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プロローグ
懸賞で当たった宇宙旅行に来てみれば、目的地に着く前に謎のブラックホールに吸い込まれ、次の瞬間にはどこかの星に墜落しそう…何の冗談だって思う。
警報器が鳴り響き酸素マスクが降りてくる。
宙を舞う荷物がぶつかる音も、自分自身の声にならない悲鳴も心音も…すべてのみ込むようなゴオっという炎の音。
『不時着しますので頭を低くして衝撃に備えて下さい』というドキュメンタリー番組で聞いたセリフが微かに聴こえた。
…あぁ、せっかく夢が叶って白衣の天使になれたのに。仕事にも慣れてようやく一人前って認められるようになったのに…。
助かったってこの星に空気や水があるとは思えないし、帰れるわけがない。
そんな風に諦めて、覚悟を決めた…
そこで私の記憶は終わりになった。