四話 楽しいお風呂
リリーに連れられ脱衣所に入っていくトナカイであった。
「というわけで脱衣所だよトナカイ」
「うむ、この脱衣所はびっちょびちょの状態でお風呂から出てきても、ぐちょーっとならない床にしてるのよ！」
「おーっ、トナカイの粋な計らいってやつだねっ」
「むふー、細部までこだわりましたなのよ！」
「それじゃ脱ぐから……トナカイあっち向いててね！」
「わかったのよー」
「絶対に振り向いてはなりませんよ……」
「何で口調変えたのかわかんないけど、わかったのよー」
「……」
「リリーが服を脱ぎ始めたのよー」
「ぴゃっ！？ ちょっとトナカイ見ちゃダメだって……あっち向いてるままだね」
「魔力の感じで向こうむいてても大体わかるのよ？」
「だめじゃん！ それもうどこ向いてても一緒じゃん！」
「そう言われるとそうなのよー。そんじゃ、魔力を遮断するついたてを置いておくのよーほいっ！」
「おー、これなら大丈夫だね！ 覗いちゃダメだからねっ！」
「うむ、わかったのよー」
「「……」」
「ねぇトナカイ」
「どしたんリリー？ お腹空いたん？」
「違うよっ！ 少しくらい私の着替えを覗きたいとか思わないの？」
「覗いてほしいのん？」
「いやそうじゃないけど……ほら、女の子としては全く興味を持たれてないんじゃないかと複雑な気持ちになるよ！」
「女の子は複雑なんねぇ」
「うん、複雑なんだよ」
「そんなリリーの要望にお応えして、このついたてにはある機能がついてるのよっ！」
「うん？ どんな機能なの？」
「衝立の下のほうにボタンがあるでしょー？」
「うん、何のボタン？ ぽちっ」
「押したら衝立が透けるのよー」
「っぴゃぁぁぁ！？ 早く言ってよトナカイぃぃ！」
「むふー、うっかりしてたのよーん」
「もうっ！ 私は自分から見せたいんじゃないのにっ！ もうっ！」
「むふー、すまなかったのよー」
「罰として全身丸洗いの刑に処します」
「ありゃー、それは大変なのよー」
「あっ、トナカイが逃げた！ まてーっ」
「むふー、リリーがトナカイ洗い始めると長いからだめなのよーん」
「トナカイのもふもふ感を保つには時間かけて丁寧に洗わないとだめなのっ！」
「トナカイを捕まえてごらんなのよー」
「くっ、捕まえられそうで捕まえられない……弄ばれてる感がすごい！」
「リリーはまだまだなのよーん」
「こうなったら……本気を出す！」
「あっ、半リリゴン化はずるいのよっ！」
「ずるくないもん！ まてぇぇ！」
「あっ、石鹸を踏んで足が滑ったのよぉぉ」
「っチャンス！ とうっ！」
「ちょっ、リリー勢いが良すぎるのよぉぉ」
「「あっ……」」
「リリー、さすがにお風呂を破壊するのはどうかと思うのよ？」
「ごめんなさい…… つい全力で突進しちゃった」
「すぐ直せるから問題ないのよーん」
「さすがトナカイ、仕事が早いね」
「むふー、それじゃ体洗ってお風呂につかるのよーん」
「うん！ それじゃトナカイここに座ってね」
「わかったのよー」
「優しく……洗ってあげるからね」
「あっ、うっかりしてたのよぉぉ……」
今回のトナカイ洗いは二時間で済んだそうな。
ちなみにリリーの服は、トナカイからもらった首輪型魔道具の力で生成されているため、わざわざ脱ぐ必要はなかったりする。
