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ママみたいな小学生と、俺。  作者: 成瀬
第二部
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第十八話 オニオングラタンスープ

 翌日の日曜日。

 俺たち三人は、ハルナさんの着替えなどを買いに街へと出ていた。

 女子高生のファッションなんて、全く分からない俺は辞退したかったのだが、強引に連れていかれた。

 美菜ちゃんは、俺が連れられるのを見て仕方なく、と言った感じだ。

 

 だって、俺とハルナさんを二人きりにしたくないのだ。彼女は。

 ……俺から爆弾発言が飛び出さないか、気が気でないのである。


「うー、さむーい……」


 その日は、完全に冬到来という感じで、めっきり冷え込んでいた。

 厚手のコートを買って、その中で身を縮めこむハルナさん。

 その横を、憔悴しきった表情で歩いている美菜ちゃんがいた。

 彼女は散々、ハルナさんの着せ替え人形をさせられてしまい、すっかり疲れてしまったようだ。


 それでなくても、俺からの発言に気を遣っているのである。

 疲れてしまうのも、当然だった。

 しかし……よくもまあ、ここまで買えるもんだ。

 俺の両手に持つ紙袋は全て彼女が買った服だ。


「だって、どうせ自分のものになるじゃん? それなら、やっぱ、自分の好きな物を買わないと」


 とりあえず俺は十万円を彼女に貸したのだが、それはすっかりなくなってしまったらしい。


「ハルナさん、あなたは、絶対両親の所に帰った方が良いです。お金の使い方が、かなり乱暴すぎます」


 と忠告する美菜ちゃん。


「えー? でも服買うんだから、これくらいするっしょ」


 でも十万円貸したら十万円全部使うのは、論外だと俺は思う。


「ハルナさん、一人暮らしでの一月の食事代、三万円あれば余裕なんですよ?」

「うっそだー、絶対、みなちん盛ってるでしょ?」


 ……生活レベルが違い過ぎる。

 彼女が家出をして、一人で暮らしていけるとは到底思えない。


「……ハルナさんのお母さんから、まだメールは来てないんですか?」

「んー……まだだね。うん。そんな人よ、あの人」


 と、ハルナさんはスマホを見てから、そっけなく答えた。


「てかさー、いっちー?」


 急に俺に話を振られて、どきりとする。

 ハルナさんが、ちょっと不機嫌そうな顔をしている。


「なーんか、暗くない? 話振っても、乗ってこないし」


 俺は、美菜ちゃんの言葉の通りに、殆ど話をしなかった。

 だって、彼女の言う通り、俺は態度に出る男で、それなら黙って突っ立ていた方がまだマシだった。


「そ、そんなこと、無いと思うけど」

「んー? なーんか、緊張してるよね? 何で?」


 美菜ちゃんも、こちらを見ている。

 うう。そんな目で見ないでくれ。


「あ、わかった。美少女二人とデートで舞い上がってるとか?」


 ハルナさんから、思わぬ助け船が出た。


「あ、あはは……ま、まあそうだね。こんなかわいい子二人と一緒に街へ来たのは、初めてだし」

「あー、いっちーって、そんな感じだよね」


 どんな感じなんだ。

 なんとなくわかるのが悲しいところだけど。


「それよりさー、どっかでご飯食べようよ。もう一時過ぎだし」


 それに関しては賛成だ。


「何か食べたいのある?」

「はーい、焼き肉がいいでーす!」


 と、ハルナさん。それに呆れるのは、美菜ちゃんだった。


「いやです。大体、お金はどうするんですか? 十万円、ほとんど使ってましたよね?」

「いっちーが出してくれるよね?」

「いいよ」

「一之瀬さん、だから、そこで了解しないでください!」


 別にいいんだけどな……そんなお金くらい。


「ファミレスで良いんじゃないですか? ある程度、メニューが揃っていますし……ハルナさん、このお金も、ちゃんと返すんですよ?」

「分かってるって」

「本当に分かってるんですか……?」


 訝しげな表情をする美菜ちゃん。

 ファミレスへ移動する途中で、ハルナさんが俺にそっと耳打ちしてきた。


「なんか、みなちんってお母さんみたいだよね」


 その言葉にどきりとする俺。


「どったの?」

「あ、いや――、ま、まあ、その通りだね」


 不意に、自称神様の言葉を思い出した。

 ……だから、そんなわけないから。

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