第53話 休みの期間
4か月間放置して申し訳ありません。
短いながらも再開します。
「許可は下りたぞ。京へ行ける」
竜也は案外あっさりと滝川一益から今日行きの許可をもらってきた。それは簡単だった。しかし、内容に少し問題があった。
「それでだ、同行する人として滝川一益本人が来る。それと家臣もだ」
「え?」
なぜ、今関東を離れるのだ。俺は不思議に思った。
「清須会議に間に合わなかったが、しっかりと織田政権の後継となる羽柴政権に参加するために秀吉に会いに行くそうだ。上野国は息子の一忠が残るから大丈夫らしい。あと、一門の益重が補佐として残るらしい。だから、関東は大丈夫みたいだ」
「いや、いやそれでいいのか?」
「まあまあ、忠志君。滝川様もいろいろと考えているんだよ。ここは戦国時代。策略とかもあるから少しでも中央での自分の位置を確定しておかなければならない。それが狙いなのかもしれないよ」
佳奈美にもっともなことを言われてしまった。
「ところで竜也もついてくるのか?」
「ああ、俺も付いていくことになった。だから、安心しろ」
「安心……何が安心なのかわからないが、まあいいか」
「野村君も来るのね。ところで野村君は何か目的でもあるの?」
「ああ、目的か。この時代だし、俺も滝川様に仕えることに正式になったから家臣が欲しいと思っていたんだよなあ。だから、知名度が上がる前の人を探してみようかな」
「えぇっとこの時代って誰かいる?」
「それが思い浮かばない。旅をしていれば思い浮かぶかなあって。大体秀吉が集めちゃっているからな。もっと時代が早ければ(石田)光成とか呼べたんだけど。誰か寺に入っている人でもいないかあ」
「そうだね。私もそこまで詳しくないから何とも言えないよ」
「まあ、どうにかなるかあ」
竜也は暢気に家臣を探すらしい。
戦国時代の知識があるといえどもわからないことが多いらしい。まあ、俺も近代史が専門だが内容が細かすぎてすべてがすべてわかっているかと言われればうんとは簡単に頷くことができない。だから、竜也を非難したりはしない。
むしろ、ここまで知っているという方が逆にすごいのだ。
俺なんか時代が違いすぎてわからない。
本当にだ。
日本史を専門にしていると言ってもみんな担当の時代みたいなものがある。とりわけ戦国なんか好きな人は本当にものすごいマニアックなことまで知っている。俺なんか太刀打ちする隙すらないのだ。
だから、2人の話を素直に聞いているのが今の俺の精一杯。この時代についての本をもう少し予習してくればよかったと何度後悔していることか。
「ところで、出発っていつだ?」
「明後日らしい」
「なら、それまではしっかりと休みを取っておかなければいけないな」
「それね。忠志君もしっかりと休むんだよ」
「何で、俺にだけ言うんだよ。俺よりも竜也の方が絶対に休んだ方がいいと思うぞ」
「まあまあ、佳奈美がどうして言ったのか察しろよ。鈍感野郎」
「むっ」
何か納得はいかなかったが、これ以上突っ込むことはしなかった。
その後は解散した。
そして、次の日は特に何事もなかった。普通に生活をしているだけで1日が過ぎてしまった。本当はそういう平和な日があればいいんだけどなと内心思っていた。
そして、いよいよ出発の日を迎えたのであった。
次回は2月10日18時です。




