表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/105

第93話 その男の名は


 ぽいっと俺は京へと捨てられた。

 

 「げほほほ」

 

 体に力が入らない。かなり長い時間暴行されたからだろうか。目線を手に移す。手には複数のあざができていた。あざができるまで殴られたり蹴られたりしていたということか。

 ああ、力が本当に入らない。

 しっかし、あの武士達あんなに本気になって殴ったり蹴ったりしてくるなよ。バカなのか。バカなんだよな。

 こんなこと考えている余裕があるから俺は死にはしないか。でも、こんな外で寝転んでいるというのはかなり危険だよな。

 動けない状況の俺は盗賊からしたら絶好の獲物だ。カモだ。


 「おい、そこの男何をしている」


 男が出てきた。

 1人だ。

 盗賊でないことを期待したい。


 「う、動けなくて。助けてください」


 俺は素直に助けを求める。


 「お、おう。わかったぞい。さあさあ、儂が連れて行ってあげるぞい」


 なんか語尾が面白い奴だ。ただ、俺はうつぶせになっているから顔がよく見えない。誰なんだ。

 だが、元気だったはずの俺は、どんどんと意識が薄れていく。


 「あ、ありが……」


 そこで俺の記憶は途切れた。


 ◇◇◇


 「うぅ」


 目が覚めた。


 「こ、ここは?」


 よくある白い天井の部屋で目が覚めた。そんなパターンではなかった。そもそもこの時代に病院はないのだから仕方ない。

 俺が目を覚ましたのはかなり広い屋敷であった。誰の屋敷だろうか。


 「おうおう、目が覚めたか」


 俺は、声がした方を見る。

 そこには猿顔の男がいた。

 誰だろうか。いや、この男のことは知らないが、名前は分かる。猿顔という時点でなんとなくだがわかってしまった。


 「秀吉、か」


 「ほお、儂の名前を知っているか。そうだ。儂は羽柴筑前守秀吉じゃ。よろしくな」


 やはり。

 俺の前の前に現れた男は羽柴秀吉だった。

 この人と初めて話した瞬間にこの人はすごい人だと思った。人たらしと言われているのがよくわかった。


 「よ、よろしくお願いします」


 俺はこの人についてみたい。

 そう思えた。

 

 「ところでお前の名前は何というか?」


 「お、俺は小田忠志です。ただの農民ですかね」


 「ほお、小田忠志ね。なるほどなるほど。君が、か」


 その言葉から秀吉はどうやら俺のことを知っているらしい。


 「俺のことを御存じで」


 「ああ、知っているさ」


 その言葉からはさっきまでの陽気さはなかった。かなり真剣な声。そして、さっきまでの高い声のトーンではなく低い声のトーンであった。


 「そ、そうですか……どこまで?」


 俺はおそるおそる聞く。


 「どこまで、か。そうだな。お前も気づいているんだろ。俺が忍を使っているということを。だから、いろいろなことを知っている」


 「そうですか。ならば、俺が滝川一益と共にいたことぐらい筒抜けなんでしょうね」


 俺は、知られていること前提で話す。まあ、本当に知られているものだと思うけど。


 「ああ、知っているさ。何なら君の女が柴田勝家の元にいることも知っているさ」


 ほお。

 何でも知っているな。

 さすが、いろいろな情報網を持っているだけある羽柴秀吉だ。


 「なるほど」


 だが、今の俺はその言葉に対してこれ以上続ける言葉が出てこなかった。


 「ところで、小田君。君に話がある」


 秀吉が俺に話があると言い、一旦呼吸を整える。


 「話?」


 「ああ、話だ。君は柴田勝家に恨みがあるだろ」


 「ええ、そうです。ありますよ」


 俺は、秀吉の言葉に間髪入れず返答する。

 柴田勝家の恨みを持っている。その恨みを晴らしてくれるならば……載ってもいい。


 「で、何でしょうか?」


 「小田。儂の配下にならないか?」


 農民になる予定であった俺だが、秀吉の配下になるように言われた。

 農民になるか武士になるか選択する時がやってきたようだ。


 「俺は、農民がいいんですが……」


 「ならば、一時的に儂の配下でいい。柴田を倒すまでの間だけだ」


 「それならばいいですよ」


 時限的な条件であれば断る必要など全く持ってなかった。今の俺は秀吉に付けば柴田勝家を倒すことができる。よし、この話は乗ろう。


 「そうなら、よかった。はははは」


 秀吉はとても機嫌がよさそうであった。

 俺は、意図せず一時的に秀吉の家来になるのであった──


次回は16日18時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公たちが本能寺の変1年半前に転移して知識チートで農業実績挙げた後に本能寺の変→再会、だったら主人公が不憫な思いをしなくて済んでいたかも。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