第91話 柴田勝家との話し合い2
「俺が、柴田勝家だ」
ついに柴田勝家と対面した。
男気溢れている。
野生の男。脳筋。大雑把そう。
それが俺の柴田勝家の印象だった。元々持っていた印象とどう変わったかって? そんなの決まっている。何一つ変わっていない。
元々持っていた柴田勝家のイメージそのまんまであった。意外性がなくて別の意味で驚いていた。この時代の人ってこんな感じなんだな。
「は、初めまして。小田忠志です」
「歌川佳奈美です」
「オダ? 御屋形様の親族か?」
俺の名字に柴田勝家は興味を持った。
だが、俺のオダは織田信長の織田とは字が違う。
「いえ、私のオダは小さい小田です。茨城─常陸国の関東八屋形の1つ小田氏と同じ小田です」
俺は、自分が戦国時代の知識が薄いことは何度も言うが重々承知である。しかし、自分と同じ名前の偉人というものはどの時代であっても気になるものだ。そこで偶然知ったのが常陸国現在で言うところの茨城県の戦国大名小田氏だ。鎌倉時代が続く名門である。竜也や佳奈美に聞いたところ戦国好きには結構有名な一族らしい。小田氏治が有名らしい。
その小田氏と同じ名前とは光栄だ。
「なるほど、常陸者か。あい、分かった。長近下がってよいぞ」
俺達と話をしている途中に、柴田勝家はこの部屋に俺達を案内してきた武士を部屋から下がらせた。
俺達への警戒を下げたということだろうか。
長近と呼ばれた男はかなり嫌そうな表情をしたが、柴田勝家の命令には逆らえないということで渋々下がった。
一方、俺とは異なり佳奈美はなぜか興奮していた。
「長近って、か、金森長近だったの!?」
どうやら先ほどの武士について知っていたようだ。
そんなに有名な人物だったのか?
「ほお、我が家臣金森長近のことを知っているのか」
柴田勝家が関心をしていた。
佳奈美に大変な興味を持っている。
その様子に彼氏であるはずの俺はかなりムっとなっていた。嫉妬している。自分でも認めている。
しかし、柴田勝家の奥さんはお市の方だ。そんな美人が妻なのに俺の女にそんな目を向けるなよ。いや、まだ結婚していなかったんだっけ。その辺のことはあまり詳しくないから分からない。
「ええ、存じ上げていますよ」
「ほお、なかなか見どころのあるやつだ。長近はなかなかの逸材だ。将来はもっと出世できるぞ」
「確かに彼は有能そうですね」
佳奈美は金森長近について知っているので柴田勝家の言葉に頷く。
「さて、そんなことではなく本題に入りたいのですが、いいですか?」
「ああ、俺に何を求めているんだ?」
「私達は、京に行きたいと思っています。一緒に京に行ってもらえますか? もちろん、あなたには不利なことがないようにしてあげますよ。滝川殿が何を考えているか気になりませんか?」
「ほお、この俺を揺さぶるつもりか」
「はい。あなたならこの条件をしっかり飲んでくれるものと思っていますよ」
佳奈美と柴田勝家の2人の真剣な駆け引きが行われる。佳奈美の提案に柴田勝家がどのように反応するのか。
柴田勝家は俺達の提案に乗ってくれるだろうか。
あまり頭がよさそうにないと俺は思っていたが、意外と冴えている。さすがは、織田家家臣筆頭ということだけある。脳筋だけであればもっと早くに失脚しているはずだ。ここまで失脚せずにやってこれたのにはそれなりの理由があるということだろう。
「わかった。いいだろう。ただ、滝川一益の話はしっかりと聞かせてもらうぞ」
俺達の提案をしっかりと聞いてもらえた。
京にこれで無事に行くことができる。
「ありがとうございます。では、さっそく京に行きましょう」
「さっそく? 気分が早いな。まあ、いいだろう」
すぐさま京に行くことが決まった。
こんなにすんなり決まるとは思ってもいなかった。
「では、行きますか」
京に向かう。そして、京野菜でも見るたびが始まったのだった。
次回は、12月9日水曜日更新です。




