本当に鬱陶しい。


おかげでシェリルが今まで以上に僕を頼ってくれるけど

その信頼を裏切ることが出来ずに、ずっと関係は師弟のままだ。


シェリルを不安にさせないためにも、僕は“保護者”に徹しなければならない。

こんなに近くにいるのに、触れたくなる衝動をずっと我慢しなければならないなんて、どんな拷問だろうか。



そんな状態だから、シェリルには仕事を休ませている。

あと数日もすれば、春になり“特別研究院”(ディナンのネーミングセンスは壊滅的だったようだ)に移動になるので、研究室に隠せるようになる。あと少しの辛抱だ。


「僕は仕事に行くけど、シェリルは邸から出ないように。」そう念を押して城に向かう。本当は僕もずっとついていたいのだけど、そういうわけにはいかない。

まだまだ片付けないといけない問題が多いのだ。


サザーランド伯爵領からは毎日のように報告が入る。他国の流行病は暖かくなってもまだ終息の兆しはない。

リーゼス王国では、シェリルからの手紙のおかげでセルジュとダミアンによって重症者の治療が叶い派閥に大きな変動が起こった。クリスティーナ皇太子妃から感謝の手紙も届いている。

これも運命なのだろうか、彼らは現在“神の使い”と称されているようだ。

これは危険な兆候だ。彼らが上手く目立ってくれればいいのだけど。

まぁ、そう上手くはいかないだろう。


案の定、サザーランド伯爵領を出た商人から我が国の治療師の噂を聞いた各国が、情報を集めにやってきているようだ。

砦で足止めされても、ただでは転ばないのが商人。

隔離されている砦で、その後の町で治療の秘密を探っている。伯爵は治療法を秘匿していないことを示すため、誰にでも開示して教えるようにしている。


これで満足して帰ってくれれば良いのだが。


国内だけでなく、国外からも不穏な空気が流れてきている。しかし、昨年から決まっていたシャルロット王女とディナン・ド・ヴィエール公爵の結婚式は延期が難しい事から、予定どおり来月の末に執り行われる。より一層警戒が必要となったのだ。


年がかわりシェリルの部署が正式に移動になった。

新しい職場と言っても場所は以前の研究室だ。もともと忘れられたような場所にあったので、厳戒態勢のため部署の部屋は公には公開していない。


シェリルは、「研究時間が長くなっただけで、以前と変わらない気がしますね。」と呑気な事を言っていた。


毎日彼女と出勤して、通常業務をし、時間が出来たら研究室に行き、夕方になれば彼女と共に邸に帰る。

その際に彼女を護るためだけどエスコート出来るのは素直に嬉しい。

彼女が初々しく頬を染めて躊躇いがちに手をとる姿に、僕の表情が緩んでしまうのは仕方ないと思う。

少しは期待してもいいのだろうか?


余談だが、研究室は場所があまり知られていないだけで、城のなかにあることは間違いないので、しっかりと防犯の魔術具を多数仕掛けてあるのは今のところシェリルには秘密にしている。


そんなある日の夜、我が家に賊が入った。


勿論、我が家の警備体制は万全にしてある。賊はすぐに捕まった。

しかし、犯人の狙いがシェリルだったことは明らかになったが、依頼主はわからない。どうにも間に何人も挟んで背後を探らせないようにしているようだ。


襲撃はその後も何度かあった。邸だったり、移動の馬車だったり。犯人は捕まっても雇い主までは分からない。実行犯に依頼した人物もやはり誰かに依頼されているようだったと言う。


「いいかいシェリル。おおよそ依頼主は国内の貴族ではなく他国の者だと思われる。国外なら拐われた先で居場所が分かっても取り返すのは至難の技だ。」

だからと続ける。

「僕が君を護るから、君は何があっても大人しく護られるんだよ?自分から危険に飛び込まないように。」

僕には何より君が大切なのだから。

お正月が無いので、春に年がかわるという設定です。

イメージとしては4月くらいです。


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