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ナースな魔術師  作者: 柚×花
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閑話 (幼少期) 出会い

説明回ですm(_ _)m

私は商人の娘、シェリル。昨日で5歳になった。



私の家はブライトン商店と言って小さな調味料と食料品のお店だ。店主はお祖父様。家族はお祖父様と父さんと母さんと二つ年下の弟。父さんは主に仕入れのためにあちこちの村へ出かけることも多い。



私には小さい頃から知らない世界の記憶がある。全部を覚えているわけではないけれど、ふとしたきっかけで少しずつ記憶が出てきて、この世界にはない知識や技術を思い出すのだ。5歳になった私は学校に行くことになった。私は3歳の頃から、暗号のような文字を書き、不思議な数字を使って計算が出来た。普段みんなが使う文字も数字も祖父に教わったので今はどちらもちゃんと使えるようになっている。

学校の初日はうまくやれたと思う。

先生たちは驚いていたけれど、友達もたくさん出来たし楽しかったのだ。


これをきっかけに、自分の夢の記憶の事を母さんに言った。母さんは不思議なこともあるのね、と受け入れ商人の妻としての好奇心から私と夢の再現を手伝ってくれた。


春になり年が変わった。農家は一斉に忙しくなり、商家も大きな商いが増える時期である。それが一段落した頃、領主様から招待を受けた。

お祖父様と一緒に、領主様のお屋敷に向かう。


緊張するなって言うのはもちろん無理で、私はお祖父様の後ろに隠れるように立っていたし、門番の兵士に招待状を渡すお祖父様の声も緊張している。


門番は招待状を確認すると馬車が通る大きな門ではなく、小さい方の門を開けて通してくれた。


門を潜ると使用人らしいレストランのウエイターのような格好のお兄さんが案内してくれる。


お屋敷の本館ではなく入り口に近い離れに案内されたようだ。


お部屋は広くて立派だが、ものが少なく落ち着いている。仕事のお客様用の部屋だろうか。


それでも領主様のお家である。


ソファーに座ってお待ち下さいと言われてもお祖父様も私も座れずに待っていた。



あまり時間をかけずに、使用人さんは2人の貴族の男性を連れて来てくれた。


2人?


領主様と息子さんだろうか?


私たちも座るように勧めれ、きちんと挨拶をしたあと、沈まないように手前側にゆっくり座った。



年上の方は予想通り領主様でエドガー・ガロワ子爵、もう一人は跡取り息子さんのアドルフ様。


領主様には3人息子がおり、次男のクロード様と三男のパトリック様は現在王都で魔法師団と騎士団に在籍している。


上級学校は9歳から6年通うことになっているので9歳までは待つように言われた。


「シェリルは今年7歳になるときいているがとても優秀だそうだな。頭も良いし、落ち着いていて子供っぽさもない。今は王都に行っているクロードも君の使う数字や計算能力に興味を持っていたよ。9歳まではこれからも学校で子供たちの指導に協力して貰えると助かる」


夏になり、私は7歳になった。


そんなある日、領主様の次男のクロード様が私に会いに領地にお帰りになったらしい。


3日後の2時に領主様のお屋敷で面会することになった。


何の用だろう?


お祖父様も忙しいし父さんも仕入れに行っていて不在なので、使用人のジルに付き添って貰って領主様のお屋敷に向かった。


先日領主様とお会いした部屋に通されると、そこには綺麗な男性が座っていた。黒髪のにこやかだが隙の無い雰囲気が、さすが貴族様と言った感じだ。


案内をしてくれた使用人のお兄さんが「クロード様お待たせしました。シェリル様と付き添いの方をお連れしました。」


と声をかけてくれたので、その方が私を呼んだクロード様であることがわかり、クロード様も手振りで私たちに座るように勧めてくれた。


私たちはきちんと挨拶をして勧められた椅子に座った。




クロード様は少し考えるような顔をして、「そういえば姫と同じ年齢だったな。」と呟いた。そして表情を戻してから真っ直ぐ私の向き合う。


「私は、領主であるエドガー・ガロワの次男のクロード・ガロワだ。突然呼び出して済まなかった。別に大事な用事ではないんだが、私もなかなかこちらに戻って来れないので、この機会に君に聞きたいことがあってこうして呼び出してしまった。」


