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イコットしましょ!  作者: かるめ。
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第一話


 はっと目が覚めると電車の車窓から朝日が差し込んでいた。

 私…眠っちゃっていたんだ……。

 朝日の眩しさに目を細めながら外を眺めるともう目の前にメリーベリー城の城下町が見えていた。

 ここが…もしかしたら私が次に住むかも知れない場所……。


 駅に着いて私は改めて募集チラシを見る。

 『イコットで皆で良い事してみませんか?メリーベリー城下町の真っ白な建物で私たちは待っています。もしお困りごとがあった時も是非いらしてください。イコットメリーベリー支店ギルドマスター、ルナ』そう書かれているだけの広告。

 一瞬如何わしいお店か何かだと思ったけどギルドってことはそれはありえないと思う…。

 えっと…出口はこっちかな……?

 この街は私が前に住んでいた所よりも断然賑わっていて人で溢れかえっている。

 駅から外へ出たら私が眠っていたうちに雨が降っていたのか、水溜まりができていた。

 そうだ、身だしなみ確認しなきゃ。

 茶色の三つ編みをした髪に草色の目。そして桃色のカーディガンに黄色いワンピースに茶色の斜め掛けバック。

 それがわたしの今の格好。うん、寝癖とかは付いていないみたい。


──ドンッ


「きゃっ!?」

「おい!いってぇな!そこで突っ立ってるんじゃねぇ!」

「ごっごめんなさい…」


 私の後ろでぶつかってきたのは如何にも強そうな大男。

 どうしよう…私がぼーっと立ってたから怒らせてしまったのかな…。

 でもぶつかってきたのはそっちのほうだし…。私は何も悪くない…と思う。


「ちょっと、ぶつかってきたのは貴方でしょ?あたしは見てたわよ。誤りなさいよ」


 殴られそうになって私が今にも泣きそうになっていた瞬間、突然後ろからそう男の行動を静止させる女性の声が聞こえた。


「げっ!?お前は……。くっそ、悪かったな!」


 え…?え??

 一体何が起こったのかはわからないけど男の人は逃げるように去ってしまって…。助かった…?

 お礼を言おうと後ろを振り返ると桃色のロングの髪でエメラルド色の眼の白衣を着た女性が腕を組んで立っていた。


「あ、あの…ありがとうございます……」

「いいのよ。貴方に怪我なくてよかったわ。最近この辺ガラの悪い男がいて困っちゃう。じゃあ、あたし急いでるからまたね!!」


 あっ、待って……。

 そう呼び止めようとしたけどその女性は走って去ってしまった。

 イコットの場所…聞こうとしたんだけど急いでいるならしょうがないか……。

 その女性の後ろの橙のリボンの髪飾りが印象的に残った。



 地図を見ながら人にぶつからないように気をつけてしばらく歩いていると真っ白なほかの建物より少し大きめの建物が見えた。

 もしかして…ここかな……?

 真っ白な四角い二階建ての建物に茶色いドア…。

 ここを入ればきっと…『イコット』と呼ばれるギルドに……。


 ここで断られたら…私はきっともうダメかもしれない。…でも、断られるのは怖い。

 ううん。これ以上怖がっちゃダメだよね。

 どうやって入ったらいいかな…。普通にノックして?それとも……?

 ええい。こうなったら…。


「た、たのもーーー!!」


 私はそう豪快に叫んで部屋の中に入った。

 きっとそこには沢山のギルドの人たちが……

 って、あれ…?


 シンプルな木の机と椅子がいくつかに、依頼が書いてあるであろう紙を貼ったコルクボード。そして奥には普段はギルドマスターさんが座っているのかもしれない少し豪華な机と椅子…。がある部屋には誰もいない。

 あれ、場所間違えたかな…。


「あの…誰かいませんかー…?」


 心配になってもう一度、少し弱気になりながら叫ぶと吹き抜けの二階の部屋の奥からタタタッと足音がした。


「…えっ?」


 上からひょこっと顔を出したのは黒猫の獣人の可愛らしい女の子。

 メイドの格好をした獣人の少女はきょとんとした顔で私を見るとまたすぐタタタッと部屋へ戻ってしまった。

 ど、どうしよう…。本当にまちがえちゃったのかな…。

 そう考えると心配になり、お邪魔しました…と行って逃げようかと思ったその時、「ふあぁ……。いやぁ、ごめんなさい。まさかお客様が来るとは思わなくて…」と上から声が聞こえた。


 …え?


「こんにちは!ようこそ『イコット』メリーベリー支店へ。こんな寝癖だらけの格好でごめんなさいねー。私がギルドマスターの『ルナ』と申します!」


 階段の1番上の方にいるのは私より年下であろう小柄な少女。

 その少女は少しねむそうであるが人懐こそうな笑みで私を迎えてくれた。


「…え?貴方が、ギルドマスターさん…?」


 茶色の髪と瞳。シンプルな真っ白いワンピースに星形のキレイなペンダントを付けている少女。

 本当に…この方がギルドマスターさん…?


「はい!ギルドマスターのルナです。イコットのギルドマスターの中では最年少なんですよー。ごめんなさいね。普段ならギルドメンバーの誰かしらが出迎えてくれるのですがアリサは研究所へ行っちゃったしリオンは礼拝堂へ行ってしまったし他の皆も依頼とかで居なくなってて…ノアちゃんと私しか居ないみたいですね…」


 どうやら本当らしい…。

 ノアちゃんと呼ばれた猫耳のメイドさんは私を警戒しているのかルナさんの後ろにずっと隠れているが、名前を呼ばれた瞬間にぺこりと小さくお辞儀をした。


「あ、あの…」

「あっ!それ!イコットの広告ですね!よかったぁ…見てくれた人がいるんですね…。もう1ヶ月ぐらいは経っていて誰も見ないんじゃないかと不安でしたけどよかったぁ…」


 大丈夫なのかな…このギルド…。やっぱりほかのギルドへ行こうかな…。

 そう思い、そこから立ち去ろうとする前にルナさんは私が持っていた広告を見て目を輝かせた。

 …とてもじゃないけど道に落ちてたなんて言えないなぁ。


「それで、貴方のお名前は?ご依頼ですか?それともー…?」

「ふぃ、フィアです…。あの、新しいギルドを探していて…」

「それなら是非入ってくださいな!このギルドはですねー…ギルド名の通りー……ってそれは皆が戻ってきてからがいいかな。もうすぐ他のギルドメンバーが戻ってくるので椅子におかけになってゆっくりしていってください!」


 半ば強制的に両手を握手されて私は椅子に座らされる。

 これから私は……どうなるのでしょう…か、ね……?


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