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森の精霊とドラゴン娘の日常  作者: となゆき
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五話 楽しいお風呂 その二

風呂場でリリーに捕まるトナカイであった。

「ここをもっと、こうふんわりと……」

「リリー、まだかかるん?」

「あと五時間くらいはかかるかなぁ」

「長すぎるのよ!? トナカイ洗い始めてからすでに二時間くらい経ってるのよぉ……」

「トナカイ」

「どしたんリリー?」

「例えばトナカイはご飯作るときに、このくらいでいっか……なんて妥協するの?」

「しないのよっ! おいしいもの作るためにいつも全力なのよーっ」

「つまりそういうことだよトナカイ」

「そうなんねぇ……それなら仕方がないのよ!」




「よし完璧!」

「終わったんねぇ。そんじゃ次はトナカイがリリーを洗ってあげるのよ」

「えっ……トナカイのえっち!」

「えぇ……トナカイえっちだったんねぇ」

「うら若き乙女の全身をじっくり洗うなんて……」

「トナカイ、そんなこと言ってないのよ? そもそもリリー今水着だから、身体洗えないのよ。リリーの髪を洗ってあげるのよー」

「それもそうだね。それじゃ、お願いします!」

「むふー、まかせるのよー!」




「「……」」

「何か喋ってトナカイ!」

「うむ? わかったのよー。そんじゃ昔話でもするのよー」

「えっ……思ってたのとは違うけどまぁいいや。続けてどうぞー」

「むかーしむかし、あるところに、大きな大きなドラゴンが、いたそうなーのよ」

「おーっ、ドラゴンのお話なんだねっ!」

「ドラゴンはとっても腹ペコで、悲しい気持ちになりながら彷徨ってたのよー」

「可哀想だね……」

「そのリリゴンは、彷徨う先で一軒のお店を見つけたのよ」

「うん……? いまリリゴンって言わなかっ「リリー、振り向いたら髪を洗えないのよっ!」……ごめんなさい」

「うむ、気をつけるのよーっ。そんでー、一軒のお店に向かって、大きな声でご飯をおねだりしたのよ」

「ぜひともご飯を恵んでいただきたいね」

「ギャウッ! ギャウギャウーッ!」

「ドラゴン語じゃ伝わらないと思う」

「すると、お店からひとりのじいちゃんが出てきてこう言ったのよ」

「大きなドラゴンを前に動じないなんて、肝が座ってるね」

「何時だと思ってやがる! 飯を食いたいなら、せめて日が昇ってから来やがれ!」

「まさかの夜中に訪問!? あとドラゴン語通じちゃったよ! 一体何者な「リリーっ、シーッ!」……ごめんなさい」

「なんやかんやでお腹いっぱいご飯を食べさせてもらえて、幸せな気持ちになったリリゴンだったのよ。めでたし、めでたし」

「端折った!? あとやっぱりリリゴンって言ってるじゃん!?」

「むふー、リリーを見てたら急に思いついたのよーっ」

「私のイメージ、何で毎回腹ペコなのっ!」

「むふー、リリーはすぐお腹すくから仕方がないのよー」

「もうっ、さすがの私も怒るよっ!」

「むふー、すまなかったのよー。お詫びに今日のご飯の量を、いつもの倍出すのよー」

「やったー……あっ」

「「……」」

「さ、お風呂に入ろう?」

「うむ、ちょうど髪を洗い終えたのよ!」

「えへへ、ありがとうトナカイ」

「むふー、どういたしましてなのよー」




 この後ゆっくり二人で風呂に浸かり、心と体をほっこりさせて地上に帰ったそうな。

 ちなみに出口は、トナカイが施設づくりに夢中な間、散歩をしていたリリーが見つけていたとのこと。

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