第88話 清須デート4
「それは、柴田勝家よ」
「えええええええええ」
「え?」
俺の驚愕、竜也は軽く驚いていた。
「柴田勝家って敵じゃないか?」
俺の指摘に竜也もうなずいていた。
俺達は滝川一益側の人間であるということは長束正家が接触してきたことから多くの織田家の人間にそう思われているはずだ。それなのに、どうして柴田勝家の名前を出すんだ。
「いや、私達の敵ではないね。滝川一益は、おそらくこのままだと柴田勝家側につくわ。だったら、その柴田勝家をうまく利用しましょう。もちろん、うまく利用した後は、秀吉側につけばいい。勝家の情報を流すなどして味方になればいい。竜也だって滝川一益を秀吉側に付かせようとするんでしょ?」
「まあ、そうだが」
「だったら、まず、私達は柴田側についている。そんなイメージをつけさせましょ」
佳奈美は佳奈美なりにいろいろと考えているようだ。
俺には絶対に思いつかないような考えであった。
「なるほどな。歌川の考えはよくわかった。歌川の考えが失敗しないように俺は絶対に滝川一益を秀吉側につかせてみせるからな」
「よろしくね、野村君」
竜也と佳奈美の間で話が済んだようだ。相変らず、俺は蚊帳の外。本当に悲しくなる。
「……むぅ」
俺は2人の横で頬を膨らませていた。
嫉妬だ。
自分でもわかっていたが、嫉妬していた。
だって、仕方ないじゃん。2人だけいろいろと分かっていて俺は分かっていない。とても悲しいことだ。佳奈美は俺の彼女なのに竜也とばかり話があって本当に悔しいよ。
「……忠志」
「どうしたのぉ、頬膨らませてぇ」
竜也と佳奈美に気づかれる。
「べ、別に頬を膨らませてないよ」
「ほんとかなあ?」
佳奈美が近づいてきて疑ってくる。
ち、近い。
佳奈美との距離がかなり近かった。
横で竜也がニヤニヤしている。
腹立つな。
「まあ、忠志君が嫉妬してくれて私はうれしいよ」
佳奈美はハニカミながら言う。
「べ、別に嫉妬なんかしてないし」
「ツンデレかよ」
「ツンデレだね」
俺の言葉は完全にツンデレの言葉だった。それを2人にツッコまれる。わかっていたさ。俺もそんな気がしていたから。
「うるさあああい!」
俺は誤魔化すかのように大声を上げる。
「ああはは」
「えへへへ」
2人して笑ったり、ニヤニヤしたりする。俺だけからかわれていてとても悲しい。他の人をいじってもらいたいものだよ。
ターン変更できないものか。
「さて、たくさんからかったことだし満足したぜ。さて、宿だがこの先に良い場所があるからそこに泊まればいいさ」
「そうなの?」
「ああ、織田家の家臣の何人もがいい場所だって言っていたから違いない」
「わかった。そこにするわ」
「……何で、俺だけいじられるんだ……」
「はいはい、イジけてないでいくよ」
「ううぅ」
俺は、気持ちが落ち込んだ状況で宿に向かう。だが、気持ちは宿につくと好転する。
宿はかなり大きかった。
城下町の他の家屋よりも大きかった。
多くの旅人が泊まるらしい。そして、武士も泊まるらしい。
「じゃあ、ここに泊まるよ」
竜也はその後、自分の泊まる場所へと向かっていった。
その日の夜、俺は佳奈美との2人の夜を過ごしたのだった──
次回は、11月28日土曜日18時更新です。




