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第36話 弥介

 すみませんが、完全にスランプ状態でした。ごめんなさい。今月は少しペース遅いと思います。

 「弥介、さん?」


 俺達と一緒に上野国衆たちの説得にあたることになった北条の小姓弥介に俺は声をかけた。


 「何ですか、え、ええっと……」


 「ああ、俺の名前は小田忠志」


 「はい。小田様、どうかなされましたか?」


 「実は、あなたのことが知りたくて、ちょっと、聞いて見たくなってね。年はいくつか?」


 「今年で15です」


 「15……」


 「それは数え年で?」


 俺と弥介の話に竜也が割り込んできた。

 数え年って何?

 俺は、竜也が言った言葉の意味を理解することができずきょとんとしてしまった。

 俺が、きょとんとしているのに気付いたのか歌川が俺に数え年の説明を始めた。


 「数え年っていうのは、簡単に言うとね、現代では私達って生まれたら0歳から数え始めるでしょ。そして、年を取るタイミングっていうのは自分が生まれた日でしょ。これを満年齢っていうのだけど、これに対して数え年っていうのはまず1歳から数え始めるというところが違うでしょ。それから、年を取るタイミングが新年の元日というところが違うの。だから、例えば12月31日生まれの人だったら生まれてまず1歳、次の日に2歳になるのが、この数え年の考えなの」


 「へー、なるほどー」


 「その棒読みかげんだと適当に私の話を聞いていたのね」


 「ち、違う。俺は、ちゃ、ちゃんと歌川の話を聞いていたから」


 「果たしてどうだか……」


 「いや、嘘じゃないから」


 「本当?」


 「ああ、本当だよ」


 「お前ら、何夫婦漫才をしているんだ?」


 「「ふ、夫婦じゃない」」


 「それって、完全に両思いだけどお互いの気持ちを素直に言うことができなくてお前ら夫婦だろと言われた時に否定する漫画とかに出てくる登場人物が言うセリフだよな」


 竜也に呆れられた感じで言われてしまった。

 た、確かに思ってしまったのは嘘じゃないが、そんな漫画みたいな展開をここでするわけないだろう。偶然だ。俺は歌川への告白をすることができていなかったから果たして向こうが俺のことをどう思っているのかわからないが、両思いだっていう考えは嘘だと思う。うん、嘘だと思う。


 「……まあ、いいや。そういえば、弥介。このあたりで有力な国衆ってほかに誰がいるんだ?」


 「はい。そうですね。小幡上総介(信貞)殿とかが有力ですかね。小幡殿は、小幡郷の長として国峯城くにみねじょうの城主を務められていた小幡憲重殿の子です。小幡憲重殿は、上野国衆の有力者である箕輪城主長野業政殿の娘を嫁いでいるのでかなり上野内での地位は高いです」


 「小幡、か……確か邑楽のあたりだったな。あとは、太田の金山城の由良国繁あたりも有力のはずだったが」


 「ええ、そうです。由良式部大輔殿も上野国衆の有力者です。なにせ、由良様はあの源氏の血を引く新田氏の末裔ですから」


 弥介が次々と上野の有力な国衆の名前を言っていく。由良の名前を出したのは竜也であったが、弥介も竜也が名前を出したことによく知ってますねと驚き関心をしていた。

 俺も感心していた。

 由良って誰よ?

 俺からしたら由良について教えてほしかった。あの2人だけで話を進めているのは気に食わなかった。

 

 「由良ね。確かに『信長様の野望』とかでもよく出てくるからメジャーどこだね。信長様ファンとしては」


 「あ」


 そういえば、2人ではなかった。3人だった。歌川も向こう側の人間だった。俺だけが戦国の知識がなかった。しかも、『信長様の野望』ってコンエーという会社が作っている戦国のゲームじゃないか。俺は、それすらやったことがないからまったくわからんぞ。そもそもあれって結構マイナーな奴も出てくる本当にマニアックなゲームじゃなかったっけ? 由良が出ているからメジャー?

 日本人に由良っていう戦国大名知っていますかって質問をしてみたら一般正答率5パーセント以下に絶対になるぞ。


 「小田君。その感じだと由良が分からないみたいね」


 「その言い方、完全に小ばかにしているよな?」


 「そんなことないよ。まあ、近代史専門の小田君だしわからなくても仕方ないかなって」


 「なら、教えてくれよ。俺だけなんもわからない状態で困っているんだよ」

 

 「そうね。由良っていうのは、当初は横瀬と名乗っていたけどその先祖は源氏姓新田氏の出身なの。新田義宗の子孫が由良なのね」


 「新田義宗?」


 俺は、その名前にピンと来なかった。


 「新田はわかるでしょ?」


 「え、ああ。新田は群馬の偉人であり最後は田んぼにはまって死ぬ新田義貞だよな」


 「そう。田んぼにはまってのくだりはいいとしてその新田義貞の三男が義宗なのね。そして、新田と言えば源氏の名門。足利氏とは同門であったといえるからかなりの名門でしょ」


 「足利と新田は確かにライバルって言われていたな。それって同じ源氏だったからなのか」


 「まあ。これで由良がすごい名門だということが分かってくれたと思うわ」


 「わかった。じゃあ、この由良の説得にも行くんだな」


 「そうよ」


 「小田。わかったかこれで。さて、小幡と由良は絶対に必要な存在だ。とくに由良はこの戦いに負けるとのちのち北条に人質にされる運命がある。由良のためにも実はここで滝川一益を勝たせないといけない」


 由良の運命も変える。

 そんなことができるのか?

 俺は、そんなことを思ったが竜也のやる気がかなり高いことが分かったので何も言わなかった。


 「さあ、ここが小幡殿の陣です」


 俺らは、いよいよ次の上野の国衆と対面しようとしていた。


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