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神々の加護で生産革命 ~異世界の片隅でまったりスローライフしてたら、なぜか多彩な人材が集まって最強国家ができてました~  作者: 風来山
第三章「地中より迫る」

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174.夜の生産王タダシの英雄譚


 夜の生産王タダシの英雄譚。


百の妻を満足させる英雄、夜の生産王タダシ

幾千の戦場を駆け抜け、女どもを虜にする

その精力は、神々のごとく

百人の美姫をねじ伏せて、愛する! 情熱のその切っ先で!


夜の生産王の深い愛は、女達の器を癒し満たす

彼のたくましい(かいな)で、女達は久遠に安らぐ

百人の美姫は、タダシを求め、愛する

そう彼は、夜を貫く英雄! 研ぎ澄まされたその切っ先で!


夜の生産王の武勇は、戦場(いくさば)だけでなく

百人の妻をはべらす巨大なベッドにもある

彼の神技は、女達を頂きへと導き

その灼熱は、女達の心を! 今、震わせる炎!


夜の生産王の(ほま)れは、世界を股にかけ

その伝説は、ついに神話を超える

大陸中の女はその名に濡れる、夜の生産王タダシ

永遠に語り継がれる、幾千、幾億の子種とともに!


――


「お前ら何、二番まで気持ちよく歌いきってるんだー!」


 ……という、タダシの魂からの叫びは、激しい歌声にかき消された。

 とんでもなく酷い歌詞なのだが、熱い名曲になってるのがなんか腹立つ。


 あと、農家要素がないけど。

 もしかして、子種がそうなのか。どうなってるんだ!


 風評被害も甚だしいと憤るタダシを前に、歌いきって額に汗するボーカルのアリオンを始めとした面々がタダシの前にやってくる。


「タダシ陛下、申し訳ありませんでした!」


 リーダーの真紅の髪と羽をしたアリオンが、深々と頭を下げる。


「打首にしないでぇ~!」


 緑色の羽と短髪のセレナが、おどけた調子で叫ぶ。

 他の子はともかく、どうも、こいつだけふざけている。


 他の子は、ロイヤルブルーの羽の子が、「セレナのせいです!」と言い、ピンク色のは羽の子が「ごめんなさい! セレナが全部悪いんで、セレナだけ打首にしてください!」と口々にいいながら土下座する。

 静かなのは、背が高い黒い羽の子だけだ。


 ともかくも、眼の前の土下座するカラフルな羽のセイレーン五人に、タダシはハァ~と深い溜め息を吐いてから言う。


「まあ、俺の前で最後まで歌いきった度胸は認める」

「この歌、ほんとは五番まであるニャ」


 マジかよ、シンクー。

 ちょっと聞きたい気もするけど、どうせろくな歌詞ではないだろうからやめておく。


 五人が土下座して声を合わせる。


「本当に、ごめんなさい!」


 タダシとしては、謝られてもなあという感じだ。

 怒るのも違うような気がする。


「ともかく、経緯をしろ」


 タダシがそう言うと、リーダーのアリオンが説明を始める。


「これは、もともとまともなタダシ様の英雄譚だったんです」


 ちゃんとした英雄譚の曲があって、これは替え歌だという。


「なんか、私がふざけて作った替え歌のほうが受けちゃって」


 グループのムードメーカーらしい、一人だけふざけている緑の羽のセレナが、ぽりぽりと頭をかく。

 なるほど、スピンオフのほうが受けちゃうみたいなやつかと、タダシは納得する。


 そりゃ、客はこっちのほうが面白いよな。


「みんなの意見を聞くと、セレナが悪いみたいだから、セレナだけ打首にしとくか」

「ひぇー!」


 のけぞるセレナを見て、タダシはフッと笑う。


「まあ、冗談だけどね。もうしょうがないよ」


 王様とか言われて祭り上げられた段階で、こういうのはどうしようもないとタダシも思っていた。

 有名税みたいなものだ。


 こうほんとに曲になったの歌詞を聞くと、全く嘘というわけでもないので、それはそれで来るものがあるが……。

 しかし、猫耳賢者シンクーは厳しい顔で言う。


「冗談で済まないニャー。このままでは、全員打首ニャよ」


 シンクーが、さっと手を振ると銃剣を持った衛兵達が周りを囲む。

 リーダーのアリオンが慌てて言う。


「シンクー様! 正直に謝れば、王様は許してくれると言ったではないですか」


 タダシも言う。


「そうだぞ、シンクー。冗談が過ぎるじゃないか」


 この歌はタダシもどうかと思うが、この程度で打首とかとんでもない。


「冗談では済まないニャ。考えても見るニャよ。吟遊詩人ふぜいが、王族を侮辱したニャぞ。この歌は、タダシ陛下のみならず、各国の姫君、レナ女王やアナスタシア聖女王まで侮辱してるニャ。王国の権威にもかかわるし、タダシ陛下が許すというだけでは済まない話ニャ」


