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第4話 農民になること

 そういえば、滝川様と言う言葉をマツは言っていた。

 つまりは、まだ滝川一益が群馬にいるということは本能寺の変は起きていないはずだ。滝川一益は織田家の東国侵攻の担当として群馬(正確に言えばこの時代では上野国)にいる。それは、近現代史が専門の俺でも何となくだが、知っていた。本能寺の変が起きると滝川は真田との交渉をしたりして、本国へと戻って織田信長を殺した明智光秀を殺さなければならない。結局、間に合わない滝川だが歴史の流れからして尾張へと戻らざる負えない。つまりは、まだ滝川に動きがなさそうだから本能寺の変の前。つまりは、1582年より前の世界だ。織田信長時代だと東国に影響力を与えることができていないから上杉も北条もさらには奥州の伊達も健在な時期だ。


 「だが、1582年より前とわかってもいつなのかわからない。確か滝川一益が群馬に入ったのが、えぇーといつだったっけ?」


 正直なところ、そこまで詳しくはなかった。だって、俺一応専門近代史だもの。戦国好きのほかの奴が俺の代わりに戦国時代にタイムスリップした方がよほどよかったのじゃないか。俺なんかでよかったのか。なあ、神様よ。それとももっと俺に戦国時代を勉強しておけとでも言いたいのか。これは俺が試されているのか。

 俺はいるのかいないのかわからない俺をこの世界に送ったはずの何者かに対して文句を言ってみる。

 まあ、案の定返事とかないんだけどな。


 「しっかし、思いつかん。生き残る方法がない」


 ああ、これは完全に俺詰んだんじゃないか。


 「あああああああああああああああああ!」


 叫ぶしかない。ああ、どうすればいいんだ。なんかないのか。情緒が安定しない。不安定すぎる。


 「あ、あのー神様?」


 「ん? どうした?」


 そこにマツが声をかけてくる。俺は、マツがどうして俺に声をかけてきたのか理由を聞くことにする。やっぱりさっきみたいにまた叫んだりしたから引いているんじゃないのかな。


 「実はお願いがあるのですけどいいですか?」


 「お願い?」


 「ええ、お願いです。そ、その、あっしの村に来ませんか?」


 「へっ!?」


 マツのその言葉に驚いて間抜けな声が出てしまった。

 でも、その言葉を聞いて俺は何となく思った。もう、この先武士になる未来を群馬では見出すことができない。つまりは出世なんかできない。大名にも成れない。戦いに参加する機会もきっとないのだろう。だったら、どうすればいいのかと考えたなら農民として村をもっと発展させた方がいいのではないか。理系ではないから実際に行うことはできないが、日本史をやってきた以上知識だけは持っている。その知識をフル活用して村をもっともっと発展させてやる。

 水車、水田、備中鍬、唐箕、肥料などなど江戸時代以降に確立する技術を伝えて見せよう。


 「どうでしょうか?」


 「ああ、行かせてもらうよ」


 マツの提案を快く受け入れる。

 さあ、俺が村を見事なものにしてみせる。

 でもとりあえずは、どんな村なのかを様子見することから始めることにしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦国ディープ知識あれば、あと10年程は妙印尼ばあさん生きてるはず、甲斐姫も会えたかも。
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