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森の精霊とドラゴン娘の日常  作者: となゆき
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七話 バレンタイン

ある日、甘い香りのする街に立ち寄ったトナカイとリリーであった。

「トナカイー!」

「どしたんリリー?」

「今日はチョコの日らしいよ!」

「そうなんねぇ」

「というわけで、何か作って!」

「まっかせるのよーん」




「と、いうわけで準備したのよ」

「いつもの調理施設だね。この施設、毎回新しく創ってるけど、使い終わったらどうしてるの?」

「ほったらかしてるのよ」

「だめじゃん! ちゃんと責任持って片付けないと!」

「それはすまなかったのよー。今度片付けとくのよーん」

「うん」

「そんじゃ、早速チョコ作りをするのよ!」

「おー!」




「まずは、カカオ豆を洗うのよー」

「これがチョコになるの?」

「うむ、そうなのよー」

「んー、全然美味しくないね?」

「……リリー、素材を食べちゃあかんのよ?」

「ほ、ほら……知的な探究心が疼いて、ね?」

「そういうことにしておいてあげるのよー」

「とにかく綺麗にしたらいいんだね。ばしゃーっと……」

「一杯あるからがんばるのよー!」

「わかった!」




「もう洗うのは飽きたよトナカイ……」

「お疲れなのよー。そんじゃ、次は炒るのよー」

「おー、料理っぽいね!」

「一杯あるから、ちょいと大変なのよー」

「一気にやっちゃだめなの?」

「下手すると焦げちゃうのよー」

「そうなんだ……難しいんだね」

「うむ、だからリリーは少しの量でチャレンジするのよ!」

「わかった!」

「トナカイは残りをいい感じにしておくのよー」




「……トナカイ、私くじけそうだよ」

「フライパンの取っ手を握りつぶすこと数回、早く炒ろうとブレスで焼き尽くすこと一回、途中でうとうとして焦がすこと数回……まだ許容範囲なのよ!」

「次ダメだったら大人しく座ってよう……」

「仕方がないのよー、トナカイが一緒にやってあげるのよー」

「えっ、どうやって「はい、こうやってじっくり炒るのよー」はうっ!? トナカイに後ろから抱きしめられてる!」

「やり方を背中越しに教えてるだけなのよ?」

「こ、これは……いいかも」

「リリー、トナカイ一緒に取っ手持ってるんけど、リリーもちゃんと持たないとダメなのよ?」

「はっ……こ、こう?」

「うむ、そんな感じで優しく握るのよー。そんでもって、こう優しく揺するのよー」

「これが噂の……初めての共同作業ってやつだね!?」

「多分違うのよ?」




「「……」」

「そのくらいでいいのよー!」

「出来た! やったよトナカイ!」

「うむ、よく頑張ったのよー」

「これで美味しいチョコが……」

「そんじゃ、次は皮を剥くのよ!」

「……えっ?」

「こんな感じで、ぺりぺりーっと皮をむいていくのよ!」

「この量を?」

「うむ、この炒りカカオ豆の山を全部なのよ!」

「チョコって、大変なんだね」

「むふー、きっと大変な分だけ、頑張った気持ちが伝わるのよー」

「今度からもっと大事に食べよう」




「ぁぁ……やっと終わった」

「よく頑張ったのよリリー」

「これでやっと完成……」

「なわけはないのよ」

「だよね……私の知ってるチョコと明らかに違うもんね」

「むふー、リリーはお疲れなんねぇ。ちょいと休憩するのよー」

「うん」

「リリーが休んでる間に、トナカイがいい感じにしとくのよー」

「お願いします!」




「皮をむいた炒りカカオ豆を、ごーりごーり潰すのよーん」

「そうなんだ」

「うむ、これがまたすんごい大変なのよー」

「私は炒ったり皮をむくだけでもう、おなか一杯だよトナカイ……」

「むふー、慣れたら多少は大丈夫なのよーん」

「うーん……やっぱり、作るより食べるほうが好きだなぁ」

「ふふっ、リリーのご飯はトナカイが作ってあげるから、心配しなくていいのよー」

「えへへ……トナカイが料理上手でよかった!」

「むふー、とかいってる間に終わったのよー」

「早っ!?」

「この粉カカオにお砂糖入れてー、湯煎しながらもっとごーりごーりしてー……」

「おおっ、何だか溶けてる!」

「むふー、あとはいい感じにまぜまぜーの、型にながしこみーの……」

「ドキドキ……」

「魔法とかもちょいと使って、いい感じにああしてこうして、ほいっ!」

「おおっ!? トナカイがものすごく機敏に色々やってる!」

「できたのよー!」

「最後何だか適当な感じに見えたけど、ちゃんとできてる!」

「色んな形にしてみたのよー」

「あ、これトナカイの形してる!」

「リリーの形したチョコもあるのよ!」

「!? と、トナカイ……それは私をおいしく頂きたいという気持ちを暗に示しているのでは「とりあえず落ち着くのよリリー。手に持ったトナカイ型チョコが、リリーの体温でとけちゃってるのよ」あっ、トナカイぃぃ!?」

「心配しなくても味にさほど支障はないのよ?」

「はむっ! もぐもぐ……おいしい! トナカイのトナカイおいしいよう……」

「リリー、表現がちょっと違う気がするのよー? トナカイが作ったトナカイ型のチョコなのよ?」

「えへへ、ちょっと色々端折りすぎちゃったね」

「いーっぱいチョコ作ったから、当分お菓子に困らないのよ!」

「ぱくぱく、大事に、もぐもぐ……味わって、むしゃぁっ……食べるね!」

「むふー、好きに食べるのよーん」



 トナカイが作ったチョコにご満悦のリリーであった。

 ちなみに、今まで創ったトナカイ特製の様々な施設は、運よく見つけた人間がありがたく活用していたため、そのまま譲り渡したそうな。

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