第15話 準備期間 後半
誤字脱字などがあったら感想やコメントなどで知らせてもらえたら嬉しいです。
「すごいな。あのお嬢ちゃんは何者なんだ?」
僕も詳しいことは分からないが――
「ただ言えるのはとにかく強いってことだね」
「だが、ヒョウを相手にしてあそこまで戦えるとは……」
それは僕もうすうす思っていた。人間であそこまでの強さは異常だ。それにしても蔵鬼さんすごくにやけているなー。
「戦ってみたくなったの?蔵鬼さん――いや歴代最強の領主様」
蔵鬼さんと軍の演習で手合わせした時僕は軽く遊ばれる感じに負けた。正直この人以外には生涯負けたくないと思った程だ。
「その名で呼ぶな。俺よりも上の奴らはたくさんいる。――戦ってみたいことは否定しないが」
上の奴らねー。僕が知る限りあなたより強い人は見たことないなー。
「そうゆう修羅の嬢ちゃんはどうなんだ?」
僕か。確かに雪と戦って負けたのは悔しかった……けど今は。
「雪と一緒に戦いたい。そしてヤマタノオロチで助けてくれた恩を返したい」
雪と同じ高さから共に戦ってみたい。これは本心だ。
「……そうか」
「ガルルル。貴様本当に人間か?。何なのだ。その馬鹿げた身体能力は」
ブースト系スキルの恩恵と元々のステータスが高いからかな。
「君のほうこそ、本当にカラジシなの?。俺がさっき見てきたカラジシと見た目が全然違うのだが」
ツバサやキツナたちと一緒に見てきたカラジシが可愛く思えてきた。何というかヒョウはミノタウロス近い。
「残念ながら我はカラジシだ」
「そうか。俺も残念ながら人間でした」
多分人類最強クラスのね。
「ガルルル。その冗談いつまで続くかな?」
「昔から俺の口は一度開いたら閉まらないって言われてるんでね」
明からよく言われたな。「吹雪の口はいつ閉まるのかな」って呆れ顔で。
「ガルルル。せいぜい舌を嚙まないようにするんだな」
さっきよりパンチのスピードが上がったな。
まぁ、刀で受け止めるんだが・・・。
「まだまだぬるいよ。全力で来い!!」
「ガルルル。面白い!!」
「なぁ、修羅の嬢ちゃん」
「どうかしたの蔵鬼さん?」
「ヒョウの奴が楽しんでいるように見えるのは俺の気のせいか?」
ん、言われてみれば確かに。笑っている?
「不思議だよな、雪の譲ちゃんはあのヒョウを笑わせるなんて」
「ほんとに不思議だよ。だから雪のことをもっと知りたくなるんだ」
君の事をもっと知りたい。もっと一緒にいたい。
「知りたくなるか。そういえば、雪の嬢ちゃんはカラジシを買って何をするんだ?」
そう言えばカラジシを買う理由を詳しく聞いてなかったな。
「旅にでも出るんじゃない?まずファージに行くんだって」
「っ、ファージだと!?」
「どうかしたの?蔵鬼さん」
「修羅姫、ここから先は領主として話をする」
「領主様として?」
それほど重要な話なのか……。
「中々の速さのパンチだな」
双刀で受け止めているから能力は使えないはず。素の力でこれとは恐ろしい。
「おや、ガルルルはどうしたの?」
「おっと、すまんな。楽しくてなつい言い忘れてしまった」
意識してたのかっ!?てか
「楽しい?他かから見れば女の子が化け物に襲われている図にしか見えないと思うが・・・」
「そんな怪力の女がいると思うか?しかも人間の」
「いないな。俺以外は多分」
「そうだろう」
何だろう、この虚しい感じは。
「次の攻撃、我は本気で行く。逃げずに全力で受け止めろ」
あれ、このパターン修羅姫と同じ感じだな。この世界の人々はバトルジャンキーなのか?
だが、俺も男だ(中身)こうゆう展開は大好きだ。
「言われなくてもやってやるよ」
相手の全力には自分も全力で。相手が全力で来れるように双刀を地面に刺した。
ヒョウの体を覆っていた、赤いオーラが右手に集まりライオンの顔を象ったオーラの塊になった。
格ゲースでいうと波〇拳的なやつだろうか。
「行くぞ!!獅子豪轟破!!」
「来い!!」
その掛け声とともに俺は構える。
ヒョウの拳が俺に振り下ろされる。
俺はその拳を刀で全力で受け止める。
受け止めたと同時に獅子を象っていた濃密なオーラが弾けて周囲に獅子の吠え声が響き、眩しい閃光が走る。
「ガヴォ―――ッ!!」
「負けるか―――――!!」
「領主様。今言ったことは本当なんですか?」
「信じたくないが、本当のことだ。ファージでは今、未知の病が流行っている。その影響でアスラの街から商隊を向かわせることができない状態なんだ」
だとしたら今のファージの街は完璧な孤立状態。早急に手を打たないといけない。
未知の病か……。
いや待てよ。ファージは職人の街。腕利きの薬師が居てもおかしくない。
「領主様、ファージは職人の街です。薬師や治癒魔導士が居るのではないですか?」
「その事なんだが、ファージの街の近くに迷宮が出現したんだ。しかも、魔力濃度がかなり高いな」
「迷宮ですか!!」
「ああ、内からも何人か冒険者が向かった。……誰もまだ戻ってきていないがな」
なるほど、迷宮の攻略に治癒魔導士と薬師は向かわせられたということか。
それにしても最低アスラの街の冒険者ギルドに入る必要レベルは270以上。レベル269以下はギルドカード発行の紙に自分の名前が書けないようになっている。
レベル270もあれば魔族領の迷宮はともかくここ亜人領、そして人間が営む人界の迷宮は攻略はできるはず。まだ戻らないとすると――
「もしかして、魔族領と同じくらいの迷宮なのですか?」
「ああ、どうやらそうみたいだ」
古文書で読んだことがある。昔、魔族領の迷宮で迷宮生物は迷宮内で増えすぎた為、迷宮の外にあふれるという記録がある。
更に古文書には外に出た迷宮生物により生態系が破壊されやがて住処を奪われた生物が街に出現し、街を滅ぼした記録が残っている。
最悪、アスラの街に来たヤマタノオロチ以上の被害が出る可能性もある。
「ダンジョンに未知の病ですか……」
「分かっていることは迷宮が出現した時期と病が発症した時期はほぼ同じということくらいだ」
「関係がありそうですね」
「だろ、そこで今回おまえに頼みたい事がある」
僕に?一体なんだろう?
「ったく、大した奴だよ。ここまでの力は確かにヤマタノオロチにはなかったよ」
今の攻撃で一瞬だが黒龍装備にひびが入った。つまり鎧の持つ自己回復速度を一時的に上回った。
まぁそれでも俺にダメージはないが。
「今の言葉は謝罪として受け取っていいのか?」
「まぁそうなるかな」
「ようやく我の強さを認めたか」
「ああ、認めるよ。これからよろしくなヒョウ」
「ああ、契約しよう。我はこれからこの者を主とする」
俺の頭にメールの着信音みたいなやつが響いた。
おめでとうございます。
眷族が一人増えました。
これから、眷族の設定を行いますので急激な魔力切れにご注意ください。
「急激な魔力切れってまさか」
俺が思うより先に意識がシャットアウトした。
季節の変わりめは体調を崩しやすいですね。
先週体調を崩してしまっていたので投稿が間に合いませんでした。
すみません。