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第3話 マツ

 どこについたところで未来はない。

 ならばどうすればいいのか。一番可能性があるのが、現在一番力のある勢力に取り入ることだ。戦国時代の群馬と言えば、後北条氏と上杉氏が戦っていた舞台だ。北条につくか、それとも上杉か。可能性があるとすればこの二択しかないだろう。

 だが、北条は前にも考えたが小田原征伐により滅亡。上杉は関ヶ原のあとに米沢に移されてしまう。

 滅亡を避けるのであれば上杉。現在を謳歌するならば北条。果たして俺はどっちを選べばいいんだ。どっちを選んでも未来が明るくない。これがいわゆるゲームにおけるハードモードといったところだろうか。俺が群馬の小勢力に協力するという手もあるが、そもそも最初に思いつくような人物がいない。これはやはり完全に詰んだ。

 いや、1人いる。真田だ。真田は、群馬の北部にある沼田を領地にしていたはずだ。しかし、今の時代がどれぐらいかわからない。織田信長が死んでいたのであれば滝川一益が撤退しているはずだ。それよりも前であれば沼田はまだ真田のものだ。さらに前であったのならば誰のものかわからない。

 でも、真田も確か関ヶ原で昌幸と信繁(幸村)が石田三成側の西軍についたから領地奪われるんだよな。兄についていけば生き残れるけど。

 やっぱり真田にもつけない。


 「ああああああああもうどうすりゃいいんだ!」


 叫べないと心が落ち着かない。頭の中でずっと考えていてもどうにもならない。こういう時は声に出してストレスを発散しなければ。


 「神様いきなり叫んだりしてどうしたのですか?」


 「はっ!」


 女の日との声を聴いてはっとさせられた。そうだ、今俺の周りには俺のことを神様と呼んであがめているような集団がいたのであった。その中でも先ほどから俺に話しかけてくる女子がいた。その子の名前を一応聞いておくべきなのか。


 「あ、あの神様?」


 「……」


 この子を近くから見てみると意外とかわいい。髪は白い布でまとめているせいかあまり長くはないけど顔がものすごくいい。現代にいればどこかのアイドルユニットに入ることができるほどの逸材だ。ただ、残念のは……胸だろうか。胸のふくらみをほとんど感じることができなかった。麻で作られた着物を着ているためとても薄い。そのため体のラインがよくわかるつくりをしていた。年の方は身長が140センチぐらいしかないから俺よりも下なのは確実だろう。まあ、それならば胸が残念なのも納得できるが。

 でも、女子だということを意識すると俺の頬は自然と赤く染まった。実際に染まったかどうかは見ることができないのでわからないが少し熱かった。

 やばい。惚れてしまったのかもしれない。俺はロリコンじゃない。俺はロリコンじゃない。年下に興味なんかない。そうだ、年下には何の興味もないんだ。でも……。


 「神様?」


 また、女子が俺に声をかけてくる。


 「はあー、すぅー」


 俺は、抑えきれなくなり欠けた理性を1回目を閉じて深呼吸をすることで戻そうとする。

 俺が深呼吸を1回した後に目を開けると女子の目はきょとんとしていた。この時代に深呼吸がなかったことを考えると当然だろうか。

 そして、落ち着いたと思うところで笑顔で返答をする。


 「あっ! ごめんね。ところで君は?」


 「はいっ。あっしは、マツです。神様は何の神様なのですか?」


 何の神様か。 

 じゃなくて、俺は今すぐにも神様という誤解を解かなければならない。いつまでも神様であると思われるといろいろと不便だ。しかし、いきなり目の前に人が現れたら神様だと思っても仕方なし、いい言い訳も出てこないし。未来人と言っておくべきなのか。


 「俺は、未来人だ。はるかかなた未来から来た」


 「ミライ? ミライとは何ですか?」


 ……そうか。この時代には未来という言葉がないのか。そもそもこの時代の言葉がよくわからない。昔の言葉は今とは少し違う。それでも、聞き取ることができたのはおそらくあれだな。うん。よくある転生物で勝手に翻訳してくれるあの機能が働いているからだ。だから、俺が聞くのには問題がないけれども話すことに関しては大きく問題があるということか。結構、問題大有りなシステムだな。俺をこの世界に呼んだ奴は職務怠慢だぞ。

 俺は誰に文句を言っているのかまったくわからなかったが、文句を言わずにはいられなかった。

 それにしても未来ってこの時代はどのような表現をしていたのか。いや、未来という言葉は確かあったはずだ。仏教の世界に三世というものがあってその中の一つに未来があったはずだ。……確か。ああ、そういえばそれならば来世と言えばいいんじゃないか。なんか意味がかなり違う気がするけど村の子でも知ってそうな言葉となると来世になるんじゃないかな。


 「来世のことだよ」


 「来世。なるほど来世から来られたのですか」


 おお、簡単に納得してくれた。すごい。来世という言葉に初めて感動をした。というよりも普段の日常生活において来世という言葉を使う機会なんてないから感動する機会すら最初から与えられていないんだけどそれは今はどうでもいいことだ。

 さて、マツって子にまずはこの村のことでも聞いてみるとするか。俺は、とりあえずこの世界の状況から知ることにする。

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