そうして一枚の紙を広げると


「時間もあまり取れないので、早速本題に入ろう。これを見てもらいたい。君にはこれが読めるか?」


と聞いた。


その広げられた紙にはアルファベットの大文字が書かれていた。


「読めると言うのか分かりませんけど、この文字を知っています。これは文章ではなく文字の一覧表です。失礼かも知れませんがクロード様はどうしてこの文字を知っているかお聞きしてもよろしいでしょうか?」


クロード様は答えてもいいが…と言って「君が使っている変わった数字と、この文字の一覧表を書いて欲しい。」とひらがなの『あ』の文字を見せられた。


私はアラビア数字とひらがなを50音表にして書く。


クロード様は別の紙を取り出し、答え合わせするように私が書いたものと見比べると、大事な話がしたいのでジルには席をはずして隣の部屋で待っていて欲しいといった。


ジルが出ていき扉が閉まるのを確認すると、


「私はこの文字を使う者を知っている。その者は私の友人の知り合いで、その者は私たちが知らない事を多く知っている。そのような人物が他にいるとは思っていなかったが、君もその者と同じ文字を使うのであれば、君も同じように私たちが知らない事を知っているのではないかと思って声をかけた。君たち以外にいるかどうかは知らないし、今までにそういった人物が居たかも私には分からない。少なくとも私が知るのは二人だけだ。」


そう言って私の反応を見ている。


私はこれは人には言ってはいけないことだったのかもしれないと不安になってきた。


「人が知らない事を知っている君たちは、その知識を使って新しいものを作ることができる。私たち上に立つものは、領地を豊にするために新しい知識を欲しているし、それを活用したい。」


私はますます不安になった。


それが分かったのだろう。貴族らしくない困ったような表情を浮かべた。


「言い方が不味かったか?怖がらせるつもりはない。ただ、私は君の有用性を知っているので、君にも利益を与えるので、よそにいかず領地のために活用して欲しいと伝えたかった。欲を言えば、協力するので新しい知識をたくさん出して欲しい、と思っている。」


私がほっと息をつくのを確認すると、先にこちらが知っている事を話した方が、警戒されずにいいと思たんだが、怖い思いをさせたなら済まなかった。と謝ってくれた。


ジルが居なくなって、必要以上に緊張していたから余計に怖く感じたのだろう。


でもそう言う気遣いができるクロード様はとても優しくて信用できる人だと思った。でもそんな事を言えば失礼に当たると思ったので、その事には触れず、


「お気遣いありがとうございます。私もまだ小さいですし、家族と一緒にいたいので、領地から出ることは望んでいません。私の知識が役にたって生活が良くなるのでしたら頑張ろうと思います。」と言った。


クロード様は安心したようにうなずいてくれ


「良かった。家族と離すつもりもないし、上級学校への推薦状も書く。上級学校で引き抜きの話が出ても必ず帰って来て相談するように。」といってくれた。


「それできみはどのくらい記憶があってどんな知識を持っている?」


私は、ふとした繋がりに、似たような記憶を思いだすだけで断片的なこと、今役に立ちそうな記憶は、保存食のことで、今までよりも美味しく、いろいろなもので作っていくのをちょうど家族と始めたところであること、計算にはアラビア数字が有用なこと、出納表を使うと会計の計算が楽になること。掛け算や面積、体積を求めるのに公式があること、以前の自分は医師の手伝いをする治療師のようなことをしていて、そのせいか回復魔法は得意であること、便利なものはたくさん思い出したが、作り方が分からないこと、こちらの世界には魔法があるので、魔法を覚えたら再現できるようになるかもしれないことを伝えた。


クロード様は興味深かそうに私の話を聞いていたが、後半は表情が曇り「やっぱり、魔法文明時代の記憶ではなかったのか」とポツリと漏らしたのが聞きはしなかったけれど気になった。


それでもクロード様は最初の冷たい印象は無くなり、結構コロコロと分かりやすく表情を変えいい人であることがわかった。


私の記憶は珍しいもので価値がある。知られると地位を盾に良いように使おうとするものも現れるだろうから大きくなるまではあまり人には話さないように教えてくれた。





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