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第16話 滝川一益

 二度寝をした俺は気持ちよく寝ていたみたいで、起きたら太陽が自分の頭上にもう上がっていた。

 この時代に現代のような時計はないはずだから正確な時刻はわからないが、まあたぶんは正午ごろなのだろう。


 「ああ、神様おはようございます。もう目覚めていいのですか?」


 俺が起きたのと同時に部屋の中にこの家の主である村長の一人娘のきくがやってきた。昨日、俺があんなに神様ではなくて俺は正真正銘の人間だということを伝えたというのにいまだに信じてもらえないようだ。この時代の人の信仰心の厚さというものを、身をもって体験した。

 もうこのまま説明するのが、面倒くさいし神様で通したほうが楽なのだろうか。そう思えてしまう。


 「ああ、おはよう。きく」


 俺は結局神様でないということを否定することができずに挨拶をした。

 さて、俺は朝? もう朝ではないが、起きてこの村の違変に気づいた。村がどこか騒がしい。


 「きく、村が少し騒がしいけど何かあったのか?」


 「それはですね、神様。今、村に滝川様が訪れているのです」


 滝川様。つまりはあの織田信長の家臣であり織田家四天王の一人滝川一益のことだろう。俺は近代史を専門にしていると言ったが、そんな俺でも滝川一益については知っている。それほど有名人物だ。しかし、彼の名前を知っているが、実績をよく知らない。信長が本能寺の変で、志半ばで自害した後秀吉の天下になると一益の名前が日本史において登場した記憶がない。

 確か、本能寺の変の時に上野国にいて本能寺の変の情報を聞きつけた後に急いで戻るも清須会議にも間に合わず織田家内での地位もなくし、影響力がなくなりどこかへと消えていった。そんなイメージを俺は滝川一益という人物に持っていた。歴史を変えることができるかどうかわからないが、もしも本能寺の変まであと少しという日であったのならば本人に教えてやりたい。彼の未来と言うものを。

 それに滝川一益であれば、今がいつなのかわかるはずだ。戦国時代の元号にはあまり詳しくはないが、天正とか有名どころが、出てきたらもう戦国末期。そんな雑な覚方をしている。そんな雑な知識でどうにかなるかわからないが、とにかく一度聞いてみる価値はあると思う。

 俺は、滝川一益に会ってみたいと思い、村の中心である広場に行く。広場には村長と村の運営をしている中心メンバーそして、馬に乗った武士1人とその周りに護衛らしく武士が5人いた。おそらく馬に乗った武士が滝川一益なのだろう。

 俺は、その集団のもとに徐々に近づいていく。


 「村長。少しいいですか?」


 「ああ、神様。これはこれは何か用ですか?」


 村長に声をかける。いきなり滝川一益に声をかけたらお前は誰だとか、失礼だとか護衛の奴らに言われてなぜだかわからないが切られそうな気がするからな。


 「この騒ぎが何だろうと思って見に来ました」


 嘘だ。騒ぎの正体も知っている。それなのに、俺はこの状況が何であるのか知らないふりをした。それは、村長に滝川一益を紹介してもらおうと考えたからだ。その方が難なく俺が聞きたい本題に入れると思ったからだ。


 「ああ、それはですね。織田家の滝川一益様がこの村に立ち寄りに来たのですよ」


 その言葉を聞いて今までしっかりと滝川一益を見ていなかったので、滝川一益を見る。

 この方が滝川一益。あまり身長は大きくはなかった。現代人に比べてこの時代の人の身長が高くないというのは本当の話であったのだな。ひげが結構生えている。そして、目が武人であるだけにぎらぎらとしている。服装も他の武士とは違い立派な甲冑をつけていた。


 「あなたが、滝川一益さまでしょうか?」


 俺は、滝川一益との初めてのコンタクトを取った。

 俺の言葉に対して滝川一益は一言、


 「おぬしは神様なのか?」


 俺は、またしても自分が神様ではないということの説明を必要としなくてはいけなさそうであった。


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