第94話 数奇的な再会
俺は、秀吉の家臣に一時的になった。
農民を目指すだったはずの俺だが、歴史の流れなのか何者かの陰謀なのか武士になってしまった。
この時代について詳しくない俺がやっていけるのだろうか。自信がない。
「で、単刀直入に聞くが、滝川一益はどっちにつくか?」
秀吉の狙いはこれだろう。
滝川一益の動向がものすごい気になっている。それは、佳奈美や竜也が言っていたことだからわかっていた。
「おそらくですが、このままだと柴田勝家につくと思われます」
俺は、竜也たちの話や俺でも知っている簡単な戦国の歴史から推測する。
「ほお、その根拠は?」
「秀吉様は農民出身。信長様のおかげで出世されました。それに対して周囲から嫉妬がやみません。滝川様もその1人です。だからこそ、秀吉樣に付きたくない。そんなプライドでおそらくは柴田に付くでしょう」
俺は、竜也たちに言われていたことをそのまま言う。
「そうか。やはり自分の気持ちを優先したか。御老人はさすが長年の誇りを優先するものじゃな」
滝川一益は確かに年がいっている。御老人と堂々とバカにしている感じ、やはり秀吉は少し調子に乗っている。そんな思いを抱いてしまった。しかし、調子に乗っても仕方ないと思う。だって、清須会議でほぼ時期天下人に内定した。天下人に上りつめたんだ。調子に乗るなんて当たり前のことだろう。
「ところでだ、小田。君に会いたいという人物がいるんだがいいか?」
「俺に会いたいという人物? 一体誰なんですか?」
俺は、秀吉から会いたい人物がいると言われる。
俺に会いたい人物。はて、そんな人物いるのか? 俺はこの時代に知り合いなんて佳奈美と竜也ぐらいしかいない。この時代の武将が俺に注目をする。そんなことはない。竜也や佳奈美に注目をすることがあったとしても俺に注目する人物何て1人もいるはずがない。じゃあ、俺に用がある人物とは誰なんだ。俺にわざわざ会いたいという人物とは誰なんだ。
「入ってこい」
秀吉が呼ぶと襖が開き2人の男女が入ってくる。
「小田先輩」
「先輩」
俺のことを先輩と呼んだその人物はよく見知った人物であった。
「え? 水上? 河合? どうしてここに?」
俺の目の前に現れた2人の男女。水上真由と河合雄介だった。俺が元々いた時代の歴史研究部の後輩だ。1年生の2人。その2人がどうしてここにいるんだ。
新たな疑問が生まれた。
「どうしてここに、ですか。先輩もじゃあどうしてここにですよ」
「そうそう。先輩だって戦国時代にいるじゃないですかあ」
俺の質問に対してからかうかのように河合と水上が言ってくる。
「そ、それはうまくは言えないけど……」
うまくというかどうしてここに来たのかよくわかっていない。気が付いたら戦国時代の群馬にいた。それしか言いようがない。
「やっぱり先輩もどうしてきたのかわかっていないのですね」
「俺達も気が付いたら戦国時代の京にいたんです」
2人も俺と同じみたいだ。
というか、今気づいたことがある。秀吉がこの場にいる。
「秀吉様はこのことを知っているんですか?」
「ん? ああ、君たちが未来から来たっている話か。最初は疑っていたが話が当たる当たる。だから、本当だと思っておるんじゃよ」
はっははは。
秀吉は笑った。本気なのか冗談なのか本当にわからない。
でも、2人と出会えたことは本当にうれしい。俺一人では何もできないからだ。水上は戦国時代が専門だ。何とかやっている気がする。
「先輩も秀吉につくんでしょ。だったら、一緒に行動しましょうよ」
河合は秀吉と呼び捨てしていた。
本当にそれでいいのか?
「まあ、いいけど……」
俺は別に断る理由というものがなかったので河合の提案に対して「うん」と答える。まあ、ちょっと不安なところがあるけど。でも、これしか俺がこの先やっていく方法がない気がするから話を合わせる。
こうして俺は秀吉と共に行動している1年生、後輩2人とも数奇的な再会を果たした。そして、俺は話をする。佳奈美のことを。
佳奈美を助けてほしい。
2人にそのことを話すのであった。




