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第50話 計画とは


 俺らの下にやってきた人物。それは、滝川一益だった。


 「すまない。小田殿、歌川殿」


 「滝川様?」


 「どうしてここに?」


 俺と歌川の2人は、質問をする。

 俺らは、彼に仕官することを断りこうして農民として生活を始めた。しかし、滝川殿はそれを知っているはずなのにどうしてここに来たのだか。俺にはわからない。どういった用件で来たのだろうか。


 「小田殿、歌川殿にお願いがあって来申した」


 どうやら俺らに頼みごとがあってやってきたみたいだった。そのお願いというのが俺に仕えてくれないかというものだったらこいつ大丈夫かと少し思ってしまうので、それ以外のお願いだったらかまわない。と、言っても何でもいいわけでない。俺らに出来ることは限られているからだ。

 そのお願いとはいったい何なのだろうか。


 「お願いとは、一体?」


 「実は、作ってほしいものがあるのです」


 「作ってほしいものとは?」


 「はい。まず、作ってほしいものという本題に入る前にここまでに至る状況を説明したい。神流川の戦いの後に、使いを出して清須で行われた会議に意見を出すことには成功した。そこで、羽柴に付くこととなった。本当は、柴田殿に付きたかったが、野村殿が羽柴にしろとうるさいのでそうした。結果、滝川一益として上野の領地をいただくこととなった。そこで、問題だ。食料を確保したい。そのためにも作物を作ってくれないか?」


 「その作物はどういったものが良いのでしょうか?」


 「兵糧とかになるとお米ですか?」


 俺の質問と佳奈美の質問が滝川一益に向けられる。


 「確かに兵糧も必要だ。しかし、それ以上にもっと多くの人に食べさせることができるこの土地にあった食料を生産したいのだ」


 「つまり、武士とかじゃなくて生産面で俺らに協力をお願いするということですか?」


 「ああ。そういうことになる。詳しいことはこいつに聞いてくれ」


 滝川一益は、そう言うと1人の男を中に通してきた。その男は俺らがよく知っている人物であった。


 「竜也か」


 「ああ、久しぶりだな。っていっても、2か月ぐらいか」


 「そうだね、竜也君。でも、学校だと毎日会っていたから2か月っていうのは本当に久しぶりに思えるよ」


 「で、竜也から話って何だ?」


 「ああ、その前に滝川様。少し席を外してもらってもいいですか?」


 「ああ、野村殿の言うとおりにするさ」


 竜也にこの部屋から出ていくように言われた滝川一益は素直に部屋の外へと出ていった。その様子を見て俺は驚いていた。この時代の武士がこんな簡単に人の言うことを聞くことに。竜也何てどこの骨ともわからないような人物なのにそれほど信頼を勝ち取ったということだろうか。


 「で、話とは?」


 俺は、滝川一益が出ていった後に竜也にもう一度同じ問いかけをする。

 竜也は、滝川一益に聞かれたくないような話をしようとしていることだけ察することができた。


 「まず、本題に入る前に俺の計画について教えようと思う」


 「計画? 野村君は何か企んでいるの?」


 佳奈美が竜也の言葉に対してどういった意味があるのか問いかけをする。


 「ああ、俺にはある計画がある。それは、滝川一益に生き残ってもらうことだ」


 「生き残る? 滝川一益って、本能寺の後に失脚して亡くなったんだっけ?」


 戦国の知識がとにかく薄い俺には滝川一益という存在は織田四天王の一角であることは知っているが信長亡き後は存在がなくなったものでてっきり死んでしまったものだと思っていた。


 「いや、違うよ。忠志君。滝川一益は、本能寺の変の後に清須会議に間に合わなかったという話は前にしたよね? で、結果として柴田勝家・織田信孝の陣営に回り敗れて伊勢の領地を奪われ蟄居することになるの。でも、小牧・長久手の戦いが秀吉と家康との間に起こると秀吉陣営に付き新たに領地をもらいそのまま表舞台に復帰することなく亡くなるっていうのが、滝川一益の人生なの」


 「なるほど。晩年はあんまり芳しくなかったと」


 「まあ、没落ということだね」


 没落と俺にもわかりやすい言葉で説明してくれてとてもありがたかった。


 「そうだ。その人生を変えようと思う。すでに、神流川の戦いには勝利し、清須会議には間に合わなかったが、秀吉陣営に付くことはできた。伊勢の領地も安堵してもらったし、さらに上野も加増という形で領地にすることに成功した。このまま豊臣政権下で五大老になることができれば成功だ」


 「五大老って、豊臣政権の家康、毛利輝元、宇喜多秀家、上杉景勝、前田利家の5人だっけ?」


 「ああ、そうだな。ここは教科書にでも出てくるから知っていたか。ちなみに、小早川高景も最初は大老だったけど亡くなって6人から5人になって五大老と呼ぶんだぞ」


 「そうなのか」


 まあ、教科書に載っているようなことは知っている。教科書を隅から隅までしっかり読み込んでいるからだ。

 だが、竜也から上から目線で何か言われたようで少し不機嫌だった。


 「それで、本題だ。俺は、今後の小田原の役を見据えている。そのためにも食料をしっかりと確保したいと思う」


 「食料を確保と言っても俺らに出来ることは普通に農業することだけだよ。現代の様々な農法なんてまったく知らないから生産性を向上させることとはできないよ」


 「私も同じだよ。農法を知らないのはそうだけどまずこの時代の技術力でできるかどうかも怪しいからね。野村君には何か策でもあるの?」


 「ああ、ある──」


 竜也は自信満々にその策というものを答えようとした。


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