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第86話 清須デート2

 清須で俺達はデートをしていた。

 もちろん、これが初めてではない。

 長野の諏訪湖で諏訪氏を探している時にも佳奈美と2人で行動した。それもデートだ。だから、これが初めてのデートだということではない。ただ、あの時と違うことがある。諏訪湖あたりには誰も人がいなかった。いわば田舎だ。一方、ここは清須城の城下町。今も俺らの横をいろんな人が歩いている。

 人通りが圧倒的に違う。

 田舎でデートする時は人目を気にしなくていい。だが、ここは人目を気にしなくてはいけない。それが俺を余計に恥ずかしくさせていた。


 「すみません。少々いいでしょうか?」


 俺達2人が歩いていたところ声をかけられた。

 武士らしき人物だった。

 この人物は一体?


 「何でしょうか?」


 「あなた方は滝川左近殿の関係者でしょうか?」


 「……」


 ああ、と思わず答えてしまいそうになるが深く考える。

 これがもしも敵であったら……俺達の命が危ない。

 佳奈美と目を合わせる。佳奈美も同じ考えのようだ。

 俺達と滝川一益の関係を容易に話さない方がよさそうだ。


 「何だ、何だ、俺のことを警戒しているのか?」


 武士はおどけてそんなことを言う。


 「そりゃあ、警戒しますよ」


 「ですね」


 俺と佳奈美は警戒していることを相手に伝える。

 こんなおどけたやつ怪しい。

 敵に違いない。

 俺達はそう思い警戒心をマックスにする。

 佳奈美も警戒する。


 「……」


 「……」


 「「……」」


 お互いにらみ合う。

 高度な駆け引きが行われている、と俺は勝手に思っている。

 向こうの武士は全く話をしない。にらみつけてくる。


 「あはあは。わかった。わかった。私の負けだ。私は、丹羽長秀様の家臣である長束正家です。実は、あなた方に話があってきたのです」


 「……話すことなどないが」


 俺は、余計なことをしゃべりそうなので何もしゃべらないぞというアピールをする。


 「では、私が話でも聞きますよ」


 そんな俺に代わって佳奈美が話を進めてくれるらしい。

 俺としてもありがたい。

 彼氏としては情けないが、戦国の知識について、俺は佳奈美には到底かなわない。適材適所ということで全部丸投げしよう。


 「では、長束正家様はどうして私達に接触してきたのでしょうか?」


 佳奈美が言う。

 ただ、俺は長束正家という名前に引っかかっていた。その名前をどこかで聞いたことがある。

 歴史の授業で習ったような……そんな有名な人物だっけ?

 俺が、長束正家についてかなり「うーん」とうなりながら考えていた横で佳奈美は長束正家と話をしていた。

 そして、うなっている俺にも気づいていたのか長束正家との会話の間でぼそっと俺に対して佳奈美はある言葉を言う。


 「……五奉行ぼそっ


 五奉行……。あっ。五奉行か。

 その佳奈美の言葉で俺は長束正家のことを思い出す。

 豊臣政権末期に秀吉が自身の死後も豊臣政権が続くように作った五大老と五奉行の制度。その五奉行の1人に長束正家の名前があった。五奉行は石田三成・浅野長政・前田玄以・増田長盛そして長束正家の5人のことだ。石田三成の名前は関ヶ原の戦いもあるから有名だが他の4人についてはすぐ忘れてしまった。確か、全員秀吉のお抱え家臣だったっけ?


 「……なるほど。それで私達に話をしに来たという訳ですね」


 「ええ、我が主君は滝川左近殿の進退をかなり気にしておられます」


 俺がずっと考えている間も佳奈美と長束正家の2人の会話は知らず知らずのうちに進んでいた。

 俺は、考えるのをやめ耳を傾ける。


 「滝川様は、かなり悩んでおられるようですよ」


 「なるほど。では、羽柴様につく可能性もあるのですね」


 「ええ、ないとは言い切れません。丹羽殿のように羽柴樣に着く可能性もあります。ただ、可能性としては織田家の筆頭家老は柴田様であります。気持ちは柴田様の方に傾いている可能性もあります」


 「うーん。なるほど。丹羽様の考えとしては滝川様にぜひこちら側についてもらいたいと考えておられます。お二人も滝川殿にその旨を伝えてください」


 「わかりました。私どももそのような話をすでに伝えています。あとは、丹羽様が直接滝川様に会いに行くのが一番だと思いますよ」


 「その旨、我が主君に伝えておきます」


 そう言って、長束正家は城の方へ戻って行った。

 家臣もなかなか大変な仕事があるようだ。

 長束正家が去っていくのを見て俺らは再び宿探しをするため町ぶらりを再開したのだった。


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