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第20話 勧誘への答え

 「私と一緒に来ない?」


 「神様、どこかへ行ってしまうのですか?」


 歌川からの勧誘。マツからここに残ってくださいという言葉。

 その相反する2つの言葉に対して、俺がとった答えというのが……


 「ごめん、歌川」


 「えっ!?」


 俺がとったのは、後者だった。

 マツの言葉の方を俺は取ったのだった。そう、自ら地獄の道、つらい道を選んでしまった。選んだ理由は、マツが泣いていたからだ。やっぱり俺も男。女子の涙には弱い。だから、マツの方に俺の心は揺れ動いてしまった。

 って、ここまでの話を自分で総括をしてみるとまるで俺がモテてる男みたいだね。実際、女子に告白をされたことすらないというのになんていうモテ男ぶり……すみません。はい、調子乗ってました。そんなことないです。はい、ないですぅ……。


 「お、小田君?」


 「な、何、歌川」


 歌川が急に俺との距離を縮めてくる。その距離はほぼ0といってもいい距離になった。

 ち、近い近い。

 そんなに近いとちょっといろいろとドキマギしてしまうよ。


 「歌川、近い……」


 「ねえ、小田君。どうして私の提案を断るの?」


 歌川が俺に迫って言う。


 「いや、確かに歌川の提案はありがたいよ。俺はこの時代のことをほとんど知らないから」


 「じゃあ、私と一緒に来てよ」


 歌川が潤んだ目で俺を見てくる。


 「でも、俺はこの村の人にまだたった一日だがお世話になってしまった。ここにいるマツもそうだ。彼女やこの村の人たちの恩に報いるまではこの村にいたいと思う」


 「それは、この村の人たちは小田君が神様だと思っているから、自分たちの信仰のために小田君を助けているだけだよ。みんな自分勝手、利己的にしていることで会って小田君のためにやっているわけじゃないんだよ」


 歌川は、俺の言葉を全力で否定する。そして、俺もわかっていた触れたくない真実というか事実というものを言う。


 「わかっている。それでもだ」


 俺が、はっきりと歌川の言葉に答える。

 この村で暮らしていくことは本当につらいということはわかっている。歌川について行った方が絶対にいい。歌川ならこの時代をどう生きていけばいいのか絶対にわかっているはずだ。こんな何の未来を感じることができない戦国時代の群馬にいるよりは、滝川一益に付いて行って本能寺の変をどうにかして止め中央において織田信長に近づいて行った方が絶対にいいはずだ。

 でも、人間というのは理屈で動くだけの生き物ではない。

 俺は、なぜだかわからないがこの村に残るべきであると本能的に感じている。

 マツが泣いていたというのは、俺を動かした要因の1個になりはするが、それだけではなかった。


 「本当に私と一緒に行かないの?」


 「ああ、すまないな」


 「……ばか」


 歌川は、俺に対して小さくばかと言った後、もう俺を相手にするようなことはせずそのまま滝川一益の下へと戻っていってしまった。


 「神様?」


 俺と歌川の話が終わった後に、すぐそばにいたマツが俺に声をかけてきた。その眼はまだ潤んでいた。もう俺はどこにも行かないというのに。


 「どうした、マツ。目が赤くなっているぞ」


 「べ、別に赤くなってませんっ!」


 俺が指摘してやるとマツは顔を真っ赤にして否定してきた。時代は違えども女子ってからかったらみんなこんな風に顔を真っ赤にして否定してくるんだなとなぜだか感心してしまった。


 「さて、俺はこの村にいることになったし、この村がよりよくなるように改革でもしていくか」


 「この村をよりよくしてくれるの?」


 「ああ、よくして見せるぜ」


 マツに思いっきり期待させるように言ってやった。

 しかし、内心では本当にうまくいくのか心配であった。この時代のことをよくわかっていないやつがどこまでできるかどうかわからないが、せめてこの村だけでも江戸時代レベルにしてみせる。農業用具の改良ぐらいならこの時代でもできるだろう。あとは、村の統治機構でも考えてみるか。意外と村の運営で民主的なんだよな。民主的な村経営ができているから少し未来の知識を伝えるだけ伝えてもそこまで混乱はしないだろう。ただ、実際に根付くかどうかは未知数だが。

 まあ、村の改革については明日からにしてとりあえずは、


 「村長の家に帰ることにしよう」


 「キクも神様の帰りを今か今かと待っていますよ」


 本当かなあ。キクと一緒に寝て思ったが、彼女についておれはよくわからなかった。しばらくお世話になるのだし、もう少し仲良くできるように努力してみよう。でも、今日はいろいろなことがあった。現代人であり知り合い、同じ学校同じ部活に所属している歌川と再会したことが俺の今日一日を劇的に変化させた。すぐさま歌川の話を断ってしまったが、またの機会の時は、付いて行くかもしれない。次に会うときどうするかも今から考えておくことにしよう。次に会うときにはこっちの環境もだいぶ変わっているだろう。俺が成功するしないに関わらずにだ。考え事もしたいし、キクと仲良くするのは明日からでもいいと思う。今日は早く、帰って寝ることにしよう。


 これからは1週間に1回程度の更新と頻度が落ちていきます。

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