九話 ホワイトデー
特に何か事件や出来事が起きない、日常の一コマ。
「トナカイー!」
「どしたんリリー? ごはんはさっき食べたのよ?」
「食べたこと忘れるほどボケてはないよ!? あのねトナカイ、今日はホワイトデーってやつらしいよ!」
「ふむふむ、何したらええのん?」
「はいっ!」
「……どしたん急に両手を広げて」
「 白い髪の子をぎゅーっと抱きしめてナデナデするらしいよ?」
「そうなんねぇ。トナカイてっきりお菓子とか作ってあげる日かと思ったのよーん」
「そういう解釈もあるらしいよ」
「そうなんねぇ」
「というわけで、どうぞっ!」
「うむ、そんじゃリリーをぎゅーっと抱きしめてナッデナデしてもふもふしてあげるのよっ! はい、ぎゅーなのよーっ」
「はふぅ……トナカイがいつになく積極的に抱きしめてくれるよう」
「ふむ? 今日はそういう日なんよね?」
「うん……んふふ」
「リリーが喜んでるみたいなのよー」
「トナカイもふもふだよう……」
「むふー、リリーの抱きしめ心地も良いのよー」
「えへへ……幸せだよう」
「リリーが寝言を言ってるのよ。何かいい夢を見てるんねぇ……ナデナデなのよ」
「はふぅ……すぴー」
「さて、リリーへのホワイトデープレゼントを仕上げるのよっ!」
ただひたすらに仲の良い二人であった。
オチは、ない。




