プロローグ
嘗てこの世界にはお月様が二つあった。
一つはこの世界の魔力を結構担ってて…もう一つは…それ以外の……なんだっけ?
でも私達が生まれる何十年何百年も前に魔力を担っていた方のお月様は消えちゃったらしいです。
女神様が怒って、お月様を一つ隠しちゃったんだって。
だから今私たちがいる『セルテシア』の魔法はなにもかも完全ではないらしいのです。
そう、前に私がいたギルドマスターさんがおっしゃっていました。
私…フィアは今夜行電車に乗って今いるメリーベリー大陸の一番南にある城下町へと向かっています。
…車窓から見えるお月様を見ていたらそのギルドマスターさんの言葉と魔法使いギルドの皆のことを思い出して涙が溢れた。
あんなにも皆優しくて仲が良かったのに、ある日突然皆仲間割れし始めて…皆の疑心暗鬼に満ちた目を見たら私は怖くなってしまってほんの数日前にそのギルドから逃げ出しました。
私達冒険者はどこかのギルドに属して依頼をこなしたり商売をしたりしてお金を稼いで生活するのだが、私のような臆病で中途半端な製薬師兼ヒーラーはどこのギルドでも不要なようで、それに…大人になってまだ一年の十六歳だから、いくら次の場所を当たっても馬鹿にされて雇ってくれる場所なんてなかった。
持っていたお金も底を尽きそうで途方にくれていたらたまたま地面に落ちていたとあるギルド募集の広告を見つけてしまって今その場所まで向かっているのだ。
次のギルドでは私を雇ってくれるのかな…。もし、ここで働くことができたら今度こそ平和にやっていけたらいいな。
そもそも藁にもすがるような気持ちでどんなギルドか全く調べていないので悪いギルドじゃないといいけど……。
そう心の中で願いながら私は『イコット』の募集チラシを手に持って眠りについた。
それが、私の本当の始まりの物語。
私が変わるきっかけとなった大切な仲間とギルドの物語。