第82話 木曽での事2
木曽で名物の農作物が何かの話をしていた。
かぶが思い当たった。
しかし、この時代のこの場所に人があまりいないので農家を探すのも苦労する。
本当に大変だ。
「何も見つからないようだったらさっさと進むぞ」
滝川一益にはこのようなことを言われた。
内心穏やかではないはずの滝川一益はかなり焦っていた。
竜也はそんな滝川一益のことを知ってか先に進むことを提案していた。
「早いうちに美濃国に入りたいからな」
美濃国すなわち現在でいう岐阜県南部の事である。
岐阜県の南部は美濃国、北部は飛騨国その2つの旧律令制国で成り立っている。
「美濃ね……このルートだと中津川かな」
「ああ、中津川だな」
中津川……現在の岐阜県中津川市か。中央道で東京から岐阜方面に向かう時に岐阜県に入って最初の自治体だ。その名前は俺も旅行した時に聞いたことがある。
「中津川って名前だけは聞いたことあるけど何か有名なものでもあるのか?」
俺は竜也に聞く。
「うーん、俺も名前だけなんだよな。そんなに地理に詳しいという訳でもないから。中津川の人には本当に悪いと思うけど」
竜也がどこにはわからないけど謎の配慮をしていた。
まあ、俺も中津川市民の人にはとても悪いと思うけどさ。
「まあ、まだまだ先は長いから早く進んだ方がいいと思う」
俺は、先に進むことを提案する。
かぶの存在はかなり魅力的だ。でも、あまりに不確定すぎる。この時代に木曽でかぶが作られているのかどうかも怪しい。俺自身そんなに詳しいわけではないのだから。
「そういえば、木曽といえば、木曽氏がいるよね」
佳奈美が俺の知らないネタを出してきた。
それにもちろん答えるのは竜也だ。
「ああ、そうだな。確か、信長側についていたはずだけど本能寺の変後のどさくさにいろいろあったよな。本拠地もここ木曽福島城だったはずだし」
「確か、木曽義昌だったよね、当主は?」
「ああ、そのはずだ。ただ、木曽氏はこの時は木曽谷にはいなかった気がする。信長に着いた時に松本の方に領知替えしたはずだから。しかし、本能寺の変後に木曽谷に戻っている。森可成を追い出そうとして逆に息子を人質にされていたはずだ。その後は、家康についていたはず」
「その木曽をうまく利用できないかな?」
佳奈美が提案してくる。
「うまくとは具体的にどういった話なのだい?」
竜也は佳奈美の提案に対してあまり理解していない感じがした。理解していないというか否定的な感じをした。
「ぐ、具体的と言われても……のちのち木曽は関東と中部をつなぐ大事な地になるから木曽をこっちの派閥に入れておいて損はないと思うけど。それに木曽の子孫は確か群馬に住むはずだよ」
「……確かにそんな気がしたが、あんまり今木曽を味方にするメリットがあるかと言われればないかな」
竜也はやはり否定的であった。
それにしても佳奈美と竜也の知識は本当にすごいなあ。
なあ、俺って何なんだろ。
「2人ともとりあえず先に進まないか」
何だか、佳奈美と竜也の間でギクシャクしてきたので俺が先に進むことを提案する。俺の農作物探しは一旦諦めることにする。
また、いつかくればいい。
まず、しなくてはいけないことは京に行くことだ。
そのためにはこんなところで仲たがいをするわけにはいかない。
「……」
「……」
「まあまあ、そんなむすぅとした表情をしないで2人ともほら仲直り」
「……わかったよ」
「……わかったわ」
2人がしぶしぶだが俺の意見に聞いてくれた。
「なんか、忠志にこんな気を遣わせるとは」
「負けた気がする」
2人から負け惜しみが聞こえたが、俺は聞こえないふりをする。
ああ、珍しく気分がよいな。さっさと今日は寝ることにしよう。また、明日も移動するため早く起きるんだし今日ぐらいは気分よく寝させてもらおう。




