25※ その頃の王都
~sideディナン~
クロードたちがサザーランド伯爵領に行ってからは毎日が大変だった。
もしかしたら現地に行っていた方が良かったのではないかと思うくらいだ。仕事量よりも気苦労が絶えない。
彼らがついて最初に入った連絡は、サザーランド伯爵領にも既に感染者がいたという事実だった。
既に数人いるようで、明日には確認に行くと言うことだ。
こちらでも一気に緊張が走る。
次の連絡は明日の夕方になるとのことだったので、次の日には朝から感染が拡大していたらどこまで封鎖するのかを会議で話し合った。
2日目の連絡は感染者を砦に収容し治療を開始したとの報告だった。重症者もいたようだが治療に効果があり快方に向かいそうだという良い報告だった。
3日目の報告は国境のある町以外には感染者がいなかったという良い報告と、町の感染者が増加したという報告だった。
予断は許さない。連日の会議は感染拡大の懸念と進まない対策とで時間だけが過ぎて行く。
それでも国境と町の封鎖が行われ、重症者がいなくなった現状に会議の雰囲気も和らぐ。
協力してくれた騎士や治療師にも感染者が出たことは問題となったが、それも10日目を過ぎて新たな感染者が出なくなり、伯爵領でも治療法が広まったことを受けて帰還の準備に入ったのである。
そうなってくると他の問題が浮上した。
シェリルの扱いに対する問題だ。
保護者のクロードがいないからと俺のところにシェリルの情報を集めにたちの悪い貴族がやってくる。
パトリックのところにも相当数押し掛けているようだ。
養子にしようとするもの、婚約者を宛がおうとするものがこそこそと動いている。
本当に迷惑だ。
クロードにその事を伝えようにも、通信の時間には他の奴らもいて迂闊なことは言えない。
物資の中に手紙を混ぜたが気付いてもらえるかもわからなかった。
全く、『記憶』があるのも大変だな。
そもそもクロードがさっさとシェリルを手に入れておけばこんなに面倒なことにはならなかったんだ。
シェリルだって俺やクロードのことを好みだって言ってたじゃないか。
ぐずぐずしてたら他の奴らに拐われるぞ?
どうなることかと気を揉んでいると、王都に戻るなり報告もそこそこに二人してガロワ領に帰っていった!
おい、ちゃんと説明ぐらいしていけ!
しかもレックスを公爵家の養子にしてくれだって?
置いていかれたレックスに事情を聴けば苦笑いしか出てこない。
まぁ、今の王都の状況を考えればあせる気持ちは分からないでもないかな。
普段は冷静な親友がどんな顔をしてシェリルと自分の両親に婚約の話をしているんだろうか?
そう考えるだけでも、しばらくは楽しめる。
俺の婚約の時はさんざん弄られたからな。
もうすぐ俺達の結婚式もある。おかげで逃げの話題が一つ出来たと思おう。
クロードたちが戻ってくる頃、それ以外でもまた一騒動あるんだろうなと予想しながら二人の帰りを待つのだった。




