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この世界のシステムにさよならを  作者: 視力低下が著しい
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出会いとそれぞれの野望

かなりのゆっくりペースでぽちぽちと更新する予定です。暇があれば書くくらいのつもりです

「いよいよ今日だね!楽しみだよ!」



「あぁ、そうだな。・・・そうではあるがまだ相手が好意的かどうかも分からんのにあまりにも緊張感が無さすぎやしないか?」



ここは、魔国《ラデル》、その国の王、つまりは魔王:バトフレンはこの日、勇者が来る日を心待ちにしていた。



なぜか、それは彼の望みを叶えるには勇者の力無しにはスタートラインにすら立てないからである。



しかし、バトフレンの隣に佇む男、ケルベロの言う通り勇者が手伝ってくれる保証など全く無い



「ん〜、大丈夫だと思うよ?なんか失敗する気しないし」



「・・・まぁ、俺はお前の言う通りにするさ、勇者がこの部屋に来たら二人だけにする、それでいいんだろ?」



「ん!それでお願い。おっ、いよいよ着いたみたい!さて、どうなる?」



真っ黒でいて光に当たると紫に見える短髪はそわそわと、額にある二本の黒紫色の角は穏やかに、鬼人族の魔王は勇者が部屋に来るのを待つ。






〜〜〜同刻〜〜〜




「やっと着いた、ここに最強(魔王)がいるのか。ヤツは私の望みを叶えてくれるだろうか・・・いや、大丈夫、大丈夫のはずだ」



勇者ことアリスは魔界最強の魔王がいるという《ラデル》に来ていた。



ちなみに魔界には魔王は10人いる。そのうちの一人、バトフレンは(最強)の二つ名を持っていた。



なぜわざわざ最強を選んだのか、それはアリスが人間にしてはあまりに強すぎたがために、幼い頃から孤独でいた事に原因がある。並の魔物は彼女を傷つけることすら敵わないがその事がかえって彼女の異常さを引き立てた。



父は冒険者でアリスが物心着く前に亡くなり、母はアリスを産むとすぐに亡くなった。そのため村では独りだった。



勇者であることを知った国がアリスを連れ出し、王宮で育てられているときも周りの人は形式的な挨拶程度ならするがその目には明らかな恐怖があった。



更に不幸な事に彼女は《魔眼》に目覚めてしまう。《魔眼》そのものはさほど珍しいものではない、

「ちょっと他の人より目が良いかな?」とか、

「集中したら物が少し大きく見える」程度のものもあるからだ。



しかしアリスの魔眼は「嘘を見抜く」事が出来た。そのため「勇者は心を見透かしている」と煙たがれ、「自分の事が怖いか」という質問には嘘100%の「いいえ」が返ってくる事が分かってしまう。



聞かなきゃ良いのに僅かな希望に期待して聞いてしまう。その事がかえって傷つくこととなってしまったのだが。



(私はどこでも独り、なんで?どうして私だけがこんな目に?)



