第8話 目覚める力
第8話でようやくアビリティ発動です
ヒュドラ狩りから戻ってきた俺たちは、冒険者ギルドへ戻ってきていた。
「随分早いお帰りですね、もしかしてクエストのキャンセルですか?」
と、キルカさんがからかう感じで聞いてきた。
まぁ、実際3時間くらいだからそう思うよね。
「いえ、ヒュドラはちゃんと40頭以上狩ってきましたよ」
「本当ですか?ヒュドラ1頭に冒険者が2人で仕留める時間は平均2時間といわれています」
「その冒険者はきっと、腕が鈍いだけなんですよ」
「そうですか?一応、王都の冒険者の記録ですよ」
「それじゃあ、私が少なくとも王都の冒険者より腕が良いだけですね」
「まぁ、ギルドカードを見せてくれれば分かる事なんですけどね」
そう言うとキルカさんは、俺にギルドカードの表示を求めてきた。
「ギルドカードにはクエストの詳細を記録する機能があるんです。例えばクエストの対象となっているモンスターの討伐数、クエストを受けてから今に至る時間、他には違反行為をしてないか等の情報がこのギルドカードに記録されているんですよ」
「このカード何気にすごい性能ですね」
「なにせこのギルドカードは魔法学園グリモアと冒険者ギルドが共同開発したあものですからね」
魔法学園グリモア、アイテムボックスのスクロールの製造に成功したところか。
この学園の魔法技術がすごい。
もしかしたら、そこに行けば元の世界に帰れるかもしれない。
「グリモアとはどこにあるんでしょうか?」
俺はキルカさんに聞いてみる。
「グリモアは、私たちもどこにあるかわかりません。知っているのはギルドマスターただ一人なんです」
「そうですか」
「お役に立てずに申し訳ございません」
「いえ、いいですよ」
まぁ、そう簡単に帰る方法が見つかるわけないか。
「それでは、ギルドカードの提示をおねがいします」
「その前に、質問いいですか?」
「いいですよ。それでご用件は?」
「眷属が討伐したモンスターは、その眷属の主のギルドカードに数えられるのでしょうか?」
「はい、数えられますよ。眷属とは主の体の一部と言っても過言ではないですからね」
良かった。実際、俺は1頭しか狩ってなかったからな。
「それじゃ、確認をお願いします」
「かしこまりました」
そう言うとキルカさんはギルドカードを見た。
「す・・・すごい。こんな短時間で80頭も」
「嘘じゃなかったのを理解していただけたでしょうか?」
俺たちは報酬金2000万ゼニーを受け取り、修羅姫の待つ宿に向かった。
修羅姫に呼ばれた宿に着き2つ驚いたことがある。
まず、この宿の構造だ。
5階建ての宿屋でどことなく日本の旅館に似ており、広い庭園、露天風呂があるところだ。
更に露天風呂は屋上にあり、アスラの街を見渡せて潮風の香るいいお風呂だと評判だ。
2つ目、この旅館がなんと修羅姫の実家だということ。
そのため、アスラの軍の第一軍の人たちはここで生活しているらしい。
「それにしてもいい湯だなぁ~」
「そうですね、心地いいです」
宿屋に着いた俺たちは、修羅姫の勧めで露天風呂に入っていた。
「気に入ってもらえて僕もうれしいよ。父さんと母さんが作る夕飯も絶品だから楽しみにしててよ」
なぜか修羅姫も一緒に堪能してる。
まぁ、別に気にしないけどね。
「そういえば、ヒュドラ狩り行ってたんだよね?汗かいたでしょ背中ながしてあげるよ」
「雪様、お背中なら私がお流しいたします」
「雪、私が洗いましょうか?」
「いや、いいよ。俺、自分で洗うから」
「そんな、遠慮しないでよ。僕たちは将来結ばれる関係なんだから」
「修羅姫、俺は女だよ・・・」
「雪様は、こんな方が理想なのですか?」
「うーん。恋とかしたことないから自分でもよく分からないんだよね」
こんな会話をしていると
ドッシャーーーーン。
いきなり空から隕石とも呼べそうな石の塊が降ってきてアスラの街の一部を抉った。
「街の東より、魔物が出現!!町民は至急避難せよ!!」
放送が街に鳴り響く。
「ただ事じゃなさそうですね」
「ほんとだよ、遠征終わったばかりなのに」
そう言うと俺たちは急いで風呂を出た。
外に出てみると町の人はみんな港の船に乗り込んで避難していた。
「雪、僕は街の人たちを誘導してくるよ」
「分かった。気を付けて」
「ああ」
修羅姫は誘導活動をしに港へ向かった。
さてと、俺たちも避難しますか。
避難しようとしたとき、またあの岩が落とされた。
ドッシャーーーーン。
岩を落とす魔物か。
「ツバサ、ごめんけど何の魔物か見て来て貰っていいか?」
「いいですよ」
ツバサは背中の翼を広げ東の空に飛んで行った。
「雪様、私は何をしたらよいですか?」
ちょうどその時、街を抉った岩の20倍くらいの岩が飛んできた。
あれは、まずい。
「キツナ!!お前の妖術であの岩止められるか?!」
「あのサイズは、止めることはできませんが落下を遅らせることなら何とか」
「それでもいいやってくれ!!」
「喜んで。しかし、長くはもちません」
キツナの目が青く光りだした時、岩は青い光で覆われて落下するスピードが遅くなった。
「雪、分かりましたよ。魔物の正体は、ヤマタノオロチです」
ツバサが帰ってきた。
「ヒュドラが激情に駆られたときに稀に突然変異してなると言われるヤマタノオロチか?」
「はい。そのヤマタノオロチなんですけどどうやらクイーンが変異したみたいなんですよね」
「えっ!?」
「確認に行ったとき、オロチが「我が子怒りを知れぇーーー」って言ってたんですよね」
「もしかして、この街にオロチが来た理由って俺たちのせい?」
「その可能性が高いです」
「雪様、大変言い難いのですがぼちぼち限界です」
キツナが言い終わると同時に大岩を覆っていた青い光が消えた。
「いけない、ここに落下してきます」
どうする!?
ここにはMPを使い切ったキツナと戦闘力の低いツバサがいる
岩を切るか?
駄目だ。切れたとしても、その残骸が街を壊してしまう。
素手で砕くか?粉々になるまで。
それも駄目だ!?
この距離だと間に合わない。
逃げる?
いや、間に合わない
俺が策を考えていたその時、首輪が光だしどこからか声が聞こえた。
力が欲しいか?
欲しいさ、キツナやツバサ、そして修羅姫、アスラの街を守りたい。守れる力が欲しい。
守るための力かよかろう契約完了だ!! このアトラスの我が水を統べる力を其方に貸し与える!!
受け取れ!!
すると、首輪のうちの1つの突起が青色に染り、俺の着ていた黒い鎧は青い布製の服に変化した。
そして何より変化したのは、髪の色だ。
白から水色に変わった。
「あなたは、雪様ですか?」
「そうだよ、キツナ。何とかするからツバサと少し大人しくしてて」
そうすると、俺は海に念じた。
《激流よ、わが障害を撃て》
すると、波が意思あるように動き出し落下してきた岩を押し戻した。
「雪、本当に雪ですか?」
「そうだな、漆黒の女帝 Ver海の王ってところかな?」