 これはまたシンクーは、何かを企んでるなとタダシは思って聞く。


「シンクー、何が言いたい?」

「タダシ陛下は、アリオンたちを許したいニャ?」


 いつの間にか立場が逆転している。

 セレナが、タダシの足に抱きついて言う。


「王様助けてくださいよぉ! 私達こんな話聞いてません!」

「うーん、不本意ながら、そういう形になっちゃったが……」


「こやつらを、無罪放免にする方法はあるニャ。セレナ、お前ら全員、タダシ陛下と結婚するニャー」


 タダシが、びっくりする。


「おい、いきなり何の話だ」


 タダシの足に抱きついているセレナが言う。


「しますします! 打首は嫌ですけど、エッチな夜のお仕置きならぜひ!」


 いや、だから何の話だとタダシはびっくりする。


「簡単な話ニャ。平民の吟遊詩人が王族を侮辱したとあっては、ただじゃ済まないけど、相手が王の(きさき)であれば単なる痴話喧嘩みたいになるニャ」

「はぁ?」


 いや、なんで俺は完全な被害者なのに、突然こんな攻め方をされてるんだ。

 シンクーが、笑っていう。


「この期に及んでは仕方ないニャー。ほんとに、処刑するわけにもいかないし、結婚で丸く治めるニャー」


 タダシを囲んでいる、セイレーン・エコーズの五人も、うんうんと頷いている。


「はかったなシンクー!」


 毎回こんなパターンだから、いい加減タダシだって外堀通りを埋められたとわかる。


「王国の未来のために、音楽の才能を持つ子孫も作るニャー」

「だから、そういうのはだなあ」


「タダシ陛下は毎回それだけど、どうせそう言って、いつも即落ちするニャ」

「シンクー、人を二コマ漫画みたいに言うな!」


 そこに、リーンと鈴の音色のような雅な声が響き渡った。


「結婚式であれば、私が執り行いましょうか」


 なんかでてきた。


「あなたは……」


 ウエーブのかかった桃色の長い髪に、青い瞳をした大変美しい女神だ。


「お久しぶりね、タダシ。幸運の女神フォルトゥナであります」


 タダシは、あまりのことに驚く。

 幸運、または運命を司る女神である。そのフォルトゥナが、なぜここに!


「なんで、降臨の儀式もしていないのに、女神様が!」

「言ってませんでしたかタダシ。このフォルトゥナ。この世界において、音楽家を守護する神でもあります」


 ビックリして、金帝竜エンタムが取り落としたギターを拾い上げるフォルトゥナ。


「金帝竜エンタムと言いましたか」

「ハッ、ハハッ!」


 神にも迫ると呼ばれる金帝竜エンタムであっても、さすがに女神フォルトゥナを前にしては平伏する他ない。

 女神フォルトゥナは、ディーンとギターを指でかき鳴らすと、その雅なる音にうっとりとした顔で言う。


「あなたの作る楽器、なかなかの名器ですね。音楽家を守護する我への供物としてもふさわしい。褒めて差し上げますわ」


 女神フォルトゥナに、ギターを返されると金帝竜エンタムは飛び上がってタダシの下にやってきた。


「みたかタダシ! 音楽の女神様に腕を認められるなんて、我が人生最高の日だぜ! ふぉぉおおおお!」


 めちゃくちゃ感動して、ギャンギャンとギターをかきならし始めた。

 後に、金帝竜エンタムの作りし楽器は、女神を降臨させた神器として讃えられることとなるが、それはともかく。


 女神フォルトゥナが、シンクーだけにウインクしてみせる。

 それをシンクーが、ハッと気がついてパンパンと手を叩いて声を張り上げた。


「みんな何をしてるニャ! 女神様が降りてきたニャぞ! 歓待の酒宴ニャ!」


 酒も(さかな)も、ここには山程ある。

 女神フォルトゥナを歓待するため、セイレーン・エコーズも再びステージに上って、楽器をかき鳴らす。


 さっそく、賑やかな歓迎の宴が始まった。

 女神フォルトゥナは、音楽家達の演奏を褒め称えると、自らが祝福したお神酒の日本酒をクィと飲み干し、たえなる瞳を細めて言う。


「さあ、タダシ。この勢いでぱーっ、と結婚式もやっちゃいましょうか。この女神フォルトゥナ、今日は気分が良いのでホイホイ祝福しちゃいますよ」


 わーと、周りのみんなは湧く。


「いやいや、そんな勢いつけられてもやりませんからね」


 なんでこうなったと、タダシも女神フォルトゥナに差し出された少し辛味のある日本酒を断り切れずにグイッと飲み干すと、ふぅと息を吐くのだった。

生産革命コミック6巻でてます! よろしくね!

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