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第99話 柴田邸へ

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 最初の史料紹介を含めて今回は100回目です。更新が遅い私としてよく頑張りました。


 佳奈美を救う作戦。

 その作戦はすぐに実行に移る。そのような状況にはならないと思っていた。しかし、意外にも行動はすんなりと始まった。

 きっかけはきくの次の一言であった。


 「柴田様の家に行きますが、来ますか?」


 「え?」


 「来る? 来ない?」


 「行きます」


 「じゃあ、行こう」


 そんな会話があり、今俺は柴田邸の中にいた。

 一応、あの会話の後に「俺、顔バレしているけど?」と、きくに言ったが、「変装すれば大丈夫だよ」とか言われてしまい付いていくことになった。


 「ほ、本当に大丈夫なのか?」


 相変らず俺は心配であった。


 「大丈夫、大丈夫」


 きくはすごい自信満々に言う。どこからその自信が出てくるのだろうか。俺はすごい不安であった。

 柴田邸の廊下を歩く。

 すると、向こう側から柴田勝家の家臣だと思われる武士が向かってきた。

 

 ドクンドクン


 心臓の音が大きくなる。

 バレていないような。バレないよな。

 俺は横を通り過ぎるまで心臓がバクバクであった。

 

 すぅ


 柴田勝家の家臣と思われしき武士は俺に何一つ興味を持つことなく通り過ぎていった。

 杞憂か。

 俺が心配しすぎているのだろうか。


 「ほらね」


 きくが笑顔で俺に言う。

 何も心配する必要がないでしょ。

 まるでそう言いたいかのような言葉であった。

 しかし、俺はまだ警戒を解かない。そもそもここは柴田邸だ。俺と顔を合わせている柴田勝家がいるはずだ。


 「ところでどうして柴田邸に来たんだ?」


 俺はそもそもきくが何の用があってここに来たのか理由を聞く。


 「あー、それはね。金森様に会いに来たのよ」


 「え?」


 俺はかなりヤバイ声を出してしまった。

 金森様って、あの金森長近だよな。


 「金森長近?」


 「そうだけど?」


 俺が驚いたことにきくが不思議そうにする。


 「金森長近と俺は直接会っているから無理だよ。絶対にバレるよ」


 俺は必死にきくを止めようとする。

 俺が行くのはヤバイ。行かない方がいい。そう思う。


 「まあ、大丈夫だよ」


 だから、その自信は一体どこからやってくるんだよ。

 俺はツッコミを入れる。

 もちろん、口には出していない。


 「さあさあ、こっちよ」


 きくがそう言い俺を一つの部屋に案内する。

 俺は無言でその部屋に入る。中は質素であった。和風の部屋。まあ、そりゃそうか。この時代に洋風のものがあるわけなくもないが、基本的には和風だろ。自分でセルフツッコミを入れつつ部屋の中に入る。


 「おう、お前は?」


 声がした。


 「か、金森長近」


 声の持ち主は金森長近であった。

 俺は変装をしている。バレていない。そんなわけはなかった。


 「歌川という女と一緒にいた男だな」


 バレている。

 普通に。

 やっぱりこんな軽い変装じゃダメじゃないか。きくのあの自信は一体何だったんだ。ここで金森長近が俺のことを柴田勝家に話せば完全に終わりだ。

 佳奈美を救う作戦。すべては始まったばっかりなのに終わりだ。


 「さあさあ、金森様。お疲れ様です。さて、羽柴様からの文です」


 きくが俺の後ろからするっと部屋に入ってきて金森長近に手紙を渡す。

 金森長近は、その手紙をすんなり受け取ると読み始めた。読みながらニヤニヤしていた。いや、不敵な笑みを漏らしていた。


 「どうですか?」


 きくが金森長近に聞く。

 金森長近は手紙を畳の上に置くと答える。


 「この文の内容、相分かったと伝えておけ。それと小僧。女は無事だ。ただ、柴田はいろいろと情報を聞き出そうとしているから早く助け出さないと危ないかもしれない」


 「え?」


 金森長近は俺にすんなり佳奈美のことを教えてくれた。

 俺はどうしてこんなにすんなり教えてくれたのか不思議であった。

 そんな不思議な表情をしていた俺に対して金森長近が答える。


 「おい、きく。お前、まさかこいつに何も言っていないんだろうな?」


 「……」


 「その沈黙は言ってないということだな。まったく……おい、小僧」


 「俺は小僧ではない。小田忠志だ」


 「じゃあ、小田。いいか、俺がどうしてお前に情報を与えたかというと元々俺は羽柴派だ。柴田に付いているのは羽柴様からそのようにしろと命令を受けているからだ」


 「なっ!? そ、そんな!」


 つまり、金森長近は秀吉が放ったスパイということになるのか。その事実に俺はかなり動揺した。そして、驚愕した。

 きくがずっと大丈夫と言っていたのはこういうことだったのか。俺は、きくの自信がどこから出てくるのかずっと分からなかったがようやくわかった。


 「まったく、それにしてもきくは何も話さなすぎだ」


 「そうですね」


 俺は嫌っていた金森長近の言葉に対して同意する。

 その後は、お茶をして(一応のカモフラージュのため)柴田邸をあとにして羽柴邸に俺らは戻ったのだった。

 帰り道、きくに対して俺はぐちぐちと文句を言いすぎたのか途中から話を全く聞いてもらえなかったというちょっとした事件もあったが、まあ、それは些細なことだろう。


 次回は明日18時です。

 次回が本当の100話ですね。よろしくお願いします。

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