そんな環境のせいで願ってしまったアリスの望み、それは苦しみからの開放、すなわち死であった。



しかし、〈勇者〉は自殺ができない。いや、勇者に限らず《王の器》を持つ者は同じで《王の器》を持つ者でないと殺す事は出来なくなっている。ただし寿命はある。



(最強)なら間違いなく自分を殺してくれる。そう思いアリスが城に入ろうとした時、扉が開き一人のメイドが現れた。



「どうぞ中へ、王がお待ちです」



それだけ言うとメイドは道を開けた。



「・・・えっ?、どういう事?」



アリスは信じられなかった。魔王が〈待っている〉事も、またこのメイドが今まで会った人の中で一番強いことも。


「・・・?、どうぞ?」



メイドは不思議そうにそう繰り返した。



「待って、王が待ってる?貴女が魔王じゃないの?なんで貴女ほどの人がメイドなの?私を試しているの?」



思わず勇者はツッコミを入れた。なぜなら目の前のメイドはアリスのいた国:ノアの王《英雄王》アレクサンダーの覇気(オーラ)が可愛く見えるほどだったからだ。



「いえ、わたしはただの臣下です。そしてメイドはただの趣味です。ちなみに()()を除くと7番目に強い事になります。」



いろいろツッコミたいがアリスはグッと堪えて



「わ、わかったわでは魔王のもとへ連れて行って」



「はい、かしこまりました。」



気になることは沢山あるが望みが叶えばそれで良いかと割り切る事にしたアリスはメイドに連れられいよいよバトフレンと面会する。



まさかこの日がアリスの人生の中で最も(心の中でだが)ツッコミを入れる日になるとは全く思っていないアリスであった。





〜〜〜魔王の部屋〜〜〜




「やぁ、こんにちは、僕はバトフレン。バトって呼んでね、よろしく!」



バトは景気良く挨拶をした

(やっぱり何事も挨拶からだよね!まさか女性とは思わなかったけど間違いなく強い、これは期待して良いか?)



「⁉︎・・・あ、あぁ、よろしく?」



アリスは狼狽した。目の前の少年は〈魔王〉と呼ぶには若い。中学生くらいにしか見えないのだ。ただし140年前には成人している160歳なのだが。



(長命種の鬼人にしても若すぎる!これが本当に(最強)なの⁉︎長命種って長生きするけど成人するのは早いはずじゃ・・・。)



しかし、本能が彼の強さに警鐘を鳴らす。だがその事が逆に彼なら間違いなく自分を殺す事が出来るとアリスは少し安堵する。



(ん〜、〈勇者〉ってイメージと違うなぁ、なぜか暗いし戦う気は無いみたい。戦う気が無いのは良いけど違う意味で苦労しそうだ。それよりもまずは・・・)



「ケルベロ」



「・・・ふぅ、まぁ問題無いか。じゃあごゆっくり」



そう言って何か安心したようなケルベロはメイドと共に部屋を去る。これで部屋は二人きりとなった。



「やっと戦ってくれるの?早くしましょう」



早く、早く楽になりたい。そう思いアリスは剣を抜く。



「はぁ?戦う気無い人が何言ってんの?それより、なんか『この世には希望なんかありませーん』とか思ってそうな君、問題」



あっさりとアリスのセリフを無視してバトは言葉を紡ぐ。



「なんで()()()()()()がやたらめったら強い力を与えられるのでしょーか。」



バトの質問はまさにアリスが小さな頃から悩んでいたことだった。



「へ?()()()()()()なんじゃ無いの?だからこの力から逃げられずに苦しむんでしょ?」



《運命》そう思ってアリスは過ごしてきた〈運命からは逃げられない〉それは物心ついたばかりの幼い子でも知っている常識である。それなのになぜそんな事を?とアリスは思った。



「まぁ正解。じゃあその《運命》って誰が決めてるの?」



「???」



アリスは答えが分からなかった。否、考えられなかった。考えようとしても脳が動かない、そんな不思議な気分になった。



「考えられないでしょ、答えは《神》だよ、簡単でしょ、でも普通はこのことを考えることは出来なくなっているんだ。(アイツら)のせいで。」



ズキっとアリスの頭に痛みが走る。しかし、長年頭にかかっていた(もや)が晴れたような気がした。



「アイツらはね、僕達生物が争うのを見て楽しんでるんだよ。テレビ感覚で、僕達ほど強いヤツらが戦っているのは確かに迫力があって良いだろうけど趣味悪いよね。」



「待って、〈考えられない〉ならなんで貴方はその事を知っているの?それにこの力は、この人生は仕込まれたものだったの?どうして私なの?」



アリスは混乱した。ずっと〈しょうがない事〉と思っていた事が実は〈誰かに仕込まれたもの〉であったこと、この力が別の誰かに宿る事もあり得たという事など、自分の知らなかった事が一度にありすぎたからだ。



「ふむ、話をする気になってくれたかい?じゃあ剣はしまって、ゆっくり語り合おうじゃないか。この世界のことと僕の野望ーーー」



バトフレンはにこやかに告げる



「ーーーこの世界のシステムを壊すことについて!」



こうして魔王と勇者の会談は始まった。

基本はどの人種も成人は20歳ですがバトはかなり精神年齢が低いです。

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