表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナースな魔術師  作者: 柚×花
21/58

18 流行り風邪

寒さも一段と増し今が一番寒い頃、私の注文したマスクが届いた。

実家に荷物を送り、魔術師団の事務室にも団長と副団長、先輩の分を配りに行く。なんかバレンタインのチョコを配りに行く気分だ(笑)

「先輩お早うございます。今流行りの“マスク”です。風邪の予防に使ってください。」

「お、ありがとう。王都はすぐ風邪が流行るからな。そう言えば今年は少しマシか?団内で風邪ひいてるやつ見てないな。“おまじない”効果あったかもしれないな。」

そう言ってもらえると嬉しいね。

他の先輩にも配る。

「先輩お早うございます。これプレゼントです。“マスク”風邪の予防にいいんですよ。」

「いいのか。ありがとな。」

「あ、団長もお早うございます。これどうぞ使ってください。風邪予防用の“マスク”です。」

「おう、シェリル、ちょうど良かったちょっと来い。」

マスクを渡そうと寄っていくと手首を捕まれ事務室から連れ出される。

「どこに行くんですか?」

と聞けば隣の会議室の札を使用中にかけ直した。

「全員集まるまでちょっとそこで待ってろ。」

私を会議室に放り込むと団長は急ぎ足でどこかに行ってしまった。

放り込まれた私は室内を見て驚いた。中にはシャルロット王女がいたのだ。

シャルロット王女にお会いするのは実は始めてではない。同じ『記憶持ち』だったので学生時代にも『記憶持ち』のお茶会招待いただき何度かお話させていただいたことがある。

シャルロット様は、おっとりとした笑顔を浮かべると「どうぞこちらにお座りになって。」と椅子を勧めてくれた。

私はマスクを外し、挨拶をして席に着く。

シャルロット様の侍女が温かいお茶と甘いお菓子を置いてくれた。殺風景な会議室で、こういう準備と気遣いをするところが女子力の高さを表している。見習おう。

「後でお話しますので、それまではゆっくりしていてね。」シャルロット様のなんだか申し訳なさそうな空気が少し気になったが、今すぐ聞けるわけでも無いので、せっかくいれてくれたお茶が冷めないうちにと勧められるままにお茶を飲み暖まる。


しばらくすると団長が副団長とレックスと政務官のレイモン様とその上司のサロモン様を連れてやってきた。

レイモンは上級学校の同期で、彼も『記憶』がある一人だ。


全員が席につくと団長が話し始めた。

「まだ極秘情報だが、貿易都市国家サルジャーノで(たち)の悪い風邪が流行ってるらしく、けっこう死者が出たらしい。で、そこから流れて来たと思うんだが交易路がある町でも風邪による死者が出ているそうだ。」

「本当ですか?!」私は思わず声をあげてしまった。

「ああ、この国じゃまだ聞かないが、リーゼス王国でもいくつかの町で死者が出始めたようだ。国境のサザーランド伯爵が情報を仕入れ一昨日国境を封鎖したと報告が入った。」

「大変!リーゼス王国ってクリスティーナ妃のところじゃないですか。援助か何かするんですか?」

レイモンとその上司が私を睨む。ここが魔術師団の会議室だからか二人の事を忘れていた。

「他国の心配より自国が先だろう?既に入ってきているかもしれないし、他のところから入ってきているかもしれん。」

そこで、と団長が続ける。

「シャルロット王女の話によると『記憶持ち』の世界ではこういう流行病に対策があったと言うことだが間違いないか?」

私たちはうなずく。

「そこで流行を止める方法と治療法を我々に教えて欲しい。事は急を要するので出た案をそのまま実行する。現状で可能な案にするように。」

難しい要求だね。

シャルロット様が最初に口を開く。

「感染を拡大させないために国境を封鎖したのは良い判断でしたわ。私たちの知るスペイン風邪のような状況でしょう。不要な外出と患者との接触を控えて、手洗い、うがい、マスクの着用が基本ですわよね。他に何があるかしら?」

「患者と接触しないとは見殺しにしろ、と言うことですか?」語気を荒めてサロモン様がいう。

「そうではないのですが、どう言ったらいいのかしら。」

今度はちゃんと挙手をして発言を求める。

「患者は出来るだけ同じ場所で療養させ、健康な人が接触しなくてもすむように分けるのです。感染者が他者にうつすのは主に症状がある間と症状が治まってから1週間程度。同じ年には同じ人に2回目は感染しません。

なので、熱、咳の症状がある人を受け入れる建物が必要です。そこには物資の支援を手厚く行ってください。体力がないと良くなりません。

それと、このタイプの病気の死因は肺炎による呼吸困難ですので、肺の炎症を抑えるように治癒魔法をかければ亡くなる方はほとんど居なくなるでしょう。」

「誰が患者の世話をしたり治療を行うのかね?」

サロモン様は私をみて聞いた。

地元の人じゃないの?団長に助けを求めてみる。

「うーん。そこが問題だな。こちらから魔術師を派遣するとして、その人員を育てるのに少し時間がかかる。」

レイモン様が挙手をする。

「私の『記憶』では医療従事者、治療師にあたる者が行っていました。こちらでもそうなさればいかがでしょう?」

「だからその治療師を育てるのに時間が必要だ。」団長は答える。

「いえいえ、そこに詳しい医療従事者が居るではないですか。彼女を派遣して指示させれば後は地元の治療師に任せれば良いのでは?」と私を見ていった。

うわ、レイモン…最低っ!私1人で出きるわけ無いじゃない。こういう奴だったのか。政務官になって性格悪くなったんじゃない?

「私の方も支援いたしましょう。私の考案した“マスク”の量産とサザーランド伯爵方へ作り方の伝授をいたします。」もちろん無償と言うわけには参りませんけどね。とレイモンはさらに最低の奴になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