第6話 大名になる
目の前に集落らしいものが見えてきた。
村の周囲には堀と柵が廻ってあった。これは敵から村を守るためのものだろう。さらに、入り口には櫓もあった。これは、小学校の授業で鎌倉の武士の館の絵で見たことがある。確か、物見やぐらという名前だった気がする。ここに人が駐在していち早く異常事態を知ることができるようにするためのものだった気がする。
実際に櫓の方をよく見てみると人がいた。俺の推測は正しかったようだ。
「村長が帰って来られました」
「門を開けなさい」
「承知」
村人たちの間であわただしい会話がなされる。
門が開く。
村への入り口が開いた。俺は村長たちに案内されて中へと入っていく。ただ、村の内側にいた門を守っていた人は、俺が怪しい奴だと判断したのだろうか、問答無用で門のそばで1回刀で俺を突き刺そうとしたが、刺されるぎりぎりのところで村長やマツが止めてくれた。
危なかった~。あと少しで殺されるところであった。そもそもこの状況をまだ理解していないというのに死ぬわけにはいかない。戦国時代の群馬にどうして飛ばされたのか。これが分からなければ意味がない。こんな戦国大名が誰もいないように国にいたところで何もすることがないが、ここに来たのも何かの縁。または、神様がここで何かを成し遂げということなのか。だったら、やってやる。とりあえずはこの村を拠点に何かをしよう。
村長からまだ神様と勘違いされているが、逆にこれをうまく使ってこの村を基盤に俺も戦国大名にでもなろうか。とりあえず村を見渡す。他の村を見たことがないのでそうであるのか判断はできないがかなり人がいるようだ。かなりと言っても100人ぐらいであるが、これはかなり大きい部類だと思う。100人もいれば十分だ。村としての力が十分にある。
さて、どうしたものか。
今の世の中下剋上だ。農民から這い上がることもできる。あの天下人の豊臣秀吉だってもとは木下藤吉郎といった農民。織田信長に登用されて出世したまさに下剋上の代名詞だ。北条早雲(伊勢早雲)だって、下剋上の代名詞だ。ほかにもあげればきりがない。そういった人たちがいる。俺にだってできるはずだ。
「神様? どうしたの。そんなに、にやついて」
「ん? そうかな」
どうやら俺がいろいろなことを考えていた内に顔がにやついていたようだ。マツが俺の表情について指摘してきた。
でも、楽しみが増えた。何かやりたいと思えるものにぶつかることができた。
この何にもない戦国時代の群馬で戦国大名にでもなってやる。
こうして、俺は自分自身が戦国大名になるために、この群馬において戦国大名を作るために始動した。