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第2話 戦国時代の群馬でした

 俺の名前は小田忠志おだ ただし。群馬県前橋市にある東高校に通っていた高校生だ。高校2年生、17歳。文系男子。得意教科は日本史(主に近代史)。身長169センチ、体重58キロ。眼鏡がトレンドである。だが、このメガネ実は伊達メガネなんだよな。

 まあ、俺のプロフィールはこの辺だろうか。

 他に俺のことを知りたいならば情報バシバシ送ってくれ。特にかわいい子は大歓迎だぜ! って、頭が混乱しすぎて変なことを考えてしまった。


 「さてと、どうしたものか」


 頭の中に現実逃避する。しかし、逃げることができない光景がいまだに前に広がっている。

 こうなった理由をまずは考えることにしてみるか。


 ◇◇◇


 ここに来る前の俺は普通に部活をしていた。俺の入っている部活の名前は歴史研究部。タイトル通り、歴史についていろいろとまとめて部誌的なものを全校に配っている。また、最近では歴史学会の見学に行ったり、自分たちで論文を書いて発表をするなんてこともするようになった。

 そのため、俺の専門分野は近代史とりわけ犬養毅内閣の崩壊後の東條内閣成立までの不安定な政局の時代を中心としているが、ほかの部員が鎌倉、戦国、幕末、第二次世界大戦と幅広いためほかの時代の知識もかなり持っている。いや、かなりと言っても基本的なことだけだ。本当に歴史研究部には歴史オタクのような奴らが所属しており各々自分の専門の話になると日が暮れるほど話し続ける。なので、極力近代史以外の話を流していた俺がいる。

 歴史研究部の活動時間は毎週月曜、水曜、金曜の3日。そして、今日は金曜日であった。しかし、俺にとっては部活を休む用事ができていた。それが、俺の祖父の急死の件であった。俺が学校に行っている間に畑で突然倒れてしまいそのまま帰らぬ人となってしまった。まだ、祖父とは話したいことが山ほどあった。なんで死んでしまったんだよ。

 俺は悲しみにくれた。

 祖父の顔を一刻も早く見るため学校から自転車を全力で飛ばしていた。

 しかし、急ぎ過ぎた。俺は信号を無視していた。まったくもって余裕というものがなかった。祖父に会いたい。それだけで自転車をこいでいた結果だ。結果、俺は赤信号を無視してしまい交差点の中に入ってきたトラックに轢かれてしまった。もちろん、悪いのは俺の方だ。トラックはきちんと青信号を曲がってきたのだから悪くない。ただ、よそ見扱いされるであろうトラックの運転手には本当に悪いことをしたなと思う。

 思いっきり俺の体は飛んだ。意識も飛んだ。

 次の瞬間、起きたら目の前にはあのジジイがいた。ジジイに聞いてみると俺は突如として目の前に現れたらしい。それで神様だと言い始めたのだ。確かにいきなり目の前に人間が出現すれば神様だと思っても仕方ないよな。

 ……うん。つまりは俺はどこか別の場所に来てしまったと考えるべきだ。交通事故で引かれた。つまりは、これって……


 「異世界転生?」


 最初に思い浮かんだ言葉がそれだった。しかし、先ほどの人の中にはエルフとかいなかった。人しかいなかった。ああ、ここが人種の里だからか。という、解釈も取れるだろう。

 とりあえず、情報を手に入れないとどうにもならない。俺を崇めているジジイにでも聞いてみるか。


 「ここは、一体どこでしょうか?」


 俺の問いかけに対して反応したのは、ジジイではなく集団の中で最も若い女性であった。

 ボロボロの麻で作られたであろう着物を着ていた。着物は最初はもっと鮮やかな赤にかなり近い色であったと思うが、今ではかなり泥に汚れて汚いものとなっていた。かなりもったいない。きっと、かなり貧乏な子であると思った。


 「ここは、上野国です。神様がいらっしゃるのは、ここの神社は名前はありませんがここら一体の土地の神様を祭っている神社というわけで我が里でもっとも大事にされている神社の分社にあたる祠です」


 祠?

 その言葉を聞いて俺は後ろを覗いて見る。そこには小さな石と石で造られた鳥居があった。ああ、なるほどこれが祠か。とても小さなものであったので言われなければ気づくことがなかった。

 さて、ここがどこなのか上野国と言われた。上野国と言えば昔の群馬県の名称だ。つまりは、ここは昔の群馬県ということだろうか。

 じゃあ、今がどれぐらいの時代なのか。それを聞かなくてはいけないが以下にせよ「今、西暦何年ですか?」なんて聞くことができない。日本に太陽暦が持ち込まれたのは明治時代であるし、この時代にはグレゴリオ暦がないかもしれない。では、どうやってこの時代を特定しようか。この人たちはきっと下の立場の者だ。主君か領主様の名前ぐらい知っているだろう。


 「領主の名前はわかるか」


 「わからない」


 即答であった。ダメだこりゃあ。手掛かりが見つからない。しかし、そこにほかの人がいいことを言ってくれた。


 「そういえば、近々北条が攻めてくるという話でも聞いた。滝川様がそれに対抗するために足軽を動員するとも聞いたぞ」


 北条。滝川。この2つの聞きなれた単語に救われる。

 北条と言えばおそらく小田原北条氏のことだろう。そして、滝川は織田信長の家臣の1人滝川一益であることは間違いないだろう。

 つまり、ここは戦国時代になる。

 では、これからどうするべきなのか。普通、戦国時代にタイムスリップしてしまったと考えたらどう行動するか。今まで読んできた時代物や、ネット小説などの知識をまとめ上げるとどこか戦国大名の家臣として仕えることとする。しかし、ここが群馬である以上ある問題が起きる。それが群馬に戦国大名がいないことである。

 関東のほかの大名に着く気力も起きない。

 後北条氏(小田原北条氏)は、豊臣秀吉の小田原征伐で滅亡する。

 佐竹氏は、関ヶ原のあとも生き残るが、何と言っても歴史においていまいちパッとしない。

 小田氏は、小田氏治の代に滅亡するし、千葉氏、那須氏、宇都宮氏、江戸氏、里見氏などほかの大名たちはみな小勢力。どこについたとしても未来がない。

 だったら、俺はどうするべきか。

 考えなければ──

